2010年 後半

新Googleサイトへの移行に伴いまとめたもの   降順(12月〜)

お年寄りの心得 

年末にあたり電子メールを整理していたら,大学で同期の大塚君から昨年2月にもらったメールに面白いことが書いてあった. 

・・・・年寄りに向けたこういう警句があります。「風邪ひくな、転ぶな、無理せず、義理を欠け」。今年もこの警句を守って元気に過ごしたいと思っています。・・・・

今秋発行の曾野綾子の「老いの才覚」にも同様の記述がある.年寄りが友人の葬式に出席しても知人は少なく元気な若い人がほとんどで,インフルエンザに感染したり,転んだりしたら意味がない.故人に対する気持ちの問題であり,義理を欠いても許してくれるはずである. 

「無理せず」という観点では,寒い時期の法事における長いお経も問題である.足がしびれてもお経の意味が分かればいろいろ考えることもできるが,まった く何のことか分からない.宗派によるかもしれないが,理解できるのは最後に法事の位置付けが唱えられる部分だけである. 

このことは長年気になっている未解決の課題である.先祖代々の檀家寺の僧侶には訊きにくいので,親類の法事の後,お務めをした僧侶に尋ねてみた.その僧 侶は会社を辞めて僧職に付いた人で,そのような疑問は僧侶の中にもあるとのことである(その僧侶は予めお経を印刷した小冊子を配って唱和させた). 

外国語の歌等も同じではないかという意見があるかもしれないが,メロディやリズムに包まれた楽曲が心地よく脳を刺激し癒されるのとは話しが違うようである.

お経はお釈迦さまの説法であるとのことである.そういうことであれば,日本語による概略の解説,説明がほしいと思うのは私だけではないだろう.

核家族化と老齢化社会が進む中,宗教の果たす役割が見直され,本来あるべき姿に戻りその役割を果たす時期ではないだろうか. 

[付記]上記の警句だけでは「義理を欠け」が強調されて、身勝手な年寄りが増えてきそうなので、今では、 「風邪ひくな、転ぶな無理せず、義理を欠け、礼を尽せば八方円満」、と唱えることにしているとのメールをもらいました。 

[一言] 今日の午後1時の気温は1.3℃,地球温暖化は本当だろうか? 長いスパンで見たらわずかな地球の揺らぎかもしれない. 

(平成22年12月31日) 

そんな知識は薬剤師には必要ない! 活性HOMO電子 

福井謙一教授は,1952年に「フロンティア軌道論」を発表し,1981年にノーベル化学賞を受賞した.それから30年が経過した.

この理論をずっと研究・教育に利用してきたため,どうなっているのか気になっていたので普及状況を調べてみた.なぜ気になったかというと,薬学6年制教 育のためのコアカリキュラムからこの理論が消えているからである.すでに当り前になった理論であるので,到達目標として項目を設ける必要はないというので あれば問題はない.ところがまったく逆である.コアカリキュラムの中間バージョンでは有機化学領域に教えるべき項目として「フロンティア軌道の説明ができ る」という記載がある.ところが最終(最新)版では消え,相変わらず古典的電子論(曲がった矢印理論?)が到達目標になっている.

在職中に実務系の教員が,フロンティア軌道論は薬剤師には必要ないと言ったという噂を聞かされたことがあった.その時は高等専門学校でも教えていることを受講学生に説明し納得してもらった.

情報公開が叫ばれる中,全国の大学のシラバスがネット上に公開されているので調べてみると,「フロンティア軌道論」を教えているところが増えているのに 驚いた.この理論に対応しなかった老教員が定年を迎え世代交代が進んだためか,若い化学系教員は教えているようである.中には物理化学で教えているところ もある(福岡大学薬学部).大学院等で構造活性相関と絡めて教えているところもある.パソコンで簡単にフロンティア軌道を図示することが可能になったこと も一因かもしれない.薬学部の場合,新設の私立大学薬学部や薬科大学は国立大学定年組が多く,対応が遅れている可能性が高い.

フロンティア軌道論はパソコン等を用いることなしに単純明快に化学を語ることのできる理論であることを指摘しておきたい.

ところで,薬剤師国家試験の後に,その年の出題内容に対するアンケートの集計結果が回ってくる.ある私大の教員は,ちょっと理屈っぽい問題になるといつ も決まり文句を書いている.それは「薬剤師の教育には必要ない知識」というコメントである.創造力のある医療従事者を育てるには原理を理解する能力の付与 が必要ということで薬学教育の改革が始められたはずであるが,今後が心配である.フロンティア軌道論でしか解釈できない反応,たとえばDiels- Alderは教えるように指定されているのにその原理は,教える必要がないと言うことであろうか.フロンティア軌道論では,芳香族性(安定性),熱で分解 し易い薬物,光で分解する薬物など簡単に予想できるのだが,国家試験予備校では,多くの科目と同様に暗記もののひとつであるらしい.6年制の国家試験では 暗記に頼る知識では合格しない方策がとられるとのことである.従来の予備校に依存した教育に傾きかけている大学には通用しないような出題を期待したい.

[一言] フロンティア軌道論に関しては,開講を疑問視されたことを以前にも触れた.現在,5年生は実務実習が修了し卒論研究に入ったが,6年制の予備校化が指摘されているので,再度取り上げた. 

(平成22年12月27日)

家電品無料回収 

今は使用しなくなったパソコンの処分法を調べてみたら,メーカーに送ってリサイクルするように資源有効利用促進法(改正リサイクル法)によって定められている.

それによるとCRT一体型のパソコン iMac G3の場合,4200円程度の費用と手続が必要である.使用しなくなった周辺装置,オーディオ機器等を処分するとかなり高額になるので,他に何か方法はな いかと調べていたら,「無料引き取り」というサービスがあることを知った.

ダンボールに詰めて送ると引き取ってくれる業者が全国あちこちにあるという言うことで調べてみたが,CRT一体型パソコンを引き取る業者はほとんどない といっても過言ではない.結局,CRT一体型でも引き取ると言う大阪の金属回収業者を見つけ出し,そこにiMacを送った.送料(1600円)だけで済み 製造メーカーへ送付する場合にくらべ1/3で済んだと思っていたら,完全無料しかも自宅まで取りにくる業者が熊本にもいると聞かされた.

さっそく電話すると業者がやって来て,下記の全ての機器を無料で引き取って行った.使わなくなったと言っても,それぞれに購入当時の経済的背景や思い出 があり愛着のある使用可能な機器類である.あっけなく小型トラックに積まれて消えて行ったが,何となくセンチメンタルになった.

オーディオ機器:デジタルFM&AMチューナー,カセットデッキ

PC周辺装置:外付けフロッピーディスクユニット,イメージスキャナー

キッチン用品:電子レンジ,電気オーブン.圧力鍋,フライヤー

ものによっては,例外的に料金が必要とのことであったが,大型の冷蔵庫でも規定の料金の数分の一の費用で済むらしい. 

さらに下記の物品も無料廃棄した.これらは業者指定の場所に持ち込めば無料で引き取るというキャンペーンを利用した.

ブラウン管テレビ2台,FM&AMチューナー,テレビ音声専用チューナー,ビデオレコーダー,8ビットパソコン,レーザプリンタ.モノクロ CRTディスプレイ,ワープロ(書院),掃除機,オイルファンヒーター2台,扇風機,蛍光灯5台,チェックライター,電気釜2台

レアメタル等の問題が浮上してきたこともあり,資源の再利用が叫ばれているが,どのようにリサイクルされているか知りたいものである.解体し,金目の物だけを選別して,ビニール,プラスチック類は不法投棄するようなことをされると廃棄を依頼した側にも責任が生じる可能性がある.

[付記]

・戦後始めての小学校入学を経験し,ものの無い時代に育ったため,ものを捨てることができなかった.物置に保管しておいても技術革新のため,再び使用することはない.結局すぐに捨てないだけの自己満足に過ぎない.捨てる決心をするのにかなり時間が必要であった.

・大型家電量販店がテレビ,冷蔵庫等の買換え購入の際,顧客からリサイクル料金を徴収しながら不要家電品がリサイクルに回されず,収集運搬業者によって中古品販売,輸出業者に横流しされていたという記事を思い出した.

(平成22年12月20日)

種々の暗号化に対応するための無線カスケード接続 

家庭内で使用する無線接続のためのブロードバンドルーターも「暗号化しろ」と言われて久しい.今回,時間的余裕ができたので,できる限り対応することにした.

比較的古い通信機器や無線カード(子機)の中にはWEPにしか対応していないものがあり,これらを含めて無線化するのに必要な手段は

WEP 古い暗号化法

WPA 暗号化の主流

VPN 専用線のような通信法

である.

このすべてに1台で対応できる無線ブロードバンドルーターが発売されているようなので購入したが,結局VPNが有線でしか繋がらずあきらめた.

そこで,投資を無駄にしないために2台の無線ルーターを直列に繋いで使用してみた.

[ケーブルモデム]

→有線→[A無線ルーター]---------------- WPA対応,VPN対応

→有線→[B無線ルーター]--------------- WEP対応

二台目の無線ルーターはアクセスポイントモードに設定した.

これでとりあえず順調に稼働中である.

[一言] 1台目はCG-WLBARGPX,2台目はMZK-W300NH2(マルチSSID)である.後者に関しては無線LAN環境におけるVPN設定に関してメーカーのサポートとメールのやり取りをしたが,解決しなかった. 

(平成22年12月19日) 

OS9用Chem3DをIntel Mac上で動かす 

分子描画ソフトとして知られている Chem3D は半経験的分子計算が実行できる上, 分子が構築しやすいことが特長の一つである.特に,分子同士のドッキングモデルを作成するのにたいへん重宝している.ところが,Macでは開発が止まっており,OS9 版を使う必要がある.そのため,Classic 環境が使える Power Mac G4 や G5 をサブマシンとして所有している研究者も多い.

世はIntel Macに移行して久しい.Windowsも動くので,OSを立ち上げ直してWindows版を使用すればよいではないかと言う人もいる.面倒なので,どうにかできないものかとネットを調べてみた.SheepShaverというエミュレーションソフトが公開 (2002) されており,OS7.5.2-9.04 が動くという記述があった(2007年頃~).ところが,Chem3D を試した記事は見つからない.見つからないのは試しても動かな かったのだろうと思い,SheepShaver 自体の導入を諦めていたが時間的余裕ができたので,試行してみた.

Intel Mac 上で Classic 環境を構築した記事はたくさんネット上 で見ることができるので,複数の記事を参考に Mac OS ROMを使ってOS8.6 を入れてみた.意外にも Chem3D は問題なく動き,AM1, PM3 等の構造最適化も可能であることを確認できた.欲を出して,OS9.1-2 について試してみたが,アナウンス通りうまくいかなかった.現在は OS9.0 で動いている.結論として,英語版の Chem3D を動かすためだけなら英語版OS(米国サイトでイメージを公開 している)の方が安定しているようである.

Chem3D on SheepShaver OS9

TCP/IPの設定にslirpを指定した結果 

[一言] 最近のWindows版Chem3Dは見栄えがよく,多機能になっている.ところが分子作成の基本機能は変わっていない.高価なソフトであるためできるな ら続けて使用したいソフトはたくさんあるがOSが変わり使用できなくなったものも多い.今回の場合,昔のメールや書類を見るのにも役に立っている.しか し,その程度と思った方がよいようである. 

(平成22年12月14日) 

追記

平成29年3月14日時点で最新の macOS 10.12.3 上でも問題なく動くことを確認した.

施主支給”という設備購入法 

ネットショッピングを見ていると「施主支給」という単語が目につく様になった.主に住宅設備の分野,特にリフォーム関係で目につく.

マイホームを建てたり,リフォームをする場合,依頼するハウスメーカーや工務店によっては,採用できる商品が限られていることがあるため,自分の気に 入った商品を選べないということがあるようである.そのような場合「施主支給」を利用することで,自分の気に入ったメーカーや商品を自由に選ぶことがで き,商品によっては,格安価格で購入することができるというメリットがあると説明されている.

洗面台,トイレ,キッチン等商品を購入しても素人は工事できないものが多い.そこで,工事も含めて注文したいが,取り付け工事は大都市圏(九州は福岡) に限られていることが多く,地方に住むユーザはその恩恵を得られることは少なかった.ところが,最近,地方の工務店を束ねた住宅設備のショッピングモール がネット上に開設された.調べてみると熊本市にも「施主支給」に対応できる工務店ができていた.

古いトイレを節水(5リッター程度)&省エネ型の新機能のものに取り替えたいと思っていたので,さっそくネット上の商店(工務店)にメールを入れてみ た.さっそく電話連絡があり最近加入したとのことであった.購入の際は,普通のネットショッピングと同じである.商品がない場合はメーカーのショールーム に定価見積もりをとり,業者に連絡すればメーカーから直接,自宅に宅急便で商品が送られてくる.

工事は相場があるので,業者によってそんなに差はないが,商品の購入代金は中間の業者が介在しない分,安上がりである.

普通のネットショッピングの場合,顔は見えないメリットがあるが,住宅設備は見えた方がよい.今回の経験では地元の業者であったため,既設の排水パイプの延長等にも親切に対応してくれた.他県からの出張工事となると出直し工事になったかもしれない.

インターネットは,情報漏洩等の問題のため,最近は悪い面がクローズアップされているが,いつのまにか社会生活の隅々まで浸透し,流通,商法,購入の方法までも変えようとしていることはまぎれのない事実である.

[一言]メーカーの販売代理店系列より数万円安い.これとは別に天井埋込み型換気扇を通販で購入し自分で交換したが住宅メーカー見積もりの半分程度の費用で済んだ.年金生活者の工夫の一端と捉えてほしい..

(平成22年12月13日)

多々あるプログラムミス 

プログラムミスでユーザーは損をしている.

最近の電化製品には,コンピュータの頭脳(CPU)に近い半導体回路が組み込まれ,いろいろな使用状況に対応した制御を行うためのプログラムが内蔵され ている.電気釜,電子レンジ,AV機器,自動車等はその典型的な例である.プログラムを作る際,起るかもしれない種々の誤動作や安全に対応しながら安定に 動作するように配慮するわけであるが,すべての状況に対応した検証はできないので,使用段階で不都合が起きることがある.クルマ等の場合は回収してプログ ラムを書き換える等の措置がとられるが,一般家庭で使用する機器類となると努力が足りないと言いたい.

最近経験したのは,C社の無線ルーターである.家庭内のどこにパソコンがあっても安価に無線接続できるので,多くのユーザが重宝している機器である. ケーブルテレビネットワークの下で使用していたが,時々接続が切れることがあった.自宅の隣近所でも使用しているし,電子レンジ,無線テレビドアフォン等 との電波干渉も報告されているので,原因はそのようなことであろうと思い,リセットしたりして復帰させていたが,最近メーカーのホームページを見ていた ら,そのような症状を改善するための修正プログラムが公開されていた.

CATVのほか,光ケーブル,ADSL, 電話回線等いろいろな接続形態があり,さらにパソコン,OS,アプリケーションの種類の組み合わせで利用条件は数えきれない.しかし,発売から3年経って いるので,今頃と言いたい.このようなことは多くの商品で起っているはずである.消費者は自分の設定や操作が悪いと思っているが,実際はメーカー側に問題 がある場合が多々存在することを指摘したい.

プログラムミスと言えば, 探査機「はやぶさ」でもミスがあったとのことである.2005年、小惑星「イトカワ」に着陸した際に岩石採取のための金属球 を発射できなかったのは、地上から送ったプログラムにミスがあったのが原因だったことが明らかになった(宇宙航空研究開発機構の検証で判明).

このほかにも,入試資料の作成ミス,採点プログラムのミスによる追加合格,車のブレーキタイミング,税金過払い等々枚挙にいとまがない.


[一言]修正プログラムを使ってアップデートする際は「自己責任でやれ,メーカーは責任はとれない」と記載している通信メーカー(P社)があるがこれも問題である.

(平成22年12月5日)

情報漏洩 

以前,社会の指導層のコンピュータ不勉強が現代社会を混乱に陥れている可能性が大きいということを書いた.

今回の尖閣映像流出事件も同じである.恐らく,日頃コンピュータ操作を担当している若手が,上司に「コンピュータは(俗に言う)インターネットには接続 されておらず,受け渡しはコンパクトフラッシュ媒体で行っているので,大丈夫です」.とか何とか言ったのだろう.コンピュータ操作を若手に任せている上司 は,インターネットに接続されていなければ情報が流出することはないと思ったに違いない.組織内の共用コンピュータのパスワードは有って無い状況であり, 関係者は誰でもアクセスできたようである.

国会の質疑では,情報処理技術の進歩に即応した法律の整備を行ってこなかった自らの責任を忘れ,担当大臣の責任問題だけを議論している.

もはや臭い物に蓋をすることはできない時代である,インターネットを利用すれば自分の意見を述べることは簡単であり,内部告発は当たり前になってきている.インターネットが国家の体制さえも崩壊に導く可能性があることは経験済みのはずである.

社会の指導的な立場にいる人達は,専門学校や大学生と一緒にコンピュータの導入教育(実習)を受けるべきである.そうすれば,金融機関で端末機を操作し た使い込み事件等も激減するはずである.大学では,「コンピュータを購入させておいて,教員の不勉強で活用していないではないか」という保護者のクレーム もなくなるだろう.年金問題に関しても「高性能コンピュータの導入で解決できる」などと言わなくなるだろう.

このようなことを知人と話題にしていたら,「上層部にいる人達はコンピュータ世代の人間ではないのだから仕方ない」と言っていた. 

果たしてそれは正解であろうか? 否である.

2001 年度に,総務省は570 億円超の特別補正予算を組み,全国のすべての自治体を対象にIT 講習会の開催を促した.成人人口の5%を想定したIT 講習会であった.波及効果をねらった同様の措置は以後も続いた.

現在定年前の人達は十数年前に勉強するきっかけがあり,以後研鑽を積んできたはずである.

特に公務員は対応できないといけない理由がある.

総務省は「国民のための情報セキュリティサイト」を開設している.

大学の情報リテラシイ教育では必ず紹介する内容である.国民に勉強しなさいというからには,公務員は当然修得しているはずである.

ITは日々進化する.勉強せずIT教育に取り残された人達のIT再教育を実施したらよい.それでも不安であれば,今後コンピュータを使わない方式にすればよい.海上保安庁の通信は手旗信号ということになるかもしれない.

追記

警視庁外事3課の内部文書とみられる文書がインターネット上に流出した問題

ウィキリークスによる米外交公電暴露

などもまったく同じである.

(平成22年11月30日) 

薬学6年制教育,予備校化は厳禁のはずが・・・・ 

平成18年度より薬学教育6年制がスタートした.

第一期生は5年次になり,現在学外の医療施設で実務実習(2.5ヶ月×2)を行っている.

一方,4年生は共用試験を前に,予備校の模擬を受けさせられ,各大学は他大学と比較して一喜一憂しているようである.

6年制移行後最初の国家試験のための模試も始まったようである.ところが,実務実習に出ている間に4年間集積してきた

基礎的な知識はリセットされてしまっているという話を複数の大学の教務関係教員から聞かされた.

このような状況だから,卒業研究どころではないということらしい.

6年制改革は早くも崩壊し始めているいるようである.

別稿へ

ゴミの分別収集 

熊本市では,10月1日からゴミの分別収集が厳密になった.他の都市並になったと言った方が正確かもしれない.

これまで,プラスチック容器包装のマーク(プラと回転矢印)が印刷されているにもかかわらず,燃やすゴミとして紙片クズと一緒にしていたが,分別しなさ いということになった.まとまった紙類は資源として回収することもあり,実施してみると,あらためて紙類は少なく,プラスチック容器包装の方が大勢を占め ることに気付かされた.

市民への広報活動もたいへんのようである.テレビでは市の専門家が,デモ用廃棄物サンプルをレポーターに分別させて,コメントしている映像が流されている.

番組を視聴していてすこし気になることがあった.汚れたものは水洗いして出すように言っていたが,身近にいる人達を観察すると,皆さん結構真面目に洗っ ているようである.熊本は地下水が豊富ではあるが,何となく気になることである.エコ,リサイクル,二酸化炭素削減等をトータルで考えると水の使い過ぎは たいへん気になる副産物である.

ポリエチレン等を化学的に再利用する際には,必ず洗浄するはずである.大量の水を必要とするような物や紙の部分を剥がすために水を使うような物は分別する必要はないのではないだろうか.

ゴミの分別に関しては,その不要論を唱える学者もいることは事実である.「ペットボトル」は分別回収しても再びペットボトルに再生することはできないよ うだ.回収しても再利用率が低いと主張する科学評論家もいるがはっきりしない.容器包装のリサイクルはビジネスにならないから行政が法律でやらざるをえな いという意見は本当かもしれない.放置しておくといい加減になってしまう人達を環境問題に絡めて,躾けるのに役に立っているという精神論までまかり通って いる.

この話題こそ,国の統計情報の信用性も含めて,経済的観点からbefore/afterが情報公開されることを望みたい.

(平成22年10月24日) 

パソコン教育一人一台 

昨夜のNHKの番組(ビジネス系)で,小中学校に於けるパソコン教育が話題になっていた.

電子黒板やiPadに代表されるタブレット型端末を使ったPC教育に詳しい専門家が,試行した経験談とバラ色の構想を紹介していたが,一方ではそれに批判的な識者がいつもながらの反論をしていた.

そこで話題になっていたのが,一人一台のパソコン教育についての話である.専門家によると韓国やフランスは1年以内に実現するという.我が国はと言うと,10年先になるそうである.

聞きながら,今更という感が強かった.司会者も同様なことを言っていた.このようなことは何回も新聞記事になっている.審議会の提言,計画あるいは試行段階なのに,決定したような書き方に惑わされてしまっているのかもしれない.

熊本大学において,学部レベルで一人一台を実現したのは12年前である.当時,施設拡充,設備の導入にあたって書類に書いたことを思い出した.義務教育 におけるPC教育の遅れを一気に挽回し来るべき情報化社会に対応するという内容であった.最近は義務教育+高校教育でPCの基礎教育は済んでいるので,” 大学教育としての情報処理教育”の必要性を訴えるように変わってきたが,実情は以前と変わっていない.

私立大学薬学部での最近5年間の情報教育の経験から言えることは,高校までの情報処理教育はほとんど役に立っていないということである.毎年130名中 数名程度が過去に教わったことをぼんやりと思い出して対応している.受験勉強で頭がリセットされてしまったのであろう.携帯電話で十分と思っていた子供た ちが,情報処理教育(1,2年年次)が終了する頃には,専門教育や卒論などでのPCの必要性を意識し始めるのだが,その時期には国試対策に追われて,ま た”リセット”という歴史を繰り返すことになりそうである.

アナログ的思考に慣れた頭脳にコンピュータ的デジタル思考を受け入れることができるのは20代前半までであることを指摘しておきたい.

[一言]普段目立たない子が意外な能力を発揮することがあると指摘していたが,女子の多い薬学部でも同じような経験をした.大学に於ける情報教育は男子復権の最後の機会である.それにしても,大学を含めて教員の情報処理教育が先決事項であることは言うまでもない.

(平成22年10月17日)

iPadを使用してみて 

アップル社の携帯型電子端末(タブレットPC)iPadがアメリカで発表されたのは今年の1月,4月には米国,5月には日本でも発売が開始された.

iPadが発売された時のマスコミやIT関係者のフィーバーぶりをテレビで見て何となく疑問に思ったことを思い出す.

その時のマスコミ,評論家の評価は総じて,PCや読書の概念を変えてしまうというものだった.特に読書に関しては,指で本をめくる映像があちこちのテレ ビ番組で放映された.その映像につられて購入した人も多いそうである.ところが,購入すべき和文の電子書籍がなく,がっかりしている購入者も多いようであ る.本をスキャンしてpdfファイルをつくり,それを取り込む方法などが紹介される始末である.

使用して感じたことは,起動時間がない,マウス操作から開放され指で操作できる程度で,特に新しいことはない.トロン計画が米国の圧力で頓挫していなかったら,ずっと前に実現していた技術である.

我が国だけでも,3ヶ月間に300万台以上売れたようである.売れると分かると,国内メーカーも同じような機能を持った端末を作り始めたようである. ハードウエアが発表される度に,ソフトウエアや利用可能なデータの整備が叫ばれるがいっこうに進まない.iPadもその典型的な例と言えそうである.ハー ドウエアの能力を生かすソフトウエアの開発やデータベース,電子書籍の集積が急務である.

[一言]読書好きな人は容易に本にアクセスすることが出来るため,読書が進むかもしれないが,読書嫌いが読書好きになるとは思えない.

(平成22年10月11日)

今年のノーベル化学賞 

鈴木章,根岸英一,リチャード・ヘック博士がノーベル化学賞を受賞した

クロスカップリング反応の発見が授賞理由である.有機化学の究極の目標である炭素ー炭素結合を結びつけ,目的とする炭素骨格を作る手法の開発という点で非常に興味深い.

実際の反応では,ハロゲンが付いた炭素とホウ素置換基の付いた炭素を,パラジウム触媒を用いて結びつけ炭素ー炭素結合を作る反応である.点と多点のどこかではなく,希望する点と点を結びつける反応と言っても過言ではない.

マスコミは久しぶりの明るいニュースに過熱気味である.しかし内容が分からないためか取材記者の説明も今ひとつという感が強い.

Ar-X + R-BY2(Pd触媒,塩基)------> Ar--R

ノーベル化学賞は7人目であり,物理学賞と並んだ.

これで,我が国の科学技術は万全ということを言っている評論家が居るが,それは勘違いである.現在ノーベル賞を受賞している研究は30年前の仕事であり, ハングリー精神に満ちた時代に育った研究者によって達成されたものである.その後の我が国の科学教育は間違いを犯してしまった.その結果,理科離れ,ゆと り教育,医学部集中,予備校依存化などの問題が惹起し,子供達が得意とする分野をのばす雰囲気を奪ってしまった.最近10年のノーベル賞の実績を,今度十 年,二十年さらに続けるためにはすでに人材が不足していることは確実である.理科離れの結果として,層が厚くなった文系や医学系が取って代わるかはなはだ 疑問である.

薬学の分野においては,有機化学や合成化学は3Kの典型とみなす風潮が蔓延してしまった.卒論研究においても生物系研究室は人気があるが化学系は人気がなくなって久しい.これを機に,3Kを避けず敢えて挑戦してくれる若者が増えることを期待したい. 

(平成22年10月7日) 

添付ファイルがwinmail.datに化ける場合の対応 

同僚の先生からメールに添付されてくるファイルが,数回に一回,winmail.datというファイルに化けて添付されてくる.その度に,送り直してもらっているが,受け取った側で元のファイルに変換できるようである.

退職後,大学のメールをいつまでも使えるわけではないので,GoogleのGmailを使用しているが,問題のメールをGmailに転送したところ,元のファイルに戻っていた.

さっそくwebで調べると,MicrosoftのOutlookで送られたEメールに発生する問題らしく,専用の変換ソフトが開発され紹介されてい る.Macの場合,「TNEF's Enough」が知られているようである.その紹介記事中に,Gmailのことが控え目に書かれていた.

今回はpdfとWordファイルであったが,すべてのファイルに適用できるのか否か今のところはっきりしない.添付されたファイルが化けて来るのを待っている今日この頃である.

(平成22年10月6日) 

薬局閉店 

9月30日,父から受け継いだ薬局を閉店した.

午後9時の閉店後,店の横に立てている看板(くすり,文化薬局)の大きな文字を背景色の白ペンキで塗りながら,閉店の現実と感慨を噛み締めた.

大正15年(1926)に熊本市山崎町に開業し,戦時中の疎開による中断はあったが,85年間,2代にわたり街角の化学者として薬屋を続けてきたことになる.

その間,薬剤師の社会的地位は,予想以上の低下をたどり,その実態を薬学部と街角現場の両面からつぶさに見聞きしてきたといっても過言ではない,

父の薬局には調剤室と試験室が完備していた.調剤室には調剤用原薬,上皿天秤,精密天秤,乳鉢,濾過装置等が置いてあり,子供心に入室し難い雰囲気が あった.また試験室には体温計試験器や顕微鏡等が置いてあったことを思いだす.そのほかにもちょっとした化学実験操作が可能なガラス器具が一通り揃ってい た.薬剤師国家試験の実地試験の練習は病院ではなく,自宅で行ったと言っても信じてもらえないかもしれない.粉末を調合し,薬包紙に分包するやり方も父に 教えてもらった.

器具類は現在は倉庫にしまったままである.薬局の検査の際,それらの機器類を借りに来た同業者や新規開業者が居たことを親から聞いたことがある.

製剤技術の進歩により,調合することがなくなり,薬剤師の存在自体が疑問視される事態が到来した.調剤とは情報を調合することと定義されるようになって久しい.

それでも街角の薬局は,地域社会においてそれなりの存在性があったのは事実である.その理由を一々説明してもなかなか理解してはもらえないと思う.現 在,薬局と問えば,門前の調剤薬局と答えるだろう.しかし,そこに居る薬剤師ではカバーできない人間関係が街角の薬屋には存在する.車で郊外の量販店に行 くことのできない人,独り住まいの老人,親元を離れ悩み多い学生,健康保険のない外国人,そのよう人達との会話を頭に描けば,漠然と理解していただけると 思う.

小生が70歳で私大定年,家内も来年で定年の年である.昭和57年に親の薬局を引き継ぎ,平成5年に改築して薬屋を続けて来たが,その間,自ら経験しないと教わることのできない貴重な経験をさせてもらったことに心から感謝したい.

                                                 昭和初期の処方箋控

(平成22年10月1日)

敬老の日 

今日は敬老の日,熊本では藤崎宮の秋の例大祭の日でもある.

神輿に付き従う随兵行列の後に続く馬追い神事に参加するため,午前6時前から,市内のあちこちから湧き出るように藤崎八幡宮に向かって集まってくる.新屋 敷は藤崎宮とは白川をはさんで対岸に位置するため朝早くからにぎやかである.金属性の大音響のラッパや太鼓による独特のリズムに乗って踊りながら街中を練 り歩き,午後8時くらいまで続く熊本最大の祭りである.

そのようなわけで寝不足気味のところへ,町内自治会の世話人が”祝敬老”と書かれた茶と赤飯を届けてくれた.

対象者は70歳以上と言っていたが,自分がそのグループに仲間入りしたことを自覚するのに少々時間が必要であった.

ところで,老人が行方不明になっていることが話題になっているが,私の住んでいる熊本市新屋敷の町内では70歳以上の老人がどこに住んでいるか把握しているようである.

熊本も来春には新幹線が開通するが,若者が都会に向かってに吸引されるだろう.地元には老人ばかりが残り,挙げ句の果ては大都会で見られるような無縁社会?が出現するなんてことにならないことを祈りたい.

(平成22年9月20日)

家庭内電波干渉 

先日,これまで使用してきたインターホンを玄関から門柱に移しテレビドアホンに交換した.その際,家のどこに居ても対応できるように無線子機も導入した.

ところが,テレビドアホンは正常に動作するのに,無線ルーターが途切れる障害が発生するようになった.テレビドアホンのマニュアルを見ると注意書きがあ り,3メートル程度離して上下に設置するように書いてあった.最近は,書いておかないと後で問題になることを恐れ,マニュアルには必要以上にいろいろなこ とが書かれているので,かえって目立たない.

2.4~2.4835 GHzの電波を使用しているためであり,下記の機器と干渉する恐れがあるとのことである.

●電子レンジ

マイクロ波の周波数は2.450MHz

●無線LAN機器 (ルーター・AV機器・防犯機器など)

ルーター(IEEE802.11g)は 2.412GHz~2.472GHz (中心周波数表示)

●ワイヤレスAV機器 (テレビ・ステレオ・パソコンなど)

デジタルコードレス電話は2.4GHz帯

結論として,これらの機器に対して対策を講じていない古い無線ルータは使えないということである.同じメーカの新しい無線ルーターと交換したら電波が途切れることはまったくなくなった.

家庭内にも知らないうちにいろいろな電波が飛び交っている.自宅二階の書斎でPCのスイッチを入れると周辺隣家の無線ルーターの電波を6個くらい検出する始末である.

電波が枯渇すると言われて久しい.テレビの地デジ化もその対策の一環であることを思い出した.

OSのレベルが上がるとその上で動くアプリケーションも同時にグレードアップしないと問題が起るのと同様に,無線を使用する機器の場合,周辺の機器までも意識しなければならない典型的な事例のひとつである. 

(平成22年9月20日) 

入学者は禁煙 

朝日新聞,毎日新聞,西日本新聞,熊本日日新聞,および系列のテレビで,「入学者は禁煙」が報道された.

それにしても実現するのに時間がかかった.遡ると,薬学部開設後間もない2005年5月24日のことである.学生厚生委員の横溝助教授から,全学委員会 において分煙対策が議題にのぼっているとの報告があり,薬学部としての対応を決めるため,意見聴取のメールが教員各位に配信された.

私は学科主任として次の提案をした.

・率先して全面的な禁煙にすべきです.

・全学がびっくりするような提案をしたらいかがでしょう.

その後,公衆衛生学を教えている衛生化学研究室の山口教授を全学禁煙委員会の委員に推薦し,学問的立場からの説明を行ってもらった.しかし,他学部との考 え方のギャップに大変苦労したようである.日常的には,オリエンテーションや講義の際,あるいはホームルームにおいて学年担任からの禁煙についての説明を 実施し,2007年には学部のホームページに禁煙のページを作成し広報活動を開始した.その間,学部にも禁煙委員会を設置し,議論してもらったが,ここで も委員間に微妙な考え方の相違があったようである.一方では,教員の中に喫煙者がいて,薬学部キャンパスから出て道路や田圃で喫煙している姿を見ると,し ばらく様子を見ることも必要ではないかという意見もあり強行突破し難かったと言っても過言ではない.

3年が経ち,薬学部事務を取り仕切ってきた江藤事務員が入試課に異動したこともあり,表題の件は早急に実現すると思ったが,大学首脳が理解し,周囲の合意を得るにはそれから2年以上を要したことになる.

世の中には,「在って当たり前」というものがたくさん存在する.後世になって,実現するのにどうしてそんなに時間が必要だったのだろうと思うであろう典型的な例のひとつである.

テレビでは,受験者が減るという意見が存在したようなニュアンスの報道があったが,マイナーな私的な意見であり,実施を躊躇させるような意見ではなかったと記憶している.

(平成22年9月19日) 

銀塩写真,アナログ音楽&映像カセットテーブのDVDデジタル化 

今年の夏は,連日35℃を超える日が続いているため,屋外での活動は無理であり,屋内でできる表題の作業を行った.これらは,5年前にやりかけたものの,再就職のため先延ばししていた懸案事項であったが,どうにか解決法を見いだすことができた.

1)昔のフィルム写真をデジタル化

ネガフィルムが残っている場合は,フィルムスキャナー(Nikon製 COOLSCAN III)で取り込んだ.

写真しかない場合は,一般的な家庭用スキャナーで取り込む.

色あせた写真は画像の輝度,コントラスト,色相を調整できるソフトで補正した.Photoshop(簡易版)でもよい.カビやキズも消すことができるので見違えるように補正することができる.

注)COOLSCAN IIIは1993年当時の販売価格が10万円の装置であるが,SCSI接続のため使用していなかったが,SCSI-USB変換アダプタを用いれば MacOSXのクラシック環境で使用できることが判った.最近は安価な機種(1万円程度)が市販されていて,問題なく使えるそうである.


2)カセット録音した音楽をデジタル化

音楽テープは,アナログ音源をデジタル化するUSBオーディオキャプチャーユニット『PCA-ACUM』(デジ造音楽版 for Mac)(PCA-ACUM) 価格 5980(円) を使用した.高速に処理することはできないので,音楽を聞きながらデジタル処理し,順次ハードディスクに書き出すというイメージである.

3)8ミリビデオで撮った映像のデジタル化

DVDライターVRD-MC5 (VRD-MC5) 価格 21714(円) を使用し,DVDに書き出した.テープ切れや再生装置の劣化,製造中止を心配する必要がないので精神衛生上非常によい.

すべてMacのOSX環境で行ったが,Windowsでも同様に行える.最近はデジタル化を内職にしている人もいるようである.大きな声では言えない が,昔のVHSの映画などもDVDに変換しておくとコンパクトに整理できる.VHS再生機が消えてなくなる時代であるから,個人の趣味なら許してもらえる と勝手に判断している次第である.

DVDに保存されたファイルはVOB形式でありパソコンではいじれない.HandBrakeでMP4ファイルに変換し,iMovieで編集(切り貼り,タイトル挿入など)を行った.

日本語対応版のHandBrakeの場合,生成したmp4ファイルを動画ファイルとして認識しないことがあるので,英語版の利用を勧めたい.

(平成22年9月1日) 

データベースはただの空箱 

最近,”100歳を超えるお年寄りが健在なのか否か不明”と言った内容の記事が報道されている.話題になるたびに,関係者は「縦割り行政の弊害」,「横の繋がりが無い」,「個人情報のため手が出せない」等の言い訳をしている.

果たして,それは正解だろうか?

私は,管理者の勉強不足,怠慢に起因すると思っている.典型的な例として年金不払い問題を挙げることができる.当時の首相は,高性能コンピュータで処理するから半年で解決すると言っていた.周囲が言わせたのかもしれないが,そのような発言例は枚挙に暇がない.

「コンピュータで処理する」原理を理解していればそのような発言はできないはずだ.基になるデータベース,データベースの基になるデータ,その基になる 紙ベースの書類データがいい加減であることが問題になっているのだから,人の処理能力がボトルネックのはずである.入力データが揃っていれば,コンピュー タは瞬時に答えを出してくれる.

指導層に居る人は,いろいろな会合でITのメリットを聴かされ,キーワード的な表面的知識を持っている.さっそく部下にシステムの導入を検討させる.さっそく会議が開かれるが,議論の結果,業者委託の線で結論が出る.

具体的な例を挙げよう.国立大学に勤務している時,学生の試験成績をコンピュータで管理することになった.当時,学内LANも整備され,殆どの教員がパ ソコンを所有していたので,授業担当教員が直接成績を入力するものと思っていた.ところが,事務からの指示は,意外なものであった.◯月△日までに所定の 書類に書き込み提出しろというものであった.締切日厳守と言うので,その理由を問い合わせると入力は業者に委託するとのことであった.結局,コンピュータ 処理というのは清書,合計処理,成績証明のためということが判った.業者委託したデータをどう使うかの発想もなかったようである.それでも◯◯大学は成績 処理をIT化したということになるのである.

コンピュータを利用したことのない上層部(指導層)が耳学で実施したシステムが成功した例は殆どない.上層部がコンピュータを知らないため,操作は若い世代に任せざるを得ない.そのため.金融機関ではいろいろな不祥事が生じている.

委託された業者は,「それにしても知らなさ過ぎる,ここまで業者に任せてよいのか」と噂していると聞いたことがある.

2010/8/21の朝日新聞に,「なぜ逮捕?ネット・専門家が疑問も 図書館アクセス問題」という記事があった.ある男性が岡崎図書館にアクセスし逮捕された問題に関して,図書館側の業者任せ,警察のIT知識不足が招いた不祥事?と指摘している.

(平成22年8月22日)

6歳の戦争記憶 

1939年生れは戦後初の小学校1年生である.

戦後65年が経った.熊本も原爆投下の候補地にリストアップされていたという記事を読んだせいか,戦時中の記憶がよみがえってきた.

世が世なら幼稚園児の記憶にあたるが,現在の子供とはまったく異なるものである.

・ 熊本市山崎町の電車通りに面した薬局であったため,戦地へ向かうため熊本駅に向かって兵隊と戦車が行進する姿

・ 民宿する兵隊(何かの都合で汽車が出ない時)

・ 家庭用鉄製品を集める鉄回収(武器に転用)

・ 電車通りのアスファルトにできた防空壕(飛び込み式)

・ 馬車で島崎の隠宅(市内西部)へ疎開,途中でカボチャをもらったこと

・ 警防団が来て天井板を突き破った(爆弾が引っ掛るのを避けるため)

・ 熊本空襲と真っ赤に染まった空(焼夷弾)

・ 近くの家が焼夷弾(市内への投下の流れ弾?)で燃えたこと

・ 市中心部から避難する人達(一晩宿を貸りた人達)

・ 警戒警報と防空壕(4個)への避難

・ 機銃掃射の音,弾が竹に当たって跳ね返る音

・ 南から北に向けて飛ぶ米軍の飛行機の数を防空壕に隠れながら数えた

・ 本妙寺山の中腹に軍隊の防空壕が作られ,そこから民家に遊びにくる兵隊

・ 上級軍人による防空壕作りの指導(子供でもできると言った)

・ 市内空襲の時,落下した金属板とベルト(横文字が記載)

・ 終戦を伝えに来た近所の人

当時,大人が感じていた戦争体験にくらべれば,それほど悲壮感があったわけではないが,幼児体験としてその後の戦後体験と相俟ってたいへん影響を与えたこ とは否定できない.赤で記した語句は子供心に「何たることだ」と思った事項である.疎開した隠宅(祖母を隠居させるため)は一軒家であったため,焼夷弾が 命中して天井に引っ掛っても問題ではないと父は思ったようであるが,例外は許されなかったようである.子供心に愚行と感じたことのひとつである.

昭和9年生れの人のブログに,“戦時中のバカなこと”として,竹槍と天井板剥がしの文章がある.

参考ブログ:戦時中のバカなこと

総務省資料 一般戦災ホームページ:国内各都市の戦災の状況(大分市,佐世保市に記載あり) 

Googleの個人情報収集問題 

世界最大のインターネット情報収集会社であるGoogleが提供しているstreet viewは大変便利である。私は,初めて行くところの下調べに使用している.

インターネットの手ほどきをする時に最初にGoogle mapを見せると皆びっくりする.数年前に東京の自宅を売り払って熊本に帰郷した姉が,その家が今どうなっているか見たいと言うので,アクセスしたら建て替わっていた.その姉は今パソコン教室に通っている.

前職場で,情報教育が不得意という女子学生にGoogle mapを教えてやったら,さっそく家族に紹介したとのことである.それ以来家族の中でパソコンのベテランになってしまったと報告に来た.学部長も東京の自 宅を見せてくれた.ある助教授は自宅の前に駐車スペースがあることを示してくれた.

このようにすっかり生活に馴染んだGoogle mapも個人情報問題が指摘される事態になっているようである.韓国では,街角写真のほかに、ワイファイ(Wi-Fi)関連情報まで広く収集したという疑 いをもたれている.これは,もともとドイツの個人情報保護局(DPA)が指摘したことに端を発している.

Google撮影車両はカメラだけでなく,位置やワイファイ情報まで集められる装備を備えているらしい.この装備により、立体映像の他にもワイファイのネットワークアドレスや個人ユーザーの電子メール,検索記録などを収集したというのである.

ただ,Googleの撮影装備は,適切にセキュリティ設定したインターネット機器には入れなかったようである.

この件が引き金になったわけではないが,私も自宅無線LANのセキュリティを強化した.最新のセキュリティ対策に対応していない古い無線子機を有効利用 するために接続機器固有のMACアドレスでアクセス制限をかけていたが,不十分と指摘する意見が多いので最新のセキュリティ対策に切り替えた.

そのため新しいセキュリティ対策に対応していない古い無線子機は廃棄せざるを得なくなった.不正アクセスとその対策はイタチごっこである.その都度ソフトウエア,ハードウエアの買換えが必要となるのでビジネスチャンスに繋がると言う人もいる.意味深長な意見である.

(平成22年8月12日) 

偏差値社会の弊害 

日本の社会は,大学入試段階の偏差値によって,確実に輪切りにされていると言っても過言ではない.

共通一次試験前は,薬学部入学者の中には医学部に合格できる成績の学生が居たという話しを九州大学薬学部の入試担当者から聞いたことがある.ところが共通 一次試験以後は見事に輪切りされ,そのような学生はまったくいなくなったそうである.その後,他大学や予備校関係者からも同様の話を聞いた.

私立大学の場合は,国公立大学間で輪切りが顕著であることは別項で述べた通りである.たまに国公立大学に入学できると思われる学生もいるが,例外的な存在である.

偏差値偏重社会で話題になるのが,医学部進学である.最近,精神科医になった従兄弟と会食する機会があった.幼い頃,我は典型的文系人間と思っていたの で,医者になった理由を尋ねた.彼自身文系志向であったことを肯定し,高校の進学指導に従っただけと言っていた.高校教師との懇談会の際,進学指導の教員 と進学指導の在り方を議論したことがあるが,あくまでも”本人の希望”を尊重しているだけと主張するに止まった.進学指導が高等学校の実績づくりに深く関 連していることは周知の事実であるが,高校側は肯定することはない.

現在のように高偏差値の学生は医学部進学という風潮は,社会の活力を減衰させる(させてしまった).偏差値で輪切りにされた各階層から,いろいろな職業 へ人材が振り分けられる必要がある.医学部進学可能な人材が,教育者,研究者,技術者,法律家,公務員など幅広い分野で活躍すべきであるというのが,私の 持論である.

書きながら自分自身,「勉強しないと教育学部しか行かれんぞ」と言われたことを思い出した.真空管ラジオの組み立てに熱中していた高校時代の話しである.昭和30年代初めは,漠然とした輪切り社会の始まりであったのかもしれない.

最近は,”大器晩成”という言葉は聞かなくなった.辞書には「大人物となる人間は,普通より遅く大成するということ」と書かれているが,変化が早く,情報量の多い現在では通用しないのかもしれない.

私立大学では,国公立大学で通用する可能性のある学生については,大学院進学を勧めるが,大学院進学後に人一倍の努力が必要なことは,国立大学勤務中に幾度も経験した.大学院教育は,唯一の”大器晩成”をサポートする存在かもしれない.

高年齢になるまで自分探しを続ける風潮は,偏差値による進学指導の影響のひとつと言えそうである. 

(平成22年8月1日)

偏差値は無視できない存在? 

「偏差値で人間の能力を決めるべきではない」と言われて久しい.

私もそう思っていたが,旧制大学,新制大学,私立大学に勤務した現在,それが意味のないものとは言えないのではないかと思うようになった.特に,私立大学 で入試関連業務に携わった経験から,偏差値が重要な進路選択に利用され続けている現実を知った.指導教員にとって偏差値依存は楽であり,その以外の尺度は アナログ的でエネルギーの要るものであるためであろう.

薬学部の場合,国公立大学と私立大学では受験科目が異なるため偏差値の直接比較はできないが,かなりの数の国公立大学受験生が滑り止めに私立大学を受験 してくれるので,成績の直接比較が可能である.偏差値に換算して解析すると,入学者の偏差値は予備校のそれと見事に一致する.偏差値の高い受験生は殆ど入 学辞退し他大学を選択する.

受験科目の少ない私立大学に焦点を絞って勉強した学生は,化学一科目で受験し入学してくるため,進学後にかなり苦労することになる.受験段階では勉強し なかった理科科目が基礎となっている数多くの専門科目が必修となるため,化学ー生物を履修した学生は高校物理を,化学ー物理の学生は生物を初めから勉強す ることになる.

最低量の勉強のため,生物あるいは物理の1科目の記憶はリセットされていると言っても過言ではない.そのため,大学は高校補完教育を余儀なくされ,多く の大学で退職高校教師などを非常勤として実施している.入学させた以上は大学が責任をとるというのが当たり前になってしまった.大学に入ったら自分で勉強 するのは当然と言いたいが,思っても言わない状況になってしまっている.

どの程度の偏差値の学生が入学したか分かっているので,その学年の平均学力や留年生の数が容易に予想できるのだが,実際は1年前期試験の結果が判って初めてびっくりすることになる.

表向きは「偏差値依存社会はけしからん」と言いながら,高校,大学が予備校の情報に依存している現実はどうしようもない事実である.

大学入試とは異なるが,薬剤師の国家試験対策においても予備校に依存している現実は一般の人にはあまり知られていない.数多の学部の中で,予備校情報に もっとも依存しているのは薬学部かもしれない.6年制薬学教育が,本来の大学教育を取り戻す方策として機能するか注目したい.

(平成22年7月31日)

政治献金(薬剤師会) 

2010年7月19日の朝日新聞のトップ記事は下記のタイトルであった.

”7公益法人が政治活動 入会や会費徴収、政治団体と一体”

朝日新聞の記事の内容: 厚生労働省所管の7公益法人やその地方組織の会員が、本人の意思のあいまいなまま系列の政治団体に入会させられ、納めた会費の一部が特定の政党や政治家に 献金などとして流れていたことが朝日新聞の調べで分かった。公共の利益のための活動を目的とする公益法人が実質、政治活動をしていたことになり、厚労省は 「公益法人としては不適切な行為だ」と指摘、政治団体と明確に区別するよう改善を求めている。 

厚生労働省所管の7公益法人とは,「日本薬剤師会」「日本柔道整復師会」「日本栄養士会」「日本歯科衛生士会」「全日本医薬品登録販売者協会」「日本鍼灸(しんきゅう)師会」「全日本鍼灸マッサージ師会」である.

日本薬剤師会は自民党へ約2億5千万円,民主党へは約7千5百万円を献金しているとのことである.

私は,実家が薬局であったため,選挙が近くなると薬剤師会が集票マシンになることを知っていた.国立大学に勤務していた間は,公務員として,中立の立場 を貫く必要があったので,話題にすることはなかった.ところが,私立大学では実務家教員(教授)が薬剤師会への入会を勧める始末である.6年制になり長期 実務実習をお願いする立場である担当教員としては,そのように発言するしかないのであろうが,今回の記事の内容を知っている私としては,学科主任としても 積極的に賛成することはできなかった.

薬剤師会に真偽をただせば,「強制はしていない」と応えるだろう.そこで,批判的な開局薬剤師に尋ねてみた.年2万円を払わないと何度も催促され,結局は払わざるを得ないとのことである.

日本の精神的風土で,何の見返りも期待せず,政治献金をする人はいるだろうか.結局,医療費にフィードバックされるわけである.


[一言] 各団体にとって都合の良い制度を維持するためには法律の改正や制定が必要である.規制緩和の影響を受ける”薬の関連団体”にとって議員の選出は悲願であることは分からないでもないが,逆の立場の団体も同様なことをやっているので埒があかない.

(平成22年7月19日)

政治家は単細胞人間? 

参議院選挙で民主党が大敗した.

今回の選挙では,政治家の単純・幼稚さが暴露された結果になったと言えそうである.

首相交代後,各報道機関による世論調査が行われ,支持率が回復したと報じた. 改選になる議員達は,世論調査の結果を”真実”と信じ込み,一時的人気回復にも関わらずそれまでのことがリセットされたと思ったようである.いろいろ”粗が見えないうちに一刻も早く選挙をやろうと主張したというのだから傑作な話しである.

それにしても国民を舐めたものである.新聞やテレビに言われるまでもなく,その程度のことでだまされることはない.

世論調査の仕方,設問も問題があることを示したことになったとも言える.ご祝儀相場的なファクターが統計に考慮されていない.

ある日,大学の研究室に,無作為抽出による世論調査の電話が掛かって来たことがある.ところが,電話の途中で研究室であることが分かると,世論調査は一 般家庭電話を対象としているのでデータにならないということで中止になった.こんなことで社会の縮図を反映することになるのか疑問である.

選挙の結果,典型的な”ねじれ”が生じたが,以後の衆院選挙で与野党の関係が逆転しても”ねじれ”は解消しない可能性が高い.何も決まらない状態がずっと続くことになりそうである.

今後,政治家は,もうすこし賢くなって,”ねじれ”を前提とした政治を行ってほしいものである.

[一言] 選挙後,県連代表者の意見を本部で聴取していたが,その後の報道陣の質問でも「消費税発言がなかったら,それまでの失策はカムフラージュされうまくいったのに」と言うニュアンスの発言をしていた.

(平成22年7月14日)

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