原田研究室は分子動力学(MD)をはじめとした計算科学によってタンパク質などの生体分子のはたらきを解明している研究室です。生物学類の多くの研究室では実験や野外調査によって細胞レベルから生態系までを対象としていますが、原田研究室ではよりスケールの小さいタンパク質、核酸や脂質などの生体分子を研究対象としています。
・生物学類の中では珍しく実験をしない
・生物学にとどまらず、物理・化学・プログラミングなど複合的な能力を養成できる
・スーパーコンピュータを使える
・自分の好きな系・テーマの研究ができる
・エピジェネティクスに関わる酵素の活性化メカニズム
・リン酸化によるヒストンシャペロンの構造変化
・神経伝達に関わるタンパク質の分子認識メカニズム
・液-液相分離に関わるタンパク質の動態
・機械学習を用いた新しい計算手法の確立
・細胞骨格タンパク質の構造変化と分子認識
・網羅的な配列解析によるタンパク質の二次構造予測
・実験系研究室との共同研究による薬剤の作用機序の解明
他にも様々な研究を行っています。自分の興味のある現象があれば計算を使って解明することができるかもしれません。
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タンパク質の形はアミノ酸配列によって(概ね)一意に決定されます(アンフィンセンのドグマ)。あるタンパク質がどのようにして正しい構造に折りたたまれるのか、どのような構造が正しいのか? この問題を解明するのは非常に難しいことがわかっています。タンパク質の構造は主鎖の二面角で定義されますが、およそ3状態しかないと仮定しても、その組み合わせは3の(残基数-1)乗となります。わずか100残基のタンパク質でも3の99乗通りとなってしまい、とても計算できません!そこで、効率の良い計算手法を自ら開発することで、タンパク質の折りたたみのような問題を現実的な時間で解決しようと試みています。
分子動力学シミュレーションでは非常に多くの原子について相互作用を計算する必要があります。近年、グラフィック表示に用いられるような GPU を並列計算に使うことで、高速に計算を行うことが可能になりました(GPGPU)。筑波大学のスーパーコンピュータ Cygnus は CPU に加えて GPU を搭載しているため、分子動力学シミュレーションに最適です。Cygnus は通常のパソコンと同じように使える設計なので卒研生でも簡単に使うことが出来ます。また、それ以外にも沢山の計算リソースがあるので計算時間に悩むことなく研究を進められます。
分子動力学計算は原子の座標が時系列データとして得られます。この時、機械学習を用いることでデータを解析したり、予測することが出来ます。例えば、短い時系列データからタンパク質の構造変化に対して機械学習を行うと、10倍以上長い時系列データを予測生成することが出来ます。実際にMD計算を行うよりも素早く必要なデータを予測値として得られるため非常に効率的です。
また、機械学習の1つである「異常検知」を用いてタンパク質の不審な動きを抽出し続けることで、頻度の少ない構造変化を観測することが可能になりました。
タンパク質の機能に関わる構造変化は長時間(ミリ秒〜秒)を要しますが、現実的に計算可能な時間はせいぜい数マイクロ秒程度がやっとです。そこで、計算方法を工夫して効率よく構造変化を追う必要があります。原田研究室ではタンパク質のシミュレーションと並列して計算手法の開発も行っています。