2025年度に博士号を取得した藤井真栄と申します。私は卒業研究で配属されて以来、6年間平野研究室にお世話になりました。小学校と同じくらい長い期間在籍していたことになります。振り返ってみると、この6年間はこれまでの人生の中でも特に大きな変化を経験した期間でした。ここでは、平野研での生活を通して自分がどのように変わったのかを紹介したいと思います。
まず研究についてです。卒研配属当初は何も分からず、「自分に研究ができるのだろうか」という不安ばかりを感じていました。しかし大学院に進み研究を続けるうちに、次第に意識が変わっていきました。自分の研究が進むかどうかという不安よりも、研究室の一員としてどのように貢献できているか、自分の研究成果を十分に世界へ発信できているか、といったことを考えるようになりました。
このような変化が生まれた背景には、論文投稿や国際学会での発表、そして世界中の研究者との議論といった経験があります。平野研での研究生活を通して、研究は個人の努力だけではなく、研究グループの一員として責任を持って進めていくものだということを実感しました。自分の視点がローカルなものからグローバルなものへと広がったことは、私にとって大きな成長だったと感じています。この視点は、研究の世界だけでなく、社会に出てからもきっと大切なものになると思います。
研究以外の面でも、平野研には多くの「こだわり」の文化があります。例えば、研究室のメンバーで食事やお酒を楽しむ機会が多くあります。平野研に入るまでは、お酒に特別なこだわりはなく、自分で買って飲むこともほとんどありませんでした。しかし平野研の飲み会では、味を楽しみながらお酒を飲む文化があります。おつまみにもこだわりがあり、今まで試したことのなかった組み合わせに出会うことも多くありました。例えば、研究室で教わったブルサンとクラッカーの組み合わせは、今でも自宅でよく楽しんでいます。最近では、自分で気になったお酒を買って晩酌することも増えました。
また、飲み物という意味ではコーヒーも印象に残っています。平野研の影響でコーヒーにも興味を持つようになり、今では自分で豆を買って、毎朝コーヒーを淹れるのが日課になりました。このような小さな習慣の変化も、平野研での生活を通して見つけた新しい楽しみの一つだと思っています。
平野研の「こだわり」という点では、プレゼンテーションや研究そのものにも多くの特徴がありますが、その点については他の卒業生の方が詳しく紹介していると思いますので、ここでは割愛します。
このように平野研での生活を通して、私はグローバルな視点と、何事にもこだわって取り組む姿勢を身につけることができました。そのおかげで研究はもちろん、私生活もより豊かで楽しいものになったと感じています。平野研は物理を学ぶ場であると同時に、新しい自分を見つけることができる場所でもあると思います。
(記事の内容は2026年3月時点のものです)
2019年度修士卒の大塚瑠莉です。平野研では、学部から修士課程までお世話になりました。大学入学当時は生物学を専攻するつもりで物質生命理工学科に入学したのですが、入学後に物理学の面白さに目覚め、宇宙の研究がしたいと平野研を志望しました。
平野研では、ハドロン物理学は勿論のこと、研究者や社会人としての基礎を教えてもらいました。研究者としての心構えから、連絡の仕方から、プレゼンの仕方まで…。配属されたばかりのころ、「これからは共同研究者になるのだから“先生” ではなく“さん” で」と言われたのは今でも強く印象に残っています。また、プレゼンの指導は正直厳しかったです。スライドの作り方から発表の仕方、時間配分まで、他の研究室とは比較にならないほど細かい部分まで見てもらいました。大変でしたが、反映させた分良くなるのを身をもって感じましたし、卒研発表から修論発表を経て力がついたなと感じました。
もちろん、厳しいことだけでなく、楽しいことも沢山ありました。「お茶会」ではメンバー全員でお茶しながらお話ししたり、ワインの美味しさを教えてもらったり。研究していると、たまに平野さんが学生部屋に「コーヒー淹れたけどいる?」と淹れたてのコーヒーをおすそ分けしてくれるのが嬉しかったです。
現在、私は企業で情報分野のサイバーセキュリティの研究者として働いています。論文を書いたり、学会発表したり、分野は違えど研究を続けています。入社以降、発表や研究姿勢を褒められることが多く、これは平野研で培った力だと感じています。大学で自然科学を学ぶ人の中で、生涯それを職にして生きていく人はわずかです。私を含め、就職して別の道に進んだ同期や先輩が沢山います。ただ、分野は異なっても、その根となる部分を鍛えていただいた研究生活でした。
(記事の内容は2024年2月時点のものです)
2022年度学部卒の木村奏と申します。平野研には学部4年の1年間お世話になりました。卒業後は東京大学大学院に移り果樹の品種改良の研究をしています。物理と農学は一見共通点のないように見えますが、平野研での学びは現在の研究生活に大きな影響を与えています。ここで私にとっての平野研での学びを少し共有できればと思います。
「No Communication, No Physics(コミュニケーションなしには物理なし)」。これは私が研究室に入って初めてのゼミで平野さんが最初に私たちに伝えた一言です。物理学者に対して “1人黙々と研究をしている人達”という印象を持っていた当時の私は非常に驚いたのを覚えていますが、研究室での一年を通してコミュニケーションの本質を考えてほしい、という平野さんからのメッセージだったのだろうと今振り返って思います。
その言葉に表されているように、平野研での一年はコミュニケーション力が非常に必要とされました。研究の質問ひとつにしても、自分は何が分かっていないのかを言語化する力が必要でしたし、研究進捗の発表などでは現状を正しく伝える力が問われました。印象的だったのがコーヒーを飲みながら話す時間、コーヒーブレイクです。一見研究活動と関係のない活動に見えますが、リラックスしながらしたちょっとした会話が研究の議論につながることもあり、研究活動とは非常に様々な要素を含むことを学びました
そんな一年を通して思うのは、コミュニケーションとはただ単なる情報のやり取りではなく、自分を深く理解する手段であるということです。コミュニケーションを通して相手の興味関心、得意不得意が見えてきますが、それ鏡として自分がどんな人間なのかを知ることができます。研究においては、それは相手の専門性、自分の専門性を理解することに他なりません。学部時代はその認識が研究活動で詰まった時、誰に相談すべきかの指針になりましたし、現在はその認識が研究の独自性、あるいは共同研究者と良いコラボレーションを生むきっかけになっています。
理論物理は非常に専門性の高い分野ですが、そこでの一年を通して私は汎用性の高いかけがえのない学びを得ることができました。今この文章を読んでいる方の中には研究室選びに迷っている方もいるかと思いますが、その方にもそのことが伝われば幸いです。
(記事の内容は2024年2月時点のものです)