カウントダウン企画6日目+書き下ろし
カウントダウン企画6日目+書き下ろし
夜明け前、目を覚ましたヒュンケルは隣でうつ伏せに眠るポップを見下ろした。
六日後、春の式典が開催される。そこで行われる儀式のため、ポップは六日の間パプニカ大聖堂に籠もる。春の精霊に祈りを捧げ、五穀豊穣と国の繁栄を願うのだ。
今日は朝早くから女官たちの手によりその衣装の着付けが行われる。だから絶対に痕をつけるなと言明された。清潔なシーツの上で石鹸の匂いを漂わせながら横たわる肢体はまっさらだ。数刻前まで淫蕩に溺れていた姿がまるで幻だったかのように。
魔が差す、とはこういうことを言うのだろう。この身体にしるしを刻みたいと思った。しばらく触れることができないのだ。せめて、触れることを許された証を残したい。
指で身体をなぞる。耳の裏、襟足、首筋、肩、背中――ここならば、よいだろうか。腰と尻の境目でぴたりと止める。ここならば下着で隠れる。口唇を落として強く吸いながら、盛り上がった柔らかい皮膚を食(は)む。
ポップの身体がぴくん、と反応した。
刺激せぬようゆっくり身を起こし、刻んだ痕を確認する。色づいたそれは花びらのようで、春の兆しを思わせた。
ポップが寝返りを打ち、仰向けに転がる。黒い睫毛がふるりと揺れて、瞼が開いた。
「ひゅんける……」
まだ、寝ぼけているのだろう。舌足らずに名前を呼ばれる。今日も一番はじめにポップの視界に入れたことに小さな喜びを抱きながら、頭を撫でる。
「おはよう。まだ少し早いがどうする?」
「おきる……」
ポップはふわぁと欠伸をしながら起き上がると、おもむろに口唇を重ねてきた。肉厚の柔らかい感触とともに、ちゅっと軽く吸われる。
「へへっ、おはよっ」
照れくさそうに笑う姿に誘われて、ヒュンケルからも触れるだけの口づけをする。そのまま、何度も口づけあいながら、夜に脱がしあった服を着せ合う。
「城についたらすぐ脱ぐんだよなあ」
ポップが複雑そうに言った。
「だからといって裸で歩くわけにもいくまい」
ヒュンケルはポップを抱きしめ、服の上から痕をつけた箇所に触れた。ズボン越しに下着のふちの感触がする。もう少し下にするべきだったか?
「ちょっ、そこっ」
腕の中でポップが身じろいだ。
「すけべなことは六日後までだめだからな!」
そんなつもりはなかったが、真の目的を話すこともできず、黙って頷くしかなかった。