近年多発する突発的豪雨の影響により、盛土や河川堤防をはじめとする土構造物の被害が増加し、土砂災害の危険性が高まっています。今後は、長寿命化を見据えた土構造物の維持管理が一層重要となります。地盤工学分野では、数値解析による土構造物の長期的な力学挙動の予測が重視されており、盛土や堤防の破壊形態や超長期挙動の把握を目指した解析を進めています。また、初期条件、材料特性、勾配、層厚などの多様な条件を考慮して盛土・堤防の築造を再現し、降雨条件などの外的要因による崩壊機構の検討と要因分析を行っています。
⭐植生工に着目した斜面崩壊防止機能に関する研究
⭐様々な対策工による堤防の越流・浸透リスク低減技術に関する研究
⭐築造プロセスを考慮した盛土の安定評価に関する研究
原子力発電に伴う使用済み核燃料の再処理過程で生じる高レベル放射性廃棄物は、地下300m以深の地層処分によって隔離されます。地層処分では、ガラス固化体と岩盤(天然バリア)の間を充填する緩衝材として、著しい吸水膨潤性と難透水性を有するベントナイト(人工バリア)が用いられ、多重バリアシステムを構成します。緩衝材は仕様確立に向け多様な力学試験が実施されてきたものの、依然として十分な設定条件とは言えません。そこで、各種強度試験や膨潤試験によりベントナイトの基本的な力学・膨潤特性を整理するとともに、建設から閉鎖以降を対象に、岩盤とベントナイト緩衝材の特性を反映できる熱・土・水・空気の連成有限要素解析を実施しています。これにより建設段階から供用期までの連続的な力学挙動を解き、両者の超長期(数万年オーダー)にわたる相互作用を評価します。さらに、解析条件の設定から結果の評価方法まで一連の手順を体系化し、処分施設の超長期力学挙動を予測する解析システムの構築を目指した研究を進めています。
⭐ベントナイト緩衝材の力学特性に及ぼす高温作用の影響評価に関する研究
⭐X線CTを用いたベントナイト緩衝材の内部機構に関する研究
⭐長期を見据えた熱/土/水/空気連成有限解析コードの構築・高度化
地盤工学では、安全で持続可能な建築物を設計するために地盤の性質や挙動を適切に評価する必要があります。それらの評価のために大量のデータを収集・解析し、有用な情報やパターンを抽出するデータサイエンスの利用が注目されており、地盤データの解析やリスク評価と予測、設計最適化等の分野で活用されはじめています。本研究室では、複数の機械学習手法を用いて、河川堤防および斜面を対象とした崩壊予測システムの構築に取り組んでいます。さらに数値解析と融合させることで、より精度の高い土構造物の性能評価手法の開発を目指しています。
⭐大規模水害リスクに対する機械学習を用いた堤防破堤予測モデルの提案
⭐データ駆動型アプローチによる広域斜面崩壊予測システムの構築と高度化
⭐機械学習による加速度応答解析を用いた簡易IRI測定手法の開発
⭐機械学習を用いた液状化予測モデルの高精度化による大規模データの検証