機能性高分子を用いた温度制御型分離分析システム
外部温度により性質が変化する高分子を用いた分離分析システムを開発しています。カラム温度の制御により、医薬品との相互作用を調節することで、分析時間を制御することが可能となります。また、水系溶媒のみで分析できるので、医療現場での分析や、環境負荷を低減した分析ができます。
バイオ医薬品の分離精製技術の開発
抗体医薬品などのバイオ医薬品の製造では、精製プロセスに多くのコストを要するため、低コストで抗体を精製する方法が必要とされています。そこで、温度応答性高分子を用いて、活性を維持したまま、低コストで抗体を分離精製する方法を開発しています。
再生医療用細胞の分離精製技術の開発
再生医療では、細胞の活性を維持したまま、未修飾で分離精製する技術が必要とされています。そこで、温度応答性高分子を用いた細胞の精製技術を開発しています。高温で標的細胞を吸着させ、温度を低下させて高分子の性質を変化させることで、吸着していた細胞を脱離・回収させることができます。
リン酸化プロテオミクスの新しい解析技術の開発
当研究室で開発した機能性分子の”Phos-tag”です。これは細胞の中で重要なはたらきをするリン酸化タンパク質の機能を解析するためのツールです。世界中の生命科学の研究者にこのツールを使ってもらえるように,私たち自身も様々なリン酸化タンパク質の研究を発信しています。
曲率認識ペプチドを担体とした細胞外小胞の新規回収法の開発
細胞外小胞(EV)は細胞から分泌される負電荷を帯びた直径50–200 nm未満の高度に湾曲した膜(曲率膜)を有する脂質微粒子であり、重要な遺伝子やタンパク質を内包しているため、生物学的および医学的研究において重要な標的となっています。私たちが開発したpH制御による細胞外小胞(EV)の新規単離法:Extracellular-Vesicle Catch-and-Release isolation System (EV-CaRiS)は、溶液のpHに応じて電荷が反転する曲率認識ペプチド(Net-charge Invertible Curvature-sensing peptide: NIC)を用いたEV単離法で、弱酸性pHではペプチドが正電荷を帯びてEVを捕捉し、弱アルカリ性pHでは負電荷に電荷反転することでEVがペプチドから解離し、夾雑物が共存する培地からEVを単離します。単離したEVは元来有する免疫活性や抗がん活性を示すことが確認され、新規EV単離法の有用性を実証できました。この成果からEVの捕捉基板を用いたイメージング技術や内包物の解析技術に応用することが期待されます。
曲率認識ペプチドを活用したEVの細胞内送達法の開発
曲率認識ペプチドは、サッカーボールネットのようにEVの膜表面を覆う性質があります。この曲率認識ペプチドに薬物を付与することで、EV表面への簡便な薬物搭載と細胞内取込みを促進する性質があることを発見しました。私たちはこの機能を“membrane interfactant”と名付けました。膜境界面“membrane interface”と界面活性剤“surfactant”を組み合わせた造語で、膜界面間の相互作用を活性化させるが、膜を破壊したり可溶化したりすることはなく、それ自体は細胞毒性がないのが特徴であります。この曲率認識ペプチドの特性は、EVを薬物キャリアとした新たな薬物送達システムの開発に貢献する可能性を秘めています。
曲率膜破壊ペプチドを基軸とした高分子医薬品の細胞内導入基盤の創出
一般的に、抗体などのバイオ医薬品は高分子で親水性に富むために膜透過性が低く、細胞の生理的な飲食経路(エンドサイトーシス)経由で細胞内に送達する必要があります。私たちはエンドソームを破壊する性能がある曲率膜破壊ペプチド(CDP)を開発し、これを医薬品の運び手となるScaffold分子に搭載することで、抗体などをサイトゾルまで効率的に運搬できるシステムに応用することを考えています。