科学的技術が発展していなかった時代、自然災害や不可解な現象を説明するために、人々は妖怪を創造し語り継いできました。妖怪に関わる伝承のなかには、地震や洪水、津波など災害に関するものも多くあり、そうした妖怪は災害を引き起こす存在として人々に認識され、恐れられてきたと考えられます。
参考資料:国際日本文化研究センター「怪異・妖怪伝承データベース」
災害伝承や妖怪伝承には、災害の歴史や文化、人々がどのように災害に向き合ってきたかが映し出されており、民話や口頭伝承を分析することは、過去の自然災害について知るきっかけとなりえま
例えば、疫病の流行に対して、当時の人々が疫病に対する不安を払しょくするために「アマビエ」という妖怪を創造しました。このことは裏返せば、「アマビエ」の伝承から過去に流行した疫病の史実に辿り着く道が開かれているとも言えます。
地域に根付いた災害伝承の背景には、記録にすら残されることのなかった過去の災害の記憶(災害史)が潜んでいる可能性があるのです。
その土地で語り継がれる伝承を元に歴史にさかのぼり、伝承のモデルと考えられる災害の存在に気づくことで、伝承を民話として語るだけではなく、防災や減災にも活用できるのではないか。これが本プロジェクトの出発点となっている「問い」です。
プロジェクトリーダー 小川日南
参考:SBS(静岡放送)「わたしの防災」