パリと南仏を巡って集めた布でバッグや小物を製作。
コロナ禍以前の20年間、毎年パリと南フランスへ布を探す旅に出ていました。 南仏滞在中の1週間、毎朝バスや電車に乗って、朝市のたつ町へ向かいます。 滞在の拠点アビニョンを出てものの数分で、景色は畑、野原、遠くに臨む白い石灰岩の山肌。 ゴッホも描いた糸杉の防風林が流れるように過ぎていく車窓にもたれて「あぁ南仏来たなぁ」 と実感していると、強いクミンの香りを漂わせるアフリカ系のムッシューが毎回同じバス停から乗って来て 異国感に拍車をかけてくれるのでした。 街に着くと、メインストリートで迎えてくれるのはプラタナス並木。人が集う広場にも、高く伸び伸び育った プラタナスが心地よい日陰を作り、寒い時期は舗道に積もった大きな枯葉を蹴散らして歩く楽しみを与えてく れます。静かな夜に聞こえてくるザワザワ擦れ合う葉っぱの音は、ひとり旅の床に染み入りました。
わたしの布の買い付けは、大きな展示会の発注ではありません。その町のひとが行く市場や布屋を巡り、 自分の目と足を使って、フランス人が勧めるものでなく自分の好きなものを探します。 その町の日常に、ほんの少し仲間入りさせてもらい「え、日本って今は夏?冬?」とか質問されながら、 モノ以上の贈り物 ~買えない、持ち帰れないもの~を作品に縫い込みたいと日々ミシンを踏んでいます。 布とその背景の楽しさが皆さまに伝わりますように。 内田明子