なかったことにされた高校生の2人芝居がきっちり面白かったので自分たちでさくっとやってみる会
明日のハナコ』


発起人からのすこし長いご挨拶

昨年末に、わたくしの「タメ語で話せる恩師」である劇作家・演出家の鈴江俊郎から便りが届きました。とても複雑な内容が綴られたどえらく長くて熱い、しかしいつも通りのあっけらかんとしたユーモアに溢れた便りでした。

そこには、自分が短いニュースでごく一部の事実のみを知っていた、学校にまつわる権力によってなかったことにされた高校演劇の『明日のハナコ』のことが書かれていました。そして「この芝居を東京でやってはくれないか?」とありました。その時に仕事の都合で隙間のなかった自分は、そのどえらく長い内容の全てをすぐに把握する事はとても出来なかったけれど「もちろんやるよ!やる一択!」と即答しました。

その理由は。鈴江氏がガハハと笑いながらも憤り胸を痛めて人権のために奔走している、そして力をかしてくれ、たすけて欲しい!とメッセージしてくれている、という事がすぐにわかったからです。

孤独な闘いを強いられているという、鈴江氏と『明日のハナコ』の作者である演劇部元顧問の玉村先生は、2人でそのなかったことにされた芝居のリーディング上演をするといいます。権力によって、その存在とそれにまつわる問題が封殺されようとしている2人芝居を上演し、人々にこの問題を知って貰いたいのだと。2人の女子高生が登場人物である芝居を俳優ではない2人の「おっさん」が上演するのだと。

カッコいいなおい!とすぐに大阪へ観にいきました。面白かった。とても面白い芝居だった。素朴でかざらない誠実な芝居。なにかや誰かを一方的に断罪するようや芝居でもなかった。

この芝居を「生徒を世間の誹謗中傷から守るため」という建前で「なかったことにする理由」として新聞に書かれていた「差別用語」とは。劇中に引用されていた、当時の敦賀市長の「100年後に生まれる子供がカタワになるやらわかりませんけど、原発をおやりになったほうがよい」という発言の中身でした。歴史を学ぼうとしている演劇部の女子高生が、過去にこんなこともあったんだよともう1人の女子高生に教え「スマホで調べればそれくらいわかるよ。女子高生なめんな」と素朴におしゃべりをする場面。

これの何が問題??!『明日のハナコ』は人目に触れさせてはいけないような芝居では全くなかった。どころかその真逆。

芝居のなかの女子高生2人は悩み、迷い、そして怒っていた。いまのこの世界の理不尽について、戦争について、原発について。そして何より「自分たちの」存在の不確かさ、不勉強、無力さについて。それらはまさに今の自分と重なり、その誠実さと苦しさに自分は落涙してしまいました。じゃあどうやって決着をつけるのか?彼女たちの決断と放ったその言葉たちは確実に自分を撃ちました。カッコよかった。その言葉は同じように権力を撃ったのだと思います。だからこの芝居は封殺された。どんな決断と言葉だったのか?それをここで言うとネタバレになり我々の上演にお客さんが来てくれず赤字になるやもなので、まだ内緒にしておきます!

俳優ではない、演劇部元顧問の先生と劇作家の「おっさん」2人が完璧に実現していた女子高生が登場人物の2人芝居。はっきり言って悔しかった。「こんなことされたら俳優として黙ってらんないよね?どうするよ俳優?」と。面白い芝居があるなら出てみたい、自分に実現できるか挑戦してみたい。はっきり言ってその欲もあります!

赤字にビビり、面白い芝居をやってみたいという欲も持っている。そんなショボい抗議行動や運動があってもいいと思うのです。われわれ俳優たちが持っているわずかばかりの力を使って、何があったのか?権力に抑えつけられたのはどんな芝居だったのか?を伝え、みなさんにこの『明日のハナコ』のことを知ってもらえたら嬉しい。そしてついでに、この世界で毎日起こっている理不尽や権力の横暴について考えたり意見を言ったりすることを、こいつらみたいにショボく、カジュアルに、自信がないままでもやっていいんだな!と思っていただけたら嬉しいです。

自分の長い話を聞いて、やりたい!と言ってくれた俳優ズ。応援と賛同を意味するクレジットに名前を連ねてくれたみなさま。「協力より強い言葉がいいんじゃない?共闘とか。半分本気、半分ギャグで」と提案してくれたニッポンの河川の福原充則氏。それを快諾してくれたスイッチ総研の大石将弘氏、ゆうめいの池田亮氏、ほか「応援してる!」とすぐに連絡をくれた皆々さま。感謝しています。

そして、この素朴で誠実な2人芝居のたくさんの台詞を覚え、一生懸命に稽古し、きっとたくさん緊張もして本番をやりきった高校生たち。心から尊敬しています。カッコいいね。もしみんなが「あんまり騒がないでほしいなあ」と思っていたらごめんなさい。謝ります!

でも、みんながドキドキしながら自分と闘い一生懸命に実現した芝居が、批評されるでも議論されるでもなく「なかったこと」にされるのは、人として俳優としてどうしても黙っていられませんでした。戯曲に書かれていることを、その意味も分からずにただ言うようなひとはまともな俳優のなかには1人もいません。自分の知らないこと、思っているのと違うことを芝居のなかで言う時は「どうしたらそれを言えるのか?」を考えます。試します。もがきます。それが稽古です。芝居をしている時、みんなはまぎれもなく俳優であった筈だと思う自分です。俳優は台詞に書いてあることは命じられるままに何も考えずに言うでしょ?といわれたら、自分はやっぱり思います。「俳優なめんな」と。カッコいいみんなに負けないように、私たちも頑張ります!

福井の高校演劇から表現の自由を失わせないための『明日のハナコ』上演実行委員会に連帯し、なかったことにされた高校生の2人芝居を自分たちでさくっとやってみます。敷居を低く、カジュアルに!しかし本気でそしてできれば面白く。

何卒よろしくお願い申し上げます!


「なかったことにされた高校生の2人芝居がきっちり面白かったので自分たちでさくっとやってみる会」発起人

光瀬指絵
(俳優・ニッポンの河川/スイッチ総研)


なかったことにされた高校生の2人芝居がきっちり面白かったので自分たちでさくっとやってみる会
『明日のハナコ』

【脚本】
玉村 徹(福井農林高校演劇部元顧問)

【演出】
光瀬指絵(ニッポンの河川|スイッチ総研)+
ゆかいな仲間たち

【日程】
2022年4月8日(金)〜10日(日)

【会場】
梅ヶ丘BOX
東京都世田谷区梅丘1丁目24−14 フリート梅丘B1
梅ヶ丘BOXへの行き方

【出演演奏など】
石倉来輝
(ままごと)
川田希
田中祐希(ゆうめい)
福永マリカ
光瀬指絵(ニッポンの河川|スイッチ総研)
茂木大介
森谷ふみ(ニッポンの河川)

【演奏】
井高寛朗


【タイムテーブル】

◉各回30席程度。
受付開始・開場ともに開演の20分前です。
上演時間約40分。各回終演後に出演者による20分程度の「ささやか座談会」を予定しています。
◉出演者は【回替わり】です。
◉チームにより「ほぼ通常上演」「躍動的リーディング上演」「さくっと読んでみる上演」と上演の形態がことなります。



【チケット】
◉料金
[一般]
1,500
[高校生] 無料(のど飴付き)
[中学生以下]
100
※未就学児乳児不可。
※本来であれば小さいお子さんやご家族連れのかたに是非いらしていただきたいと思う私たちです。今回は小さいみなさんをお迎えできる体制が整わず、申し訳ありません!!

◉発売日
2022年3月21日(月・祝)AM10:00発売

ご予約
カルテットオンライン
https://www.quartet-online.net/ticket/hanakoyattemirukai


【スタッフ】
出演以外のあれこれ:有吉宣人
途中参加で応援してる人/制作補佐:黒澤たける
当日運営:なかったことにされた高校生2人芝居がきっちり面白かったので自分たちでさくっとやってみる会、藤田理子
舞台写真:鈴木淳


【協力】
機材協力:吉田敏
会場協力:梅ヶ丘BOX


【共闘/連帯】
スイッチ総研
ニッポンの河川
ゆうめい
福井の高校演劇から表現の自由を失わせないための『明日のハナコ』上演実行委員会
...and more!!

【主催】
なかったことにされた高校生の2人芝居がきっちり面白かったので自分たちでさくっとやってみる会