性能の作り方(VVVF編)その2~表計算ソフトに入力~

③仕様を決める

VVVFインバータ制御の制御モードは3つに分かれています。

これらの領域は速度によって変わります。~をキロを超えて~までが○○領域 みたいな具合で電車が加速していくにつれて1から3に変わっていきます。またこれらの領域が切り替わる速度は、乗車率や架線電圧によっても変わりますし、モーターの特性に合うように、また求める引張力特性になるようにインバータでもある程度セッティングすることができます。

この説明では架空の車両について考えているので自分で決めることにします。

~力行~

1ノッチ:5[km/h]まで定トルク領域それ以降特性領域

2ノッチ:20[km/h]まで定トルク領域それ以降特性領域

3ノッチ:40[km/h]まで定トルク領域それ以降特性領域

4ノッチ:40[km/h]まで定トルク領域80[km/h]まで定出力領域それ以降特性領域

4ノッチは応荷重制御で空車、満車共に同じすべり周波数上限まで上げることにします。

電圧最大速度:40[km/h]

上のような仕様をもとに、現実にありそうな性能を作っていきます。

④表計算ソフトで引張力を作る

ここからはいよいよ表計算ソフトを用いて性能を入力していきます。表計算ソフトはなんでもいいです。自分の使いやすいやつで構いません。この説明ではLibreOfficeを使用します。最初に空車引張力を計算していきます。

その1で計算した定トルク領域の引張力を入力し、計算に使う各定数を計算&入力していきます。

A1セルにはそのファイルの書式を示す文字列、性能テーブルを表す文字列を入力します。これは必ず必要です。

A列は速度を入力します。#が書かれている行は読み込む際に無視されるので、ここに計算するときに必要な数字を入力します。説明のためにF列にアルファベットを振っています。

a行はノッチの名前を決めています。

b行は定出力領域の反比例の式y=a/x^nのnを記述しています。これはただの反比例なので1です。

c行は定トルク領域が終わる速度を記述しています。

d行は定出力領域での反比例の比例定数を入力します。まだ計算はしていないので空白です。

e行は特性領域の反比例の式y=a/x^nのnを記述しています。特性領域では引張力は速度の2乗に反比例しますが、この2乗の数を変更することで高速域のノビを調整できます。

f行は定出力領域が終わる速度を記述しています。

g行は特性領域での反比例の比例定数を入力します。まだ計算はしていないので空白です。


続いて反比例の比例定数を計算します。

計算は簡単です。x×yなので各領域が終わる速度^n乗×各領域が終わる速度の引張力で計算できます。先に定出力領域の比例定数から計算します。

E49セルには40[km/h]時の引張力が入力されています。1NE~3NEは定トルク領域から定出力領域を経由しないで特性領域に入るので本当はこの計算結果は使いませんが、空白だと気持ち悪いので計算して埋めています。

続いて定出力領域がある4Nの引張力を求めた係数で計算します。

定出力領域は40[km/h]を超えると始まるので、41[km/h]のE50セルにa/x^nの式を入力します。それぞれ参照しているセルはシートの上の方で計算した値と、自分で入力した値です。

これを計算すると41[km/h]時の引張力が出るので、これを80[km/h]があるセルまでオートフィルします。

セル右下にある■を下までドラッグすると、式がまとめてコピーされて計算されます。これで、4ノッチの定出力領域の引張力は計算ができました。

続いて特性領域の比例定数を計算します。

定出力領域が終わる速度(定出力領域が無い場合は定トルク領域)の引張力と速度^n乗と掛け算して求めます。4ノッチは定出力領域が終わる速度は80キロなので=E7^E6*E89という数式が入力されます。

それができたら、上で説明したのと同じように、各ノッチの一番速度が低い空いているセルに数式を入力し、オートフィルします。

グラフにしてみます。正しく計算が出来るとこのようになりました。これでForce.csvは作成できました。続いて満車引張力ForceMax.csvを計算します。

1~3ノッチはそのまま定トルク領域の引張力を満車引張力に書き換えるだけでOKです。4ノッチは工夫する必要があります。

満車引張力と空車引張力(4ノッチ)をグラフに表したものです。

これだとただ単に質量比だけ引張力を倍にしたわけですが、特性領域は「モータの特性によって決まる」引張力であります。また、限界すべり周波数は空車満車問わず一定の値まで上昇させますし、定出力領域ですべり周波数は一定の比率で上昇させることから満車時は低速域で引張力を稼いでいる分、すべり周波数が高くなるため限界すべり周波数に達する速度も低くなります。

空車時の特性領域の引張力を低速側まで計算し、それと交差する速度が、「満車時に特性領域が終わる速度」になります。これを考慮した引張力特性を求めます。

一旦csvを保存し、閉じます。(ForceMax.csv)

csv以外のファイル形式で保存している場合、Force.csvのE8セルの数式を削除(値のみにする)し、特性領域の数式を低速側に(上の方に)オートフィルします。

Force.csvのF列に満車時の引張力をコピーし、どの速度で交差するか求めます。G列では引張力同士を引き算し、交差する速度に一番近い速度を見やすくしています。

交差する特性領域の引張力と、満車時の定出力領域までの引張力を組み合わせて、1つにします。

1つにした引張力をForceMax.csvの4ノッチにコピー&ペーストします。

4ノッチを作り直した満車引張力です。

最後に満車と空車の引張力が「完全に同じ」にならないよう、満車の引張力に少しだけ引張力を足します。100[N]足すことにします。

満車と空車引張力を合わせてグラフにしたものです。これでForce関係は完成したことになります。お疲れ様でした。続きまして電流を計算していきます。

その3に続く