昭和医科大学 薬学部
社会健康薬学講座
衛生薬学部門
Division of Health Chemistry,
Department of Healthcare and Regulatory Sciences,
School of Pharmacy, Showa Medical University
昭和医科大学 薬学部
社会健康薬学講座
衛生薬学部門
Division of Health Chemistry,
Department of Healthcare and Regulatory Sciences,
School of Pharmacy, Showa Medical University
衛生薬学部門では、生体のアラキドン酸代謝反応に注目し、この反応に環境中に存在する物質がどのような影響を与えるか、この反応の破綻が健康にどのような影響を及ぼすかについて、解析を進めています。
アスピリンなど臨床で広く用いられる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、シクロオキシゲナーゼ(COX)に作用し、アラキドン酸代謝物の1つ、プロスタグランジン(PG)類の生合成を抑えることで、解熱、鎮痛、抗炎症などの作用を発揮します。さらに最近になって、NSAIDsががんやアルツハイマー病にも有効なことがわかってきました。しかし、一方でPG類は様々な生理作用をもつために、従来のNSAIDsには副作用も少なくありません。衛生薬学部門では、新たなNSAIDsの標的として、COXの上流で働くホスホリパーゼA2(PLA2)と長鎖アシルCoA合成酵素(ACSL)、下流で働くPG類最終合成酵素群に注目し、これらの酵素とがん等生活習慣病、神経変性疾患、炎症性疾患との関連について、主に遺伝子改変マウスを用い解析しています。私たちの研究は、副作用のないNSAIDsの開発につながることから、国内外の製薬企業、研究機関から注目されています。
メチル水銀やフタル酸エステル類、ビスフェノールAなど、ヒトや生態系に影響を及ぼす環境化学物質の多くは脂溶性に富み、生体内の脂質代謝に影響を及ぼすと考えられるものも少なくありません。衛生薬学部門では、アラキドン酸代謝系に及ぼす環境化学物質の影響を解析することで、環境化学物質の新たな毒性発現機構を明らかにしようと考えています。
衛生薬学部門では、炎症性刺激に伴い誘導されてくるPLA2の1つ、sPLA2-IIAの発現誘導機構を解析している過程で、この発現誘導に、これまで誰も見つけることができなかった、構造未知の生理活性脂質が関わることを見出しました。生体内には未だ同定されていない生理活性脂質がなおも存在する可能性を考え、新奇生理活性脂質の同定、構造決定、機能解析を進めています。