4.|Onuki, K.*, R. K. Ito, T. Mishina, Y. Hashiguchi, K. Ikeya, K. Uehara, M. Nishio, R. Tabata, S. Mori & K. Watanabe*. 2024. Next-generation phylogeography reveals unanticipated population history and climate and human impacts on the endangered floodplain bitterling (Acheilognathus longipinnis). BMC Ecology and Evolution, 24: 141. Link(オープンアクセス)
日本固有の淡水魚であるイタセンパラの分布域形成史をゲノム情報から推定した研究です。イタセンパラは山地で隔離された大阪平野,濃尾平野,富山平野の3平野に分断的に分布するちょっとめずらしいタイプの淡水魚で,その分布がどうできたのか,それぞれの地域集団がどういう歴史を辿ってきたのかを調べました。全ゲノム情報を用いた解析から,これまで考えられていた「約100万年前の山地の隆起によって分断されて3つの地域集団ができた」という想定では説明できないほど最近の集団分岐(多く見積もっても2,30万年前)や,氷期の気候や人間活動に大きく影響されたと思われる集団サイズ変動パターンが推定でき,いずれも興味深かったです。
この研究とはM1からの付き合いで,D3にしてようやく出版できました。長かった…!M1のときはゲノミクス初学者だったこともあり,考えうるすべてのpitfallに落ち,その度に実験やら解析やらをやり直してたくさんコストをかけることにはなりましたが,その分色々と勉強することもできました。またイタセンパラは,日本産淡水魚類保全の発祥の魚と言ってもいいくらい,かつても今も活発な保全活動が行われている象徴的な絶滅危惧種で,共著者に限らず,各地域で保全に携わるたくさんの方々からも多くを学びました。色々な側面で思い入れのある研究です。
コイ科の底生魚であるツチフキを京都府から38年ぶりに報告しました。筆頭著者の小粥くん(ラボの後輩)に「婚姻色カネヒラ見にいきませんか」と誘ってもらって行った京都市内の水路で偶然採集できました。その後,京大の後輩の北尾くん,三内くんが「下流の方にめっちゃいました」とサンプルをたくさん提供してくれ,それらをまとめて報告しました。著者はこの順番ですが,分子実験のほとんどは小粥くん,採集のほとんどは北尾くん,標本計測は三内くん,解析はぼく,執筆はぼくを中心にみんなでやりました。外遊びからうまれた,思い入れのある報文です(そしてぼくとしては初の魚論文!)。
この報告の内容に関して取材を受け,新聞記事が出ました。たくさんコメントを載せていただきました。同時期に大阪でも見つかっていた(同じ記者さんによる新聞記事はこちら)ことも後から知り,非常に興味深いなと思っているところです。
鴨川のツチフキ Abbotina rivularis|photo by Keigo Kitao
琵琶湖とその流入河川に生息するカワリヌマエビ類の研究です。遺伝的・形態的解析に基づいて,琵琶湖盆からおよそ100年ぶりとなる在来種ミナミヌマエビを報告したほか,近縁の外来種シナヌマエビが琵琶湖や流入河川に広く侵入・定着していること,さらにミナミヌマエビとシナヌマエビが交雑している可能性が高いことを示しました。ラボの先輩の福家さんから声をかけてもらって始めた研究で,どうにか形にすることができました。ちなみに1世紀前に琵琶湖でミナミヌマエビを採集したのは,Nelson Annandaleと川村多実二です。Annandaleは近代的な水生生物調査法を日本に初めて持ち込んだ研究者,川村はぼくたちが所属している動物生態学研究室の前身,動物生理生態学講座の最初の教授になった研究者。なんだか不思議な縁を感じます。プレスリリースはこちら。一般向け雑誌「生物の科学 遺伝」での解説記事はこちら。
1.|Onuki, K.* 2021. The distribution of the invasive shrimp Neocaridina davidi (Decapoda: Caridea: Atyidae) in relation to environmental parameters in a stream at Kunitachi, Tokyo, Japan. Crustacean Research, 50: 33–39. Link(オープンアクセス)
東京都国立市にある湧水由来の小河川で外来種シナヌマエビの分布と環境要因の関係を調べた研究です。東大の卒論をベースに再構成したものです。シナヌマエビは「水槽の掃除やさん」としてペットショップなどでも売られている大陸産の小さな淡水えびです。 調査地の小河川では,これまでの報告と比べ,シナヌマエビの個体数密度が非常に高くなっている(最大で315個体/㎡)ことが判明しました。流入する湧水の温度が年間を通じてほぼ一定なため,秋口には終わるはずのシナヌマエビの産卵期が冬のはじめまで延びていることが原因ではないかと考えています。 また,シナヌマエビの成体と幼体で多く出現する環境が異なることも初めてわかりました。成体は抽水植物の多い地点で,幼体は流速が遅い地点で,それぞれ個体数が多くなっていました。 本研究の調査地のような湧水は,環境悪化が著しい東京の水環境の中でも,湧水性の在来種がいくつも生息する貴重な場所です。そうした湧水において,侵入したシナヌマエビが高密度になるとすると,在来種への影響も懸念されます。今後も継続して調査する必要があると感じています。 個人的には,小学生の頃から遊びまわっていた湧水をフィールドにしたところも印象深い研究です。
イタセンパラの分布域形成史研究(上記査読つき論文の4)の解説です。編者の森誠一さんにお声かけいただき,著者に加えていただきました。書籍全体としては生態学・河川工学と河川行政をつなぎ,今後の河川との付き合い方を考えるものです。進化生態学的な研究が河川行政とどのようにつながるかを考える中で,京大院理の感覚と学部でお世話になった東大農の感覚が融合するような感じを覚え,個人的にも印象深い仕事でした。
ラボの先輩と一緒にやった琵琶湖のえび研究(上記査読つき論文の2)の解説記事です。出版社の方から「著作権は筆者に属しますので,プリント配布,PDF配布,Web公開などができます」と言われたので,自分のresearchmapのページでPDFを公開しました。よろしければご覧ください!
Theses|学位論文
3.|大貫渓介.2025.Genomic studies on the natural history and conservation of threatened freshwater fishes(絶滅危惧淡水魚類の自然史と保全に関するゲノミクス).2024年度京都大学大学院理学研究科博士論文.
2.|大貫渓介.2022.氾濫原性淡水魚イタセンパラの分布域形成:全ゲノムデータを用いた集団解析.2021年度京都大学大学院理学研究科修士論文.
1.|大貫渓介.2020.国立市ママ下湧水公園内の水路における外来淡水エビNeocaridina davidiの分布密度と物理環境の関係.2019年度東京大学農学部卒業論文.
16.|◯大貫渓介,橋口真実,田畑諒一,渡辺勝敏.自然分布重複域におけるアブラハヤとタカハヤの種間交雑.2025年度日本魚類学会年会,品川.2025年11月.ポスター.
15.|◯片山優太,井戸啓太,大貫渓介,田畑諒一,伊藤僚祐,渡辺勝敏.絶滅危惧種ヒナモロコにおける外来近縁種との交雑がもたらした遺伝的影響.2025年度日本魚類学会年会,品川.2025年11月.ポスター.
14.|◯片山優太,井戸啓太,大貫渓介,田畑諒一,伊藤僚祐,渡辺勝敏.全ゲノム解析から推測された遺伝的撹乱前のヒナモロコの遺伝的多様性.2024年度日本魚類学会年会,福岡.2024年9月.ポスター.
13.|◯井戸啓太,大貫渓介,三品達平,田畑諒一,後藤健宏,山本義彦,渡辺勝敏.生息域外保存集団における遺伝的リスクの実態:全ゲノム解析による絶滅危惧魚類の種間比較.2024年度日本魚類学会年会,福岡.2024年9月.口頭.
12.|◯井戸啓太,大貫渓介,三品達平,渡辺勝敏.絶滅危惧淡水魚類の危機診断:ゲノム景観から予測される小集団化の影響とその種間比較.第71回日本生態学会大会,ハイブリッド(横浜).2024年3月.口頭(シンポジウム「種の保存法に基づく保護増殖事業対象種の保全ゲノミクス」).
11.|◯大貫渓介,国松翔太,福家悠介.Tracing temporal spread of non-native freshwater shrimp for invasion risk prediction by machine learning. 第71回日本生態学会大会,ハイブリッド(横浜).2024年3月.英語口頭.
10.|◯北尾圭梧,三内悠吾,小粥淳史,大貫渓介,山本義彦,鶴田哲也,田中耕司,岡田龍也,川瀬成吾.淀川流域において相次ぐツチフキの再発見.第77回魚類自然史研究会,三重.2023年11月.口頭.
9.|◯大貫渓介,田畑諒一,三品達平,西田睦,渡辺勝敏.ゲノムワイドデータから推定された周伊勢湾域固有種ネコギギの集団形成史.2023年度日本魚類学会年会,長崎.2023年9月.ポスター.優秀ポスター発表賞(日本魚類学会HPで紹介されています).
8.|◯大貫渓介,西田睦,田畑諒一,渡辺勝敏.ゲノムワイドデータに基づく絶滅危惧淡水魚ネコギギの遺伝的集団構造と歴史集団動態.第70回日本生態学会大会,オンライン(仙台).2023年3月.ポスター.
7.|◯大貫渓介,福家悠介.北陸および中部地方における外来種シナヌマエビの定着とその由来.第28回日本生態学会近畿地区会例会.オンライン.2022年12月.口頭.奨励賞(日本生態学会近畿地区会HPで紹介されています).
6.|◯大貫渓介,伊藤僚祐,三品達平,橋口康之,池谷幸樹,上原一彦,西尾正輝,田畑諒一,森誠一,渡辺勝敏.氾濫原性淡水魚イタセンパラの分布域形成:全ゲノムデータに基づく集団解析.第69回日本生態学会大会,オンライン(福岡).2022年3月.ポスター.生物多様性分野ポスター賞(優秀賞)(日本生態学会HPで紹介されています).
5.|◯福家悠介,大貫渓介,石井良典,笹塚諒.縮約ゲノム解析に基づく日本におけるミナミヌマエビとシナヌマエビの遺伝的特性.日本甲殻類学会第59回大会,オンライン.2021年10月.ポスター.
4.|◯大貫渓介,福家悠介.縮約ゲノム解析と形態分析に基づく琵琶湖産カワリヌマエビ類の現状.日本甲殻類学会第59回大会,オンライン.2021年10月.口頭.優秀口頭発表賞(日本甲殻類学会HPで紹介されています).
3.|◯大貫渓介,伊藤僚祐,三品達平,橋口康之,池谷幸樹,上原一彦,西尾正輝,田畑諒一,森誠一,渡辺勝敏.ゲノムワイドデータに基づくイタセンパラの集団分化と歴史集団動態の推定.2021年度日本魚類学会年会,オンライン.2021年9月.ポスター.
2.|◯大貫渓介,田畑諒一,渡辺勝敏.西日本における淡水魚の歴史的個体群動態の種間比較.2020年度日本魚類学会年会,オンライン.2020年10月.ポスター.
1.|◯大貫渓介.国立市ママ下湧水公園内の水路における外来淡水エビNeocaridina davidiの分布密度と物理環境の関係.第20回東日本魚類生態研究会,館山.2020年2月.口頭.
2.|◯大貫渓介.次世代系統地理からみえてきたネコギギの集団形成史.魚類学会若手の会 Web市民シンポジウム,オンライン.2024年6月.口頭(招待講演).
1.|◯大貫渓介.氾濫原性淡水魚イタセンパラの分布域形成:全ゲノムデータに基づく集団解析.科研費会議(琵琶湖・古代湖),オンライン.2021年11月.口頭(招待講演).
3.|◯鈴木浩子,◯大貫渓介.くにたちと谷保の自然.ふるさと谷保プロジェクト地域学習,国立市立国立第一小学校.2025年9月.口頭.
2.|◯鈴木浩子,◯大貫渓介.くにたちと谷保の自然.創立150周年記念地域学習,国立市立国立第一小学校.2023年9月.口頭.
1.|◯大貫渓介.DNAからさぐる淡水魚類の進化.生物系学部・大学院生による研究紹介,桐朋高校(Web).2021年7月.口頭.
「くにたち自然クラブ」とは,東京都国立市内の小学生を対象にした通年の生き物観察会です。NPO法人 国立市動物調査会が主催しています。ぼくもこのNPOのメンバーで,「魚の調査と観察:川で魚をとろう」の回の講師とその他の回のスタッフを毎年担当しています。
「多摩川探検隊」は,東京都国立市,多摩川漁協国立支部,国立市水の懇談会が毎年夏に開催している,市内の小学生を対象にした川遊びイベントです。ぼくは小学校2,3年の頃にこのイベントに参加したことがあり,2023年度の多摩川探検隊では投網や魚の種類を教えるお手伝いをさせていただきました。