学部生向けの研究紹介と活動
量子多体理論と第一原理手法を用いて、強相関電子系と呼ばれる物質群を研究しています。この物質群を調べる強力な手法であるX線分光の実験データから電子情報を得るための解析手法の開発にも取り組んでいます。
学部の講義で習う「量子力学」「固体物理学」「熱・統計力学」に基づいた理論計算から、量子物性現象を電子の微視的運動のレベルで理解し、より高い機能を持つ新規デバイス・材料の設計・開発するための指針の獲得を目指しています。具体的な研究対象は、遷移金属や希土類元素を含む強相関電子系と呼ばれる化合物です。これらの物質では、電子の間のクーロン相互作用の影響が強いため電子は自由に動けず、互いに「相関」しあって運動します。この電子相関の微妙なバランスにより、学部の講義で学ぶバンド理論では説明がつかない「電流が流れない絶縁状態」が生じたと思えば、少しそのバランスが崩れると、電気抵抗ゼロで電流が流れる「超伝導」が発現したり、美しいスピン・軌道・電荷の秩序現象などが表れます。この多彩な物性現象を物理学の基本法則で理解し、その知見を生かして、より優れた機能物性を持つ物質の探索・設計・提案を目指しています。
理論研究と聞くと、紙と鉛筆だけで孤独に研究するイメージがあるかもしれませんが、多数の電子からなる物質の性質を理解するにはスーパーコンピュータを使った大規模な数値計算が必要な場合もありますし、国内外の実験家の方々と密に協力して理論計算と実験データを照らし合わせながら、試行錯誤・議論しながら進める場合もあります。電子物理の基礎に興味がある方も応用に興味がある方も、きっと夢中になって取り組める課題が見つかると思います。少しでも興味を持った学生の方は気軽に研究室に来てださい。
最近の研究課題の例(最近の論文・研究成果も参考にしてください)
動的平均場理論と密度汎関数理論を組み合わせたX線分光の解析手法の開発
交替磁性体のX線磁気円二色性の理論
超伝導ニッケル酸化物の電子構造の理論研究
遷移金属酸化物の近藤・重い電子物性の探索
ボーズ粒子動的平均場理論を用いた励起子凝縮の理論
コバルト・鉄・ニッケル酸化物のスピン転移現象の理論研究
スピントロニクス材料候補の鉄酸化物の多重マグノン励起
日常生活
平日は基本的に9時半から17時頃まで研究室にいます。先生は毎日4コマ程度、研究やそのための勉強に取り組むことを推奨しています。コアタイムはないので個人によって研究室の滞在時間は前後します。
週に一度、先生と個別のミーティングがあり、研究の進捗や今後の進め方について話し合います。
その他にはグループ内のメンバーが集まって研究進捗の報告会があり、また学生の有志で勉強会などの活動もしています。
夏と冬にそれぞれ2週間から3週間ほどの休みがあります。
楽しいところ、大変なところ
量子力学や統計力学の基礎理論に基づいた数値計算から、目に見えないミクロなスケールの物理現象を様々な形で数値化して理解したり、可視化できる点が面白いと感じます。
学会や研究会などで自分の研究を発表して、国内外の研究者の方から興味を持ってもらったり、議論をして理解を深められると楽しいと感じます。
研究を進める上で必要となる知識(基礎レベルのプログラミングや学部レベル以上の量子力学、統計力学)が多く、自主的に勉強しなければならない事柄が多いので、慣れるまでは少し大変だと感じるかもしれません。
どんな経験ができるか、できないか。研究室の特色
先生が修士のうちに1回は国際学会での発表を推奨しており、成果が出ていれば国際学会に参加できるチャンスが十分にあります。私は修士1年の時にオランダ(アムステルダム)の国際学会に、修士2年の時には中国(北京)で開催された学会で研究発表をしました。修士2年の時にオーストラリアの国際学会で招待講演をした先輩もいます。
海外の研究者との共同研究が多いため英語でやりとりをしたり、研究結果をビデオ会議で議論するという経験もできます。
研究室所有の計算機が複数あるのに加え、海外のスーパーコンピューターも利用できるため設備はかなり充実しています。勉強に必要な参考書なども希望すれば買ってもらえます。
研究に関して相談したいことがあれば先生や先輩にいつでも相談しやすい雰囲気だと思います。
就職活動に関しては予めスケジュールさえ伝えておけば自由に進められるので、研究との両立は十分可能です。
どんなことを学部で勉強しておくと良いかなど
研究室に入る時点ではプログラミングの知識はゼロでも大丈夫なので、まずは学部レベルの物理、特に量子力学と固体物理学をよく勉強しておくと良いと思います。
具体的にどんな研究をしているのか少しでも興味がある方は気軽に研究室訪問に来ていただけると色々とお話します!
日常生活
平日は毎日4コマ程度の時間は集中して研究やそのための勉強に取り組みます。10時ごろに来て18時前後に帰る人が多いですが、朝早く来て早く帰る先輩もいます。土日祝はもちろん休みで、春夏冬のそれぞれに長めの休みがあります。
行事やイベントの節目には楽しい楽しい飲み会があります!!B4のうちは先生や先輩が奢ってくれます(笑)
計算機に慣れるまで大変なのは仕方ないですが、ある程度計算に慣れてくるとめちゃくちゃ時間ができます。その時間を使って、先行研究の論文を読んだり、基礎の勉強をしたり、大学院の授業の課題をします。
旅行や就活、アルバイト、部活などは自分の研究に支障が出ない範囲で、先生に予めスケジュールを伝えていれば基本的に自由に行うことができます。私も塾講師としてアルバイトをしていますが、問題なく行えています。
楽しいところ、大変なところ
大学にある計算機はもちろん、先生がヨーロッパでポスドクをしていたので海外のスーパーコンピュータも使うことができ、最先端の研究ができるのは非常に魅力的だと思います。
自分の計算結果が自分の予想しなかった結果になることがよくあります。そのときになぜそうなるのか、先生と議論したり、あるいは自分で論理的に考え直して、物理的な意味を理解できたときは楽しいと感じます。
計算機を使うためには、はじめにコマンドやインプットなどの基本操作を覚えないといけません。少し大変かもしれませんが、先輩が丁寧に教えてくれるので心配はありません。私も不安でしたが、1ヶ月もすれば基本操作はある程度マスターできました。
どんな経験ができるか、できないか。研究室の特色
研究成果が出ていれば、国内外の学会に積極的に参加することができます。自分よりも優秀な研究者と議論し新たな知見を得て、それを研究に活かすことができます。学会は夕方までが基本で、その後は自由なので交流会に参加したり現地を散策できます。
先生は隣の部屋に居ますし、先輩とは同じ部屋なので質問があればいつでも対応できます。
どんなことを学部で勉強しておくと良いかなど
量子力学については量子力学演習の問題をある程度解けるようにしておけば研究のための知識としては十分だと思います。
固体物理学についてはバンド理論(ブロッホの定理や、強束縛近似などの計算方法)や磁性(フント則や様々な磁性体の磁気応答の特徴)を中心に基礎的な事項だけでも復習しておくといいです。B4の間は先生との輪講があり、この辺りについて勉強し直すことになると思います。
統計力学については、そこまでバリバリ使うわけではないですが、カノニカル分布などの扱いの基本は勉強しておくといいかもしれません。
プログラミングもそうですが、他のことは研究室に入ってからでも十分間に合います。普段使う計算コードはFortranの言葉で書かれているので、余力があれば勉強しておくといいかも。
他聞きたいことがあれば気軽に研究室訪問に来てください!皆さんに会えることを楽しみにしています!