『原三溪翁伝』とは
原三溪翁伝とは
原三溪研究者には幻の原稿として知られていた稿本が64年ぶりに陽の目をみることになった。著者は農学博士の藤本實也(1875~1970)。執筆の経緯は三溪没後4年目の1943年(昭和18)2月13日三溪をよく知る井坂孝、有吉忠一、野村洋三の3氏(三溪翁伝記編纂委員会として、中村房次郎は病気で欠席)から三溪翁伝編纂主任の委嘱を受け、同年4月1日から1945年(昭和20)3月までの2年間の予定で執筆開始する。しかし戦況の悪化に伴う度重なる空襲と強制疎開のため、1945年(昭和20)4月三溪の次男原良三郎の計らいによって伊豆長岡の原家の別荘に疎開して執筆を続け、終戦の翌日1945年(昭和20)8月16日に脱稿する。しかし戦後の混乱の中出版のめどはたたないまま著者は死去。 このたびの刊行は三溪没後70年、横浜開港150周年に期を合わせ、広く市民研究会の協力を得て実現したもの。内容は第1篇事業と生涯、第2篇公共貢献、第3篇性格と趣味の3篇に分けられ、解題等を含み900ページに及ぶ。豊富な関係者の談話と今日では失われてしまった貴重な資料も掲載されており、原三溪の全体像を実証的に表した基本文献。
著者の藤本實也はどんな人?
藤本實也(ふじもと じつや)は1875年(明治8)山口県佐波郡伊賀地村(現山口市徳地伊賀地)に生まれる。2人の実弟は後にともに学者となる。1897年(明治30)東京西ヶ原の蚕業講習所に入学、2年後同所を卒業、翌年農商務省横浜生糸検査所に入所する。1924年(大正13)依頼退官するが、嘱託員として勤めながら調査・著述活動に専念する。1937年(昭和12)京都帝国大学農学部から農学博士号を授与される。1970年(昭和45)6月27日伊豆長岡で死去。享年95。主な著書は『富岡製糸所史』『開港と生糸貿易』『日本蚕糸業史』など実証に裏付けられた生糸貿易史を軸とした研究が特徴。
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