シナジー総研 時事コラム

COLUMN

日本の行政と貧困対策:監督と透明性の必要性


日本では、経済の発展にもかかわらず、貧困は根深い問題として残っています。特に若年層や女性を中心とした貧困は、社会的な不平等を反映しており、解決が急務です。この問題を解決することは、持続可能な社会を築く上で不可欠です。

若年層の貧困は、教育や就職機会の不足、家庭環境の困難さなどに起因します。特に女性の貧困は、低賃金、非正規雇用の増加、シングルマザーの支援不足が主な要因とされます。これらの問題は社会全体の問題であり、個人の努力だけでは克服できない構造的なものです。

そのため日本の行政は、これらの貧困問題に対処するため、様々な支援策を講じています。これには、生活保護制度、教育支援、就労支援、住宅支援などが含まれます。また、特定の課題に対応するために、非営利団体への支援も行われています。例えば、東京都は、若年層の女性を支援する一般社団法人Colaboに事業を委託し、交付金を提供しています。Colaboは、貧困に苦しむ女性たちに対する支援活動を行っており、行政からの支援を受けてその事業を展開しています。

言うまでもありませんが交付金には税金が使われるため、これらの活動について行政がしっかりと監督する必要があります。また、活動が正しく、効果的に行われているかを国民が知ることも重要です。国民は行政に任せきりにせず、問題に対して関心を持ち、解決に向けた理解と行動を起こさなければなりません。国民への理解が進まなければ、最終的な目標である社会全体としての問題解決には至らないからです。したがって行政は、国民が求めるならば、交付金を受け取っている団体からの事業計画書や実施状況報告書の開示に積極的に応じなければなりません。

しかし、前述のColaboの事業をめぐる会計の一部に問題が見つかり、住民からの情報開示請求にも関わらず、東京都が情報の開示を不当に拒む事態が起きました。この事例は、行政の透明性と責任を問う事件です。結果として住民による国家賠償請求訴訟が起こされ、東京地裁は東京都の違法性を認め、東京都側が敗訴する事態に至りましたが、この問題は氷山の一角だという見方が広がっています。

この事件は、行政による支援活動の透明性と監督の重要性を改めて浮き彫りにしました。今回の東京都の敗訴を一つのきっかけとして、様々な支援のあり方について見直しが進むことが期待されています。

2024年3月

チェルシー・ブランドの終売に何を見るか


人々の生活の変化には、「モノ」の存在が大きく関与しています。モノは生活必需品に限らず、生活を豊かにする嗜好品などにもわたり、中にはその存在が一時代を象徴するというような場合すらあります。菓子業界においては、「チェルシー」の全商品終売のニュースなどもその一つと言えるかもしれません。「チェルシー」は53年にわたるロングセラーで、特に年配の世代にとっては馴染のブランドでしたが、3月末をもって販売終了になるとのことで、多くのメディアがニュースとして取り上げられています。

「嗜好の変化による販売不振」「時代の変化についていけなかった」と断じればそれまでですが、ブランドを守るための戦略の難しさは今更論じるまでもありません。とりわけ、情報社会となって何事もスピードが増しているなか、「価値の消費速度」もまた昔とは差がついています。マスメディアが流す「トレンド」の移り変わりの早さによって、モノの価値の変化とは関係ない部分で新陳代謝が促されているという問題もあります。

一方、古くても消えずに残っていくものもあります。その法則は多岐にわたるため一概には論じられません。しかし例えば価値を知る消費者の口コミなどで広がっている商品やサービスは、メディアの作り出すトレンドに揺れることなく、定着していることが多いのも知られています。

このような変化の中で、企業やお店がどのようなブランド戦略をもって地域に根ざしているかを伝えることは、情報を扱うメディアの重要な枠割の一つです。私達月刊マスターズは、経済や地域社会における中小企業への直接取材に基づいて、様々な市場の需要の変化と価値創造の実例に迫り、社会の経済循環の要を解き明かしていきます。

2024年3月

ビジネスにおける生成AIの活用法


近年、生成AI(Generative AI)が様々なメディアでニュースとして取り上げられています。生成AIは、文書、画像、音声などのデータを生成し、変換するための技術のことです。これらがビジネスに大きな変化をもたらしつつあります。

現在、生成AIを導入することで、ビジネスの現場において多数の業務が自動化・効率化されている事例が報告されています。例えば、保険会社では文章生成モデルを、カスタマーサポートの記録作成時間の短縮に活用し、コスト削減と効率向上を実現しています。また製造業では、生産計画の最適化や不良品の早期検出に生成AIの分析能力を活用し、生産プロセスの見直しなどに繋げています。

生成AIは、機械学習モデルを用いています。主に文章を扱うものと、画像を扱うものに大きく別れていましたが、この1年の間に自然言語による画像操作、また画像分析を文章化するといった進化を遂げ、そのクロスオーバーがさらなる可能性の拡大をもたらしています。

生成AIを企業が導入することには多くのメリットがあります。まず第一に、業務プロセスを自動化することにより、時間的なコスト削減を実現できます。第二に、クリエイティブな分野において、生成AIは高度なコンテンツ制作を安価で提供します。第三に、大量の学習データに基づく分析により、多角的な視座を企業に提供します。

こうしたさまざまなメリットを持つ生成AIを導入しない選択肢はありません。問題は、それをどのように進めるかです。成果を最大化するためには、以下の点に注意する必要があるでしょう。

1. 生成AIを導入する目的の明確化:解決したいビジネス上の課題を明らかにする必要があります。

2. 適切なデータの活用:生成AIの作成するコンテンツを、使用者側で精査し、適正に用いる必要があります。

3. 成果の分析:導入によって得られたコスト的、品質的メリットを明確化し、再評価します。

4. 社会的影響への配慮:生成AIの使用における法律的、道義的側面にも配慮する必要があります。

今後、生成AIは、ビジネスのさまざまな側面で利用が進むでしょう。市場における競争力に大きく影響を与えることは確実であり、その動向に注目していく必要があります。

2023年11月

ロシアによるウクライナ侵攻に学ぶ

 

2022年2月24日、ロシアはウクライナへの軍事侵攻を開始しました。これによってウクライナの主権が侵害される事態が発生し、両国の戦争は300日を超えて続いています。ロシアはウクライナの南東部を占領し、その地域の住民に対して不当な行為を行っていることが連日報じられています。

多くの国がロシアの行いを避難し、ウクライナを支持・支援しています。しかし直接的な介入は避けていて、代理戦争との避難があることも事実です。日本国内でも多くの国民がウクライナを支持していますが、一部の政治家や著名人はロシアを擁護する発言をしていて、ロシアによる蛮行を容認するする人もまた少なくありません。

そのような中、日本の国防のあり方について見直しの空気が高まっています。これまで日本は戦争のための軍事力の放棄と平和外交を掲げてきましたが、一方でアメリカの抑止力に大きく依存してもきました。しかし北朝鮮の核開発と頻度が増す発射実験、中国の軍事力の増大、そして今回のロシアによるウクライナ侵略などによって、国防のありかたについて見直すべきとの考えが広まっています。

ウクライナは、自国は自国で守るという決意を示しているからこそ世界から支援されています。しかしそれでも、ウクライナとともにロシアと戦うという国は現れていません。これは、日本が自国を守る責任を果たさねば、いくら同盟国とはいえアメリカが日本の盾になることはないことを示しています。

安全保障に関し、タブーを乗り越え、議論する時期に来ているのです。

2023年3月

国葬を巡っての報道のあり方

 

2022年7月8日、元内閣総理大臣安倍晋三氏が凶弾に倒れる事件が起きました。訃報は日本中をめぐり、世界各国からもお悔やみのメッセージが寄せられています

事件が起きた原因は今なお様々な角度から調査が進められています。事件直後に比べれば、多くのことが明らかになってきましたが、まだ十分とは言えません。それはどの立場の人達にとっても、およそ共通する気持ちでしょう

故人の評価は、それぞれの立場によって異なります。しかし、民主主義国家において国民の代表として選ばれ国に尽くし命を捧げた人物に対しては、主権者として弔意を示すべきでしょう。よって岸田文雄首相は、安倍元首相の国葬を閣議決定し今秋執り行うことを発表しました

ところが直後から、あちこちで国葬に反対する声が噴出しました立場の違いによって、弔意を示したくない人がいることは理解できます。しかし、法に即しているかを疑問視するような声が多いことは問題です。何故ならば、法的根拠は岸田首相が発表の際に法律名を具体的に上げて説明しているからです

内閣設置法の第4条3項33条には、「国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事」は内閣の仕事であると明記されています。葬儀を内閣が決定することに法的な問題はありません

にもかかわらず「法的根拠がない」「憲法違反だ」と主張する声が多いのはなぜでしょうか政府の発表を一番に知る立場であるマスコミが、そのことを十分に伝えられていないということになるのではないでしょうか

情報を伝えること報道の基本で。それが十分に伝達できていないのであれば、これは報道の敗北でしょう。そうでないとするならば、なぜ事実を伝えないのでしょうか? マスコミの報道姿勢が問われています。

2022年7月

二重国籍は許容すべきか?

 

2022年1月、自民党の河野太郎氏のある発言が大きく注目されることになりました。前総理の下でワクチン担当相として辣腕を振るった氏ですから、現在の政府の対策の取り組みに諫言? というわけでもありません

発言は国籍に関するものです。「22歳でどちらか(の国籍)を選べというのは今の現実に合わなくなってきている」と発言したことが、二重国籍を容認する発言だとして、広まっているのです

確かに河野氏は「議論する余地はある」と述べていますが、それは現行の国籍選択制度について適切かどうかを検討することについてであり、二重国籍容認という意味ではありません。ではなぜそういった話が広まったのでしょうか?

一つには、二重国籍について国家の存在を脅かす問題であると多くの国民が認識し、もしもそうであれば大変な事態だとの警戒感があると考えられます。しかし、同時に政府与党内から二重国籍に対する容認論が出たということあるように思われます

議論が深まること望ましいのですが、誤った意図で発言が広まると、本来議論すべき問題についても対話は難しくなります世間の関心を引くために問題を拡大するような行為がはあってはなりません特にマスコミがそれに加担するようなことは許されません

月刊マスターズの2022年2月号では、巻頭特集としてこの重国籍問題を取り上げているので、よろしければこちらもぜひお読みいただきたい。

2022年1月

新型コロナが顕にした報道の罪

 

2020年5月25日、安倍内閣総理大臣は記者会見で新型コロナウイルス感染症について、首都圏と北海道の緊急事態宣言を解除すると発表しました。これにより全国に発出されていた緊急事態宣言は、一月半以上を経て全面解除。しかし、これは爆発的感染拡大を回避したにすぎず、新型コロナウイルスに対して引き続き対応していかねばならないことは周知のとおりです。

国や自治体、 感染症の各専門家や医療従事者のおおいなる献身的働きによって、また企業や国民のそれぞれが賢明なる判断をもって対策を実施したことで、いわゆる医療崩壊は回避されました。会見から引用すれば、「我が国では、人口当たりの感染者数や死亡者数を、G7、主要先進国の中でも、圧倒的に少なく抑え込むことができて」おり、「日本の感染症への対応は、世界において卓越した模範である」とグテーレス国連事務総長からも評されています。

もちろん、対応のためには平時では考えられない負担や自己犠牲が伴っていることは事実です。実際に新型コロナウイルスの社会に与えた影響は個人から企業、経済まであまりにも広く、命を落とされた方、事業継続が困難で廃業した企業も少なくはありません。しかしそれは、世界各地で生じている危機的状況や予想される最悪の事態にくらべれば、国民全員が協力して負うべきコストとして小さく抑えられていることは理解されなければなりません。正しい手段を選択していることと、不安を拭い去ることはまた別の問題なのです。

新型コロナウイルスに対して、政府や自治体は、数多くの対策を実施しています。首相官邸ホームページや各省庁のウェブサイトなどには、最新の情報が常に上がり、閲覧できるようになっています。ですが、それらをすべての国民に日常的にチェックするよう求めることは現実的ではありません。故にそれらの情報を、「より多く」「わかりやすく」「正確に」伝える存在が必要であり、それこそがメディアの役割であったはずです。

しかし、昨年末中国の武漢で新型コロナウイルスの感染爆発が生じ、その危険性を政府関係者や専門家が指摘し始めたとき以降、今現在に至っても、必要な政府情報を伝えようとせず、根拠のない、誤った情報を流して危機感だけを煽るメディアが少なくありません。感染症対策として日本モデルが世界から評価されていることを取り上げず、日本に批判的な意見だけを取り上げてそれが一般的であるかのように報じ、国民に不安と不信を広げているTV番組、新聞がいくつも存在しているのです。

さすがにこうした報道の異様さに気づく人も増えてきており、今、かつて無いほどにメディアの信頼は揺らいでいます。メディアに求められている役割を自ら放棄することは、業界の自滅を早めるだけであると自認しなければなりません。

2020年5月

企業の生き残りをかけたワークフローの見直し

 

これまで会社の平均寿命は30年と言われてきました。ところが、東京商工リサーチが2017年に倒産した企業を対象にした調査では、なんと平均寿命は23.5年だったそうです。倒産の理由としては、「環境適応できなかったこと」 がよく聞かれますが、その内容は多岐にわたります。現在、割合を増しているのは人材不足、後継者不足。これらの問題を解消するために、「仕事のやりがいをアピール」「コミュニケーションの活性化」などに重点をおく必要があると指摘する知識人は少なくありません。しかし、現実として労働条件・環境の改善をおざなりにして、精神論を振りかざしても問題の解決には繋がりません。時代に即した経営、業務管理を取り入れ、組織が健全、活発に機能させる必要があります。

こうした問題を克服するため、大企業では積極的にERP(業務統合)を導入し、事業における情報システムの統合・管理・分析を行っています。業務のワークフローを最適化し、コストカット、人材不足解消を図るのです。ただERPは開発費が高く、これまで中小企業での導入は現実的ではありませんでした。

ところがクラウドツールの発展はめざましく、近年無料または低廉なコストで様々なサービスが利用できるようになってきました。すでに「SNSを使って業務円滑化も図っている」といった中小企業も少なくないでしょう。しかし、SNSはあくまでコミュニケーションツールであり、業務管理や分析には不向きです。むしろ現場にとって、業務上の手間や負担が増えているという見方もあります。

これらの問題を解決する、中小企業向きのソリューションとして近年注目されているのがクラウド型の勤怠管理システムやワークフローシステムなどです。これらのサービスは、これまでエクセルや紙の書類上で行っていた様々な業務を、自動化、オンライン処理可能にし、業務スピードの向上をもたらしひいては人員不足を解消します。またこれらのツールは分析機能を備えていることが多く、管理・問題発見・改善にも役立ちます。

様々なメリットをもたらすこれらのツール。導入しない手はないのですが、見えざる問題は、これらを導入することでワークフローがこれまで何年、何十年かけて続けてきた流れと全く変わってしまうこと。企業が積み上げてきた「ワークフロー」は確かに一つの資産、財産ですから、変えることを逡巡してしまうのも致し方ありません。しかし、商品はもちろんですが、働き方も変えていかなければ、変化の早いこれからの時代を長く生き残れないことは明らかでしょう。

2019年7月

SNSの業務利用のあり方

 

インターネットの普及により、連絡が電話からメールに移行していった時代には「ビジネスメールのマナー」といったセミナーが盛んに開かれました。しかし今、必要なのは「SNSのマナー」かもしれません。

 特に注意したいのは、SNSという存在に対する世代間ギャップです。インターネットの黎明期を知るいわばSNS前世代にとっては、SNSはメールに代わる便利ツールという位置づけです。しかし、物心ついたときにはすでにメールよりSNSでつながることが自然な後世代にとっては、SNSは日常のコミュニケーションの一部です。

 業務連絡や情報共有にSNSを取り入れるケースは今やどこでも見られます。前世代にとってはそれはあくまで便利であるからそうしているのであって、あくまでSNSは道具。いかにして自分に都合良く使うかが大事であり、勝手が悪ければ使うのをやめれば良いと思っています。しかし、後世代にとってはSNSは自身の日常の生活領域の一つであり欠かせないもの。いわばプライベートの領域であり、他人に勝手に荒らされては困るものでもあるのです。

 SNSは全体発信が容易で既読も確認できるものが多いため、リーダーにとっては使い勝手の良いところが目立ちます。しかし、指示を受ける側のメンバーにしてみれば、自分宛てでないメッセージの着信に対してもいちいち反応せねばならず、無駄に緊張を強いられます。これらも過度になれば、ハラスメントに当たることに留意し、SNSを使用する必要があるでしょう。

2019年5月

進む外国人人材の登用


4月1日に創設される新しい在留資格の「特定技能」によって、外国人の就労に新たな門戸を開くことになります。これまでは、出入国及び難民認定法(以下、入管法)により、単純労働者としては外国人を受け入れないことになっていましたが、人材不足から技能実習生という枠組みで、一部の業界においては外国人労働者を受け入れていました。この制限が今回の新設される在留資格により、大幅に緩和されることになるわけです。


この特定技能ビザは、1号と2号に分かれており、1号としては14業種、2号としては2業種が指定されています。14業種には、これまで外国人が働くことが出来なかった建設業界や外食産業、介護業界、農業などが含まれているため、外国人雇用が一気に進むと考えられています。

就労期間は1号が5年。1号の修了者が試験を受けて2号を取ると滞在期間の制限がなくなります。そのため、「移民法ではないか」という声があがり様々なところで議論を呼びましたが、すでにこれまでにおいても、高度専門職として教育、研究、芸術、報道、医療などの分野で無期限のビザが存在していること、今回の第2号の指定を受けているのは建設、造船の2業種だけでともに高度技術を必要とされる分野であること、そして人材不足解消のために代替施策が現状として無いことなどから、これらを問題視する声は小さくなりつつあります。


そうして外国人受け入れに向けて各界で準備は活発化し始めましたが、外国人を日本に受け入れる活動をしている関係者は新たな問題が浮かび上がっていると言います。

それは雇用条件、環境が「魅力的でない」という理由で、日本での就労を敬遠する動きです。

技能実習生の過酷な労働実態が報道されたことも一つですが、SNSなどの情報ツールの普及によって実態が国内外で共有されるようになり、よりよい条件の欧州などに目的地を変更する対象者が多くなっているというのです。特定技能は技能実習生と異なり、送り出し機関や受け入れ側の組合などを介さないため、就労の自由度は高いかわりに労働条件や環境についてはリスクがあると思われています。

受け入れる企業側にも失踪や帰国措置を含めた様々なリスクがあるのだという意見もありますが、外国人に働いてもらう環境が本当に魅力的かどうかを見つめ直すことが求められています。

2019年3月