認知加齢研究が専門の、星薫先生(放送大客員准教授)によれば、加齢による記憶の低下は限定的なものに過ぎないといいます。
📗健康な高齢成人の意味記憶あるいは語の意味や事実情報、いわゆる知識の再生能力は低下しない。(中略)ただし、思い出すのに多少時間がかかることはあるかもしれない。(p.89)
📗多くの高齢者は、「年をとれば記憶力は悪くなる」という言い古された信念のせいで、自己効力感を縮小させてしまっている(=自信を無くしている)のかもしれない。(p.91、カッコ内は引用者による)
つまり、年をとると記憶力が衰えるのは、そう思い込んでいるからかもしれない、ということですね。この際、そうした思い込みからは自由になりましょう。
また、高齢になると、自分の記憶を過信する傾向もあると言います。海外の研究では、
📗高齢者は自分がどの程度よく記憶できているかに関して正確に予想できず、多くは過大評価してしまう
📗自尊感情の低い人は、自分の記憶能力を過小評価しやすいかもしれないし、反対に、自分を好ましく見ている人は、自分の記憶能力について、甘く評定しやすい
などが示されています。
つまり、悲観的になりすぎず、かといって過信しすぎず、記憶の不確かなところはもう一度調べて確認するのが望ましいと言えそうです。
参考:大学院科目『成人発達心理学』第6回「注意と記憶」、p.87~93(この科目はすでに閉講になっています。)