疑似餌の矜持


━━「機会はどの場所にもある。釣針を垂れて常に用意せよ」(オウディウス)
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1.エントリーとシナリオ概要

【シナリオ概要】


 「天秤は揺れる」から一ヶ月、件の街に有志による自警団が発足する事となった。 またあるヒーローのもとには、弟子になりたいと志願する若者もやってきた。 しかしある日、自警団はヴィランとの戦いにより、原因不明の変貌を遂げ、街から姿を眩ましてしまう。 弟子入りした若者も重傷を負い、病院へと消えた。 人の先達となるとはいかなることか、人を導くとはいかなることか。 ヒーローたちは踏み躙られた彼らの正義を救う事が出来るのか。 ヒーローよ、自分の信じる正義を貫け。

【事前情報】


 初期グリット:4 リトライ:2 クエリー:3 チャレンジ:3
 想定時間:3〜4時間 推奨経験点:0〜10点

【GMに要するルールブック】


・基本ルールブック(R1)

【エントリー】

【PC1】

 君はG6から紹介され、街に発足した自警団「バランサー・フォー」の発足パーティへとやってきている。 自警団はヒーローたちの活動に感化され、自分たちも世界を守るために戦いたいと名乗りを上げた有志の若者たちで構成されている。 若者たちは全員が何の力も持たないジャスティカ、あるいはジャスティカ見習いとでもいうべき者達だが、心根は真面目で強い正義感の持ち主達ばかりだ。 君はこのチームを応援してやることにした。

【PC2】

「も、も、も、もしかして、(ヒーローネーム)さんですか!?」 ある日、君は偶然にも酔っ払いに絡まれていた青年を救った。 お手製のヒーロースーツを着ている青年は過去に君に救われたことがあるという。 彼は助けられた礼の後、突然君に土下座しこんな事を頼んできた。「お願いです、俺を弟子にしてください!」 ……さて、どうしたものだろう。

【PC3】

 君はG6から、ヒーローを目指す若者たちを対象とした講演会での講師の依頼を受けた。 受けた以上は仕方がない。講演の内容を考えていた君に、フォーセイクン・ファクトリーの幹部、デラックスマンが接触を図ってきた。 デラックスマンは戦いに来たわけではないと言い、君にこんな事を告げる。「教育者の先達として君に忠告を。 我々ファクトを倒したいと君たちが本気で思っているのならば、 例の自警団とやらは早々に解体してやるべきだ。 才能のない者にいずれ醒める夢を見せるなど、残酷なことだと思わないかね? あれではただの良い餌だ」 どうやら、ファクトは何かを企んでいるようだ。君は自警団を警戒することにした。

【シナリオについて】

 このシナリオは「天秤は揺れる」の続編として作成したシナリオだが、いくらかの用語を調整すれば、単発で遊ぶことも可能だろう。

2.導入フェイズ

【イベント1:結成パーティ】

 登場キャラクター:PC1 場所:豪華客船のパーティ会場

【状況1】

 PC1はG6が所有する、とある豪華客船のパーティ会場にいる。 立食形式のパーティ会場には、バンシー・エンタープライズをはじめとした様々な企業の重役や、WAVEの撮影隊の姿もあり、さながら記者会見会場のような光景だ。 今日は自警団「バランサー・フォー」の結成パーティ。「バランサー・フォー」は4人の若者によって構成されるチームであり、自警団として警察やヒーローと協力し、街の治安を向上させる目的で結成された。メンバーは全員が旧人類であり、いわばジャスティカ見習いだ。セカンド・カラミティで多くのヒーローが失われた今、新たに立ち上がる若い力をG6は応援し、「バランサー・フォー」はその看板としての役割を期待されていた。

【状況2】

「○○(ヒーローネーム)さん! よかった、ようやくお話する時間が取れそうだ」 パーティ会場の君に、バランサーのメンバーの一人、リーダー格の「レッド・リード」が声をかけてくる。「先日のインペイン脱獄事件でのご活躍、素晴らしいものでした。……あの事件を見て、俺たちも立ち上がろうと思ったんです。あなたは俺の憧れだ。 まだまだあなたには追いつけませんが、いずれ肩を並べられるよう精進します。今日は来てくださり、本当にありがとうございました」 そう言って彼は君に握手を求める。応えるかどうかは君の任意だ。 しばらくレッドはPC1と歓談したのち、WAVEのインタビューに応えるためその場を去っていく。

【エンドチェック】

□PC1が「バランサー・フォー」と知り合った。

【解説】

 ここで「バランサー・フォー」のチームメンバーをGMから、あるいはロールプレイ内で簡単に紹介しておけば、その後のシナリオ理解の助けになるだろう。 彼らは(少なくとも彼らの自己認識では)同じ孤児院出身の幼馴染であり、信頼関係は確かなものだ。
■レッド・リード リーダー格の青年。正義に燃える熱血漢だが、少し頭に血が上りやすい。通称レッド。PC達ヒーローを尊敬しつつも、越えるべき壁と見なしている。「いつかあなたを超えてみせます」
■スーザン・ローズ チームの紅一点。優しい性格の落ち着いた女性、少し優柔不断な気がある。通称ピンク。PCたちの意見を基本的に肯定する。「(PC)さんには何か考えがあるんだわ」
■カナリア・グリム チームのムードメーカー。大食いのお調子者だが、やや臆病で流されやすい。通称イエロー。弱気な発言が多い。好物はカレー。「本当にうまく行くのかなあ?」
■セルリアン・フォン チームのブレイン。肉体労働は苦手。優秀だが生意気なギーグ。通称ブルー。無口で滅多に喋らない。「……っす」

【イベント2:弟子入り志願】

 登場キャラクター:PC2 場所:夜の繁華街

【状況1】

 その日、PC2はヒーローとして活動していた。暗躍していたヴィランを打ち倒し、警察へと届け出たところだ。 その帰り道、君は路上で喧嘩が起きていることに気付く。見てみれば、ガラの悪い酔っ払いと、いかにもな手作りのヒーロースーツを着た青年が言い争っているらしい。「君! 路上で寝てはいけないぞ!」「うぃ〜っ! なんだよォ、ヒーロー様は偉そうによォ、俺だって頑張ってるんだよォチクショォ〜!」「こら! 言うことを聞きなさい!」「ウルセェーッ!」 ヒーロースーツの青年が酔っ払いの素行を注意しているらしいが、正論は酔っ払いの意識を逆なでし、青年は酔っ払いから暴行を受ける。青年は実に弱く、誰かの助けが必要だと一目でわかる。 君は青年を助けてもいいし、無視しても良い。さて、どうしようか? 無視を選んだ場合、酔っ払いが勝手にPC2に絡んでくる。降りかかる火の粉は払わねばなるまい。

【状況2】

 君が青年を助けると(あるいは、結果的に助けた形になると)、青年は君を見て目を丸め、そして興奮した様子で話しかけてくる。「ありがとうございます! も、も、も、もしかして、(ヒーローネーム)さんですか!?」 君の正体を知ると、青年は喜びもあらわにPC2に一方的に自己紹介を始める。彼の本名はアイビー・ライダー、かつてPC2に助けられたことがあり、ヒーローとして活動を始めたということ。しかし何の能力も持たない彼では街の酔っ払いにも引けをとる有様であることなどだ。 一方的な自己紹介を終えたあと、青年あらためライダーは、君に土下座してこんなことを申し出る。「お願いです! 俺を弟子にしてください!」

【エンドチェック】

□PC2がアイビー・ライダーと知り合った。

【解説】

 PC2がアイビー・ライダーの弟子入り志願を受けるシーン、もとい彼と知り合いになるシーンである。 弟子入りの申し出を受けるかどうかはPC2の自由だ。受けてもらえた場合、ライダーは喜んでPC2の弟子となり、このシナリオ限定のサイドキックとなるだろう。受けてもらえなかった場合も、ライダーは残念がりながらも納得し、しかしPC2の活動を応援するという形でシーンは終了する。 ライダーはヒーロー見習いのため、まだヒーローネームを名乗っていない。PC2が望むならば、(この時点でなくとも)彼にヒーローネームを与えるなどしても良いだろう。
■アイビー・ライダー PC2に憧れるヒーロー見習い。旧人類。ジャスティカにすら至らない身体能力の持ち主。努力漢だが暴走しがちなミーハー。特に特徴のない地味な青年。「本物のヒーローだぁ〜!」

【イベント3:奇妙な忠告】

 登場キャラクター:PC3 場所:昼時のカフェテラス(難しい場合はPCの設定に準ずる場所)

【状況1】

 君はG6から直々に依頼を受け、ヒーローを目指す若者たちを対象とした講演会の講師をすることになり、そこで彼らに教える内容について考えている。 そんな君のテーブルの向かいに、一人の男が無言で座ってくる。男は色の濃いサングラスで顔を隠している。

【状況2】

「教育者の先達として君に忠告を。 我々ファクトを倒したいと、君たちが本気で考えているのなら、 例の自警団とやらは早々に解体してやるべきだ」 男は君の反応に構わず、ドーナッツとコーヒーを楽しみながら一方的に話を進める。 何者かを尋ねられれば、笑みを浮かべながら「デラックスマンと呼ばれている、と言ったら信じるかね?」と挑発的に告げる。それはファクトの幹部の名だ。「才能のない者にいずれ醒める夢を見せるなど、残酷なことだと思わないかね。あれではただの良い餌だ」 デラックスマンを自称した男はそう告げ、ドーナッツとコーヒーを食べ終えるとさっさと席を去ってしまう。

【エンドチェック】

□PC3がデラックスマンと会話をした。

【解説】

 PC3がデラックスマンに出会い、敵であるはずの彼から奇妙な忠告を受けるシーンだ。戦闘に発展させる必要はないが、緊張感を持ったシーンとして演出すると良いだろう。 この時点ではPC及びPLが気づく由も無いが、デラックスマンの目的は犬猿の仲にある未来人バスカの計画を妨害することにある。デラックスマンはバスカの作り出したミュータジェンを信用しておらず、自分の部下である少年隊に投与する気もなく、早々に芽を摘んでおく事がファクトの為だと思っている。その為、このシナリオの中では、ヒーローであるPCたちへたびたび助言めいたことを行う。 また、デラックスマンから齎される言葉は、『才能のない(パワーのない)者をヒーローとして取り沙汰することの是否』という、このシナリオのテーマに直結している。 この時点でPCにはっきりした回答を促す必要はないが、暗示的に演出すると良いだろう。

3.展開フェイズ

【クエリー1:質疑応答】

 登場キャラクター:PC3(任意でPC1・PC2) 場所:講演会会場

【状況1】

 PC3は依頼された講演会の壇上に立ち、ヒーロー活動についての講演を行っている。 講演会は自警団以外にも公に参加者を募集したものであり、会場にはバランサー・フォーの他にも、ヒーローを目指して活動する麻神学園の生徒の姿や、民間で活動するヒーローの姿、ヒーローを目指し下積みを続けるアイビー・ライダーの姿などもある。他のPCが望むならば、他のPCがこの講演会に参加していても構わないだろう。 また、参加者でしかないはずのバランサー・フォー目当てにか、講演会にはマスコミの姿もちらほらと目に入る。

【状況2】

 講演会は進行し、司会によって現役ヒーローへの質疑応答の時間へと入る。会場のヒーロー見習い達は次々に手をあげ、講演者のPC3へと質問を投げかけていく。「トレーニングはどれぐらい行なっていますか?」「正体を隠すことのメリットとデメリットは」「好きな食べ物教えて」「セカンド・カラミティのことをどうお考えですか?」 いくつかの質疑応答を終えたのち、バランサー・フォーのリーダーであるレッド・リードがおもむろに手をあげ、君に質問を投げかけた。「訊かせて下さい。ヒーローにとって、一番大切なことってなんですか?」 バランサー・フォーの、そしてそれ以外の会場に集まった人々が、君の答えに注目している。 さて、どう答えよう?

【エンドチェック】

□ レッド・リードの質問に答えた。□ グリッドを1点獲得した。

【解説】

 エントリーから間もない頃の時期として演出すると自然だろう。 クエリーの構造としては極めてシンプルなもののため、【状況1】でPC3がどのような講演を行うのかロールを促して見るのも手だ。突然講演を行うのが難しそうなら、事前にそのPCらしい講演内容を軽く考えてもらうのもいいだろう。 採用するかはGMの任意だが、バランサー・フォーはメンバーの四人は真面目にヒーローを志願しているが、彼らのスポンサーやG6の思惑としては、あくまで広告塔としての役割を強く期待されている。そうした舞台裏に、大人達の思惑があるのだということを、エントリー1の導入や、こういったシーンで匂わせてみてもよいだろう。

【クエリー2:ヒーローの正解】

 メインキャラクター:PC1 場所:真昼の遊園地

【状況1】

 G6から、怪物が出現したという報告を受け、PC1は現場に向かっている。 現場は真昼の遊園地。多くの人々で賑わうテーマパークで、突然怪物が姿を現したのだという。 PC1が現場に到着する頃、イモムシのような肉塊の怪物は他のヒーローたちに囲まれ弱体化している。放っておいてもあともう少しで倒しきることが出来そうだ。 現場では「バランサー・フォー」の前衛チーム3人が民間人の避難誘導や怪我人の治療を行なっているが、どこか様子がおかしい。どうやら仲違いしているようだと分かる。レッド「俺達も加勢すべきだ、ヒーローなんだから!」イエロー「無理だよ、今の僕たちが加わってもどうせ足を引っ張るだけさ」レッド「達人になってから戦場に出る気か? ヒーローが戦わなくて誰が戦うんだ。俺たちは何のために訓練を? 広告塔になるためじゃないだろ!」ピンク「救助活動だって立派なヒーローの仕事……のはずよ。ブルーだってそう言ってるし…」レッド「あのなあ!」 PC1は自主的にこの口論を諌めてもいいし、見守るだけでもいい。介入をせずとも、しばらくすると3人はPC1の存在に自発的に気が付く。 口論を聞かれていたことに気付くと、三人は気まずそうに謝罪する。そのタイミングで怪物が倒されたという速報と歓声が届く。 レッドは割り切れない顔で現場を眺めている。ピンクとイエローがPC1へ問う。「……私たちは行くべきだったんでしょうか、残っているべきだったんでしょうか」

【エンドチェック】

□ バランサー・フォーの質問に答えた。□ グリッドを1点獲得した。

【解説】

 行くべきか行かざるべきか、それが問題だ。「バランサー・フォー」の口を通して、PCの考える『ヒーロー』の方針を問うシーンとなる。エントリーやクエリー1からはある程度時間が経っているものとして演出するのが自然だろう。 どのような回答を受けたとしても、彼らは「よく考えてみます。メンバーともよく話し合わないと…」と前向きに改心の姿勢を見せるなどすれば良い。或いは、PLのストレスにならない範囲で、敢えて意固地に理想のヒーロー像へ固執してみせてもいい。 彼らは未熟だが、後半の展開における救助対象でもある為、過剰にPCやPLのヘイトを稼ぐべきではない。イエスマンにする必要はないが、微笑ましさを残す程度にすることが無難だ。 このシーンで登場するイモムシ怪獣は「おぞましい敗北」で登場する同種のものよりも小ぶりであり、失敗作であるためミュータジェンは採集出来ない。この時点ではモブのように描写するのが好ましい。

【クエリー3:強くなるには】

 登場:PC2 舞台:夕方の河川敷

【状況1】

 夕日に照らされた河川敷で、PC2は木人相手に戦闘訓練を続けているライダーの姿を目撃する。「アチョー! ホアター! ……あっ!」 PC2に気付くと、ライダーは複雑な顔を見せたのち、PC2へ手合わせを申し出る。 手合わせをしてみれば分かるが、ライダーは筋力こそついたようだが、相変わらず弱い。 PC2が敗北することは絶対にありえない。 PC2がわざと敗北したとしても、ライダーはPC2に手を抜かれたということをきちんと理解する。 それほどの実力差があるのだ。

【状況2】

「やっぱり、敵わないなあ……」 ライダーは一人でがむしゃらに修行をしていた理由を以下のように説明する。 その言葉には尊敬と嫉妬と劣等感が滲んでいる。「……『バランサー・フォー』って知っていますか? 最近発足した自警団です。 大手の企業やメディアも注目しているみたいですね。 チームメイトは俺と同じぐらいの年代で、俺と同じ普通の旧人類です。 でも、既に多くの実績をあげてるんですよ、すごいですよね」「……いえ、いいことなんです。それで世界が平和に近づいてるんですから……。 いいこと、なんです。そのはずなんです……はは。自分が小さくて、情けない……」 ライダーはPC2へ悔しさと憧れをにじませた笑みを浮かべながら呟く。「どうしたら……あなたのように強くなれるのかなあ」

【エンドチェック】

□ アイビー・ライダーの質問に答えた。□ グリッドを1点獲得した。

【解説】

 クエリー2と同じ頃の時期として演出すると良いだろう。 ライダーの口を通して、PC2が「強さとは何か」を問われるシーン。質問文こそ強くなる方法を尋ねているが、このシーンでライダーが尋ねている「強さ」はそもそも定義が曖昧だ。強さとは心の強さなのか、力の強さなのか、そもそもヒーローの強さとはなんなのか。そうした疑問を向けられることになる。 PC2がエントリーでライダーの弟子入りを受け入れていた場合、PC2はあらかじめ、ライダーがこのところ何かに悩んでいたと気付いていてもいい。 また、このクエリーはPC2がバランサー・フォーの存在を知ることになるシーンの一つでもあるので、PC2がバランサー・フォーのことを知らないという設定の場合は、ここで彼らについての情報を与えておくとよいだろう。

【チャレンジ1:おぞましい敗北】

 メインキャラクター:PC1・PC2・PC3 場所:荒れた都市部

【状況1】

 ヒーローたちは、再び街で例のイモムシ怪獣が暴れているという通報を受け、現地へと急行する。すでに他のヒーローたちにも連絡が行っており、近くにいる者から対応に当たっているという話だった。 しかしPCたちが現地へたどり着いた時、街はひどい壊滅状態にある。多くのヒーローが倒れ、街の中央で、巨大なイモムシのような肉の塊が、ずるりずるりと蠢いているのが見える。 怪物の前には右足を大腿部から食いちぎられ、血を流しながら呆然と怪物を見上げるライダーの姿がある。 肉塊の怪物は、鋭い歯の並んだおぞましい口をガバリと開き、今にもライダーを飲み込もうとしていた。 このタイミングでPCたちはチャレンジ判定を行う。
–––––––––––––––––判定1:ライダーを救出する……<生存><作戦><心理>判定2:怪物を攻撃する……<白兵><射撃><霊能>判定3:周囲を警戒する……<意志><隠密><運動>
失敗時:クライマックスフェイズでグリッドが使えなくなる。–––––––––––––––––

【状況2】

 判定に成功しても失敗しても、判定1にチャレンジしたPCはライダーが「なんで…」と呆然と呻く様を、 判定2にチャレンジしたPCは、怪物の口から「逃げろ」と呻くレッドの声を聞く。
 ヒーローの反撃を受けた怪物は身を捩らせながら反撃態勢に入るが、 その時、空間がぐにゃりと奇妙に歪み怪物の体は異次元の中へと吸い込まれ瞬く間に消えてしまう。
 怪物が消滅した様を見届ければ、ライダーは錯乱した悲鳴をあげ、謝罪を繰り返しながら意識を失ってしまう。彼は右足を大腿部から食い千切られたように欠損しており、大量の出血をしている。 超人種でもない彼はすぐにでも病院に搬送しなければ危険な状態だ。 これ以上、彼から話を聞き出すことはできない。

【状況3】

 判定3に成功したPCは、高所から一連の騒動を見下ろし眺めているデラックスマンを見つける。彼のもとにはファクトの少年隊が集まっており、その姿はさながら引率の教師といった雰囲気だ。 ヒーローに気付かれると、デラックスマンは生徒たちへ指示し、生徒たちは素早く奇妙なアイテムで怪物が消えたのと同じ異空間を発生させ、姿を消す。 デラックスマンは殿に残る。ヒーローたちが望むならば一時的な対話が可能だろう。
 しかしこの場で何が起きたかを尋ねても、デラックスマンは多くを語らない。「解を全て説明してしまうようでは二流の教師だよ、君」「自分で考える力を促さなくてはね」 この場にいる目的を尋ねられれば、彼は「私の生徒たちへの教育のためだ」と答える。「無様な失敗例を見せ、反面教師にさせるために。彼らにもよい経験になっただろう」
 彼はヒーローたちへ問いかける。「我々が少年隊へ理想を与え鼓舞すること、君たちが人々へ正義を説き立ち上がる事を促すこと。何が違うというのかね?」 これはクエリーではないが、ヒーローたちはこの問いかけに各々の答えを返してもよい。 ヒーロー達がどのような答えを返したとしてもデラックスマンが余裕を崩すことはないが、ヒーロー達の答えを聞いた彼は、最後に意味深な言葉を残し去っていく。
「ひとつ教えてあげよう、覚えておくといい。──『臆病者は、常にライフジャケットを手放さない』」
 その日、アイビー・ライダーは意識不明の重態のまま病院に搬送され、現場を訪れていたはずのバランサー・フォーが街から忽然と姿を消してしまう。 彼らの身に何が起きたのかを、ヒーローたち自身が調べていくことになる。

【解説】

 原因不明の突然変異により姿を変えたバランサー・フォー、彼らによって怪我を負わされたアイビー・ライダー、意味深な言葉を残し去っていくデラックスマン……このシナリオの物語が大きく動くイベントだ。以後、PC達はこの事件の真相に至るために調査を進めることになる。 このイベントの留意点は2つ。アイビー・ライダーとPC達が会話をしないよう気をつけること(彼はさっさと意識不明にしてしまった方がいいだろう)、そしてチャレンジ3の伏線となるデラックスマンの助言を、必ずPCに伝えておくことだ。

【チャレンジ2:未来人の暗躍】

 登場キャラクター:PC1・PC2・PC3 場所:「バランサー・フォー」活動拠点

【状況1】

 時系列としてはチャレンジ1の直後、あるいは数時間後程度とするのが好ましい。 「バランサー・フォー」の活動拠点は、破壊された街の一角に存在する、高層ビルのワンフロアだ。 入り口にはロックがかけられており、顔出しヒーローの拠点として十分な設備と警戒が行われているらしいことが分かる。それが多くの民間企業の協力によるものらしいとも。 皮肉なことに、その警備が今は調査の邪魔となっているのだが…。 この拠点を短時間で十分に調査することができるかというチャレンジ判定となる。
–––––––––––––––––判定1:現場に潜入し、警備を解除する……<科学><隠密><霊能>判定2:現場に残された薬品を調べる……<知覚><生存><追憶>判定3:現場に残されたデータ類を調べる……<心理><作戦><経済>
失敗時:チャレンジ3の判定全てにマイナス10%の補正がつく。–––––––––––––––––
 判定1に成功することで、『脱ぎ捨てられたように』なっている、人皮のみの姿となったセルリアン・フォンの亡骸を発見する。亡骸はまだあたたかい。部屋に備えられていた監視カメラの存在に気づき、映像の解析に成功する(状況2で後述) 判定2に成功することで、現場に残された薬品が、過去の事件で使用されたことのある、旧人類を超人種(エンハンスド)へと強制的に進化させる薬品の改造品であるということに気付く。PCがシナリオ「天秤は揺れる」への参加経験があるなら、それが「天秤は揺れる」に登場した薬が、さらに悪辣に改造されたものであると気づいてよい。 判定3に成功することで、データや情報の解析を行い、セルリアン・フォンが例の薬品を調べていたこと、改造を行なっていたこと、それを「バランサー・フォー」のメンバーを騙し、秘密裏に投薬していたことなどがわかる。

【状況2】

 監視カメラの映像を調べることで、本物のセルリアン・フォンはすでに死亡していること、これまでのセリルアン・フォンはファクトの幹部「未来人バスカ」の変装だったことがわかる。「バランサー・フォー」はファクトの策略に利用されたのだ。 「未来人バスカ」の目的は改造エンハンスド化薬品「ミュータジェン」の製造、それによって生み出される怪物の回収、その血液成分から更なる「ミュータジェン」を量産することだ。 以下に監視カメラの映像から分かる情報を記載する。非常に長い描写のため、GMは適宜PC達に演出のタイミングを与えると良いだろう。
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【監視カメラの映像①『あの時何が起きたのか』】
 大量のモニターに囲まれた室内で、セルリアン・フォンがバランサー・フォーのナビゲートをしている。 彼はモニターとマイクを使い指示を出しているようだ。 モニターには戦うバランサー・フォーの姿が大映しになっている。 モニター内のバランサー・フォーは、とても旧人類とは思えないほどのパワーとスピードで最前線で戦っている。少し前の彼らにはこんな力はなかったはずだ。 怪物をあらかた倒し終え、モニターの三人は満足そうに、しかし不思議そうな顔で戦う手を止める。そのまま戦闘を終えようとする彼らだが、レッドがハッとしたように顔を上げ走り出す。『危ない!』 レッドが駆け出した先には、民間人の避難誘導を行なっているライダーがいる。物陰に潜んでいた生き残りの怪物から、レッドはライダーを素早く救出する。『あ、ありがとうございます!』『まだ生き残りがいたのか! 君はヒーローだな、すまないが手…を…?』 立ち上がったライダーの前で、レッドが口元を抑え、突然嘔吐する。 その口の中からビチャビチャと吐き出され蠢いているのは、イモムシ状の怪物によく似た小さな肉片だ。 連鎖するようにピンクとイエローにも同じ症状が出始める。 吐き出されたイモムシたちはやがて明らかにレッドたちの体積を越える程の物量となり、蠢きながら一斉に三人へ襲いかかる。ライダーは彼らを助けようと肉塊へと立ち向かうが、何もできないまま逆に足を食いちぎられてしまう。その頃には、ライダーの前には他の怪物と同じ巨大な肉塊の化物が生まれている。 駆けつける影。君たちの姿が映り込む。重症のライダーが口走る。『なんで…』 以後は「チャレンジ1」の内容がモニターの向こうで繰り返される。
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【監視カメラの映像②『ブルーの正体は』】
 一連の映像を見届けていたセルリアン・フォンは、やがて不気味な高笑いと共にブルリと体を震わせる。 背中がぱっくりと裂け、メリメリと人の皮が剥がれ落ち、その中から別の男が姿を現す。 君たちはその男が何者かを知っている。 「フォーセイクン・ファクトリー」の幹部の一人、未来人バスカだ! 過去の映像のはずのバスカは、ワザとらしく監視カメラに手を広げ、カメラを見ている現在の君たちへ語りかけるように喋り出す。
『見たか? 見たな? 見ただろう? 見たまえ! 実験は大成功だ。若く瑞々しい肉体は力を得て、ついに一つとなった!』
『おっと、さては君たち、今の映像のどこが成功なのかと疑っているね? 私の目的は何かと考えているね?  よろしい、よろしい、説明をしてあげよう。説明は成功者の義務だ!』
『あの薬品はとあるサイオンから精製された毒が原材料となっているのだが、 これが非常に在庫が少なかった! かくしてお悩みの我らがティーチャーのために、私はそれに改造を加え、 新たに採集可能なよう作り変えたのだ。 アレソレコレではわかりにくいな。以後、この薬品を『ミュータジェン』と呼ぶことにしよう』
『ミュータジェンは超人種へ投与すればその能力を強化し、 旧人類へ投与すれば超人種へと作り変える夢の薬! 使い道は数限りなく! おっと、誰も彼もがあんなミートボールになると思わないでくれよ、私の仕事は完璧だ。 あのミートボールはヒーロー用の『おまけ』さ! 実験体とはいえ、むざむざヒーローに力を与えるような真似をするとでも? そんな筈なァ〜いだろう、バーカめ!』
『あのミートボールくんの血液からは『ミュータジェン』の採集が可能でね、そう作ったのだ。 あれだけ巨大な個体に成長したのだ、 一体少年隊何人分のミュータジェンになるものか……ああ夢が広がる、胸が高鳴る! 早速採集だ!』
『それじゃあ、私はこの狭い皮の中から失礼するよ。あの大間抜けども、私を疑いもしなかった。  本物のセルリアン君は、と〜っくの昔に死んでいたというのにね! 死ぬ時まで仲間の名前を呼んでいたよ、あーっはっはっはっは!』
 未来人バスカは空間をぐにゃりと奇妙に歪ませ、異次元の中へと瞬く間に消えてしまう。
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【マスターシーン:病室より】

 登場キャラクター:なし(マスターシーン) 場所:病室

【状況1】

 夜の病院。ある入院棟の一室。 点滴と包帯を持ったナースが入り口のドアを開ける。「ライダーさん、包帯を変えましょうね。 ……ライダーさん?」 ナースが気付いた時、病室のベッドはもぬけの空だった。病室の窓は開かれ、吹き込む風にカーテンだけが揺れていた。

【解説】

 チャレンジ3にアイビー・ライダーが違和感なく登場するためのマスターシーンだ。プレイヤーの視点では、この時点でライダーがどのような意図を持って病院を脱走したのか分からず困惑するかもしれない。このシーンを挟むことで過剰に混乱を招くとGMが判断するのであれば、このマスターシーンを採用する必要はない。 反面、それを含め楽しめると判断するのであれば、意図的にミスリードを狙ってみても良いだろう。宅の雰囲気に合わせて演出意図を変えると良い。

【チャレンジ3:疑似餌の矜持】

 登場キャラクター:PC1・PC2・PC3 場所:高層ビルの屋上ヘリポート

【状況1】

 大型ヘリが待機するヘリポート。 ヘリの傍には未来人バスカとデラックスマン、バスカの部下と少年隊数名がいる。 そしてバスカが連れ去った『バランサー・フォー』の成れの果てであるイモムシ状の怪物『ワーム・ミートボール』が、頑丈な網のようなものでヘリに繋がれている。 バスカは手に一本のアンプルを持った状態で、犬猿の仲であるデラックスマンへ、声高かつ早口でまくし立てる。
「…素晴らしい出来栄えだ。やはり私は天才だ! この『ワーム・ミートボール』1体の血液からは、 計算にして約300人分の旧人類をエンハンスドヘと進化させるミュータジェンを採集することが出来る! 更に、ミュータジェンを投与されエンハンスド化した者たちは等しくDNA細胞に特殊コードを仕込まれ……」「長話は結構。つまり結論は?」「せっかちな男だな! 嫉妬は醜いぞ! まあいい。つまり、『ミュータジェン』を投与してエンハンスド化させた者達は、こちらの好きなタイミングで『ワーム・ミートボール』へ変質・統合できるということだ! 『バランサー・フォー』の件は知ってるだろう? この意味が君に理解できるかね? ああ、いい、私は優しい、解説してやろう、つまり……」「永久機関というわけか」「私の台詞を取るんじゃなーい!!!!!」「悪趣味な皮の次はそのアンプルがライフジャケットか? ……おっと、お客様だ」
 このタイミングで、PCたちは好きなように現場へ介入して良い。上記の会話はPCたちに聞こえていて構わない。好きな啖呵を切ってもらうと良いだろう。 ただしこの時点では、PCたちがどんな攻撃を行なったとしても、幹部2名がそれらを捌き切ってしまうため、決定打には至らない。

【状況2】

「ハーハッハッハ! 来ると思っていたぞヒーローども! だが残念だったな、この未来人バスカ様にとって、お前達の行動を先読みすることなど屁でもない!」「ふむ、どうにも一手遅かったなヒーロー。 ここは大人しく組織の為に、この忌々しい同僚の肩を持ってやるべきか?」
 幹部2名は戦闘態勢に入り、各々の部下たちも一斉に武器を構える。ワーム・ミートボールは理性なき咆哮をあげ、ヒーロー達へ襲いかからんとする。ここでチャレンジ判定を行う。 このチャレンジ判定は判定1の時点では2と3の内容は公開しないこと。逆に判定1の結果を終えたあとは、判定2と3の内容は同時に公開すると良いだろう。
–––––––––––––––––判定1:アンプルの内容を閃く……<作戦><心理><知覚><科学><追憶>–––––––––––––––––
 これまでのデラックスマンの言動や先ほどの彼らの会話から、未来人バスカの持っているアンプルが、『ミュータジェン』の分解剤の類ではないか? という可能性を閃く。計算高く、慎重で、野心の強い未来人バスカが、本当に制御不能の怪物を手元に置いておくだろうか? 確証はない。しかしバランサー・フォーを救いたいと君が思うならば、十分挑んでみる価値のある賭けだと思うだろう。

【状況3】

 判定1に挑戦したPCがひらめきを得た次の瞬間、 PCたちの頭上から「うおおおおおおお!!」という雄叫びが聞こえてくる。
 顔を上げれば、隣接するビルの高層階から、体にワイヤーをくくりつけたライダーが、窓を叩き割って車椅子を爆走させながらヘリポートへと突っ込んでくるのが目に入る。ライダーは車椅子ごと空中へ身を踊らせると、あまりにも突然の乱入者に驚いているバスカへと勢いよく組みついた!「う、うわ! 何だ貴様、離せ!!」 その衝撃で、バスカが手にしていたアンプルがヘリポートへと放り出される。それを見たデラックスマンは、組みつかれるバスカを完全に無視し、一直線にアンプルめがけて走りだす。 同時、バスカを抑えこみながら、ライダーがヒーローたちへ叫ぶ。
「今です、師匠ォ!!」 このタイミングでチャレンジ判定の判定2・判定3を行う。
–––––––––––––––––判定2:未来人バスカをぶん殴る……<白兵><射撃><霊能><意志>判定3:アンプルを回収し、ワーム・ミートボールへ投与する(デラックスマンを出し抜く)……<運動><操縦><霊能>
成功時:・クライマックスフェイズのエネミーにデラックスマンと少年隊を使用しない(構成員を代理で使用する)・ワーム・ミートボールが3ラウンド後に自動で戦闘不能となる。(アンプルの効果により人間に戻る。ステータスを0にしても、戦闘終了後に戻るとすればいいだろう)失敗時:・クライマックスフェイズのエネミーにデラックスマンを使用する。・ワーム・ミートボールの戦闘不能条件が他エネミーと同じになる。–––––––––––––––––

【状況4】

(※チャレンジ判定成功時を想定。失敗時は適宜ヴィランの台詞を修正すること)
「……なるほど、餌にも役割はあるか。釣り上げられたのは我々だったな」「デラックスマン! 貴様、逃げる気か!」「ティーチャーには私から報告をしておいてやろう、お前の素晴らしい発明品についてもだ。自力でプレゼンテーションをしたければ、うまく生きて帰ってきたまえ」「それは私の手柄だ! 貴様ァー!!」
 デラックスマンはバスカを見限って少年隊と共に戦場を離脱し、残されたバスカは激昂しながらヒーロー達へと襲いかかる。
「おのれ、おのれ、おのれ、おのれェ! どいッつもこいッつも! この私の才能を理解できない大間抜けどもめ!!」「ええい、もう少しデータを採ってからのつもりだったが、計画は変更だ! この『ワーム・ミートボール』は今すぐ、街の上空で千の肉の断片に変えてやる! 血の雨と共に地上は歓喜に包まれるだろう! この天才の私が! 才能の欠片も使い道もない蛆共に! 新しい力を授けてやるというのだ! 泣いて喜んで感謝して私を崇めろ薄汚い地上の凡人共がッ!!」「さあ精々役に立てよ元・蛆虫どもッ!! 貴様らにくれてやったその才能で、私に血の一滴まで恩を返せェエエエッ!!」
 『ワーム・ミートボール』を抱えヘリは離陸する。しかしここまで来たヒーロー達なら、素早くこのヘリに飛び乗る事だって出来る。 決戦の舞台は狭いヘリの上、街の上空だ!

4.決戦フェイズ

【戦闘情報】──チャレンジ③に成功している

【エネミー】

・未来人バスカ×1(基本ルールブック191頁『未来人バスカ』参照)・構成員×7(基本ルールブック218頁『ヴィランメンバー』参照)・ワーム・ミートボール(後述)

【エリア配置】

エリア4:未来人バスカエリア3:構成員×4エリア2:構成員×3/ワーム・ミートボール
PCの初期配置エリア:エリア1 or 2

【勝敗条件】

勝利条件:ワーム・ミートボール以外のエネミーが戦闘不能になる。敗北条件:味方の全滅

【備考】

・全エリアを『不整地(基本ルールブック180頁参照)』として扱う。・ワーム・ミートボールは3ラウンド目終了時点で戦闘不能となる
----------------------------------------

【エネミーの行動方針

 バスカの基本的な役回りは射程と地形を利用したヒーローの翻弄だ。実際のライフ削りはヘンチマンやワーム・ミートボールに任せるのが理想だろう。デラックスマンがいる場合は彼が強力なアタッカーとなるだろう。 GMはヒーローの構成を見ながら以下の戦術を参考にすること。 バスカ・デラックスマンの両名は、戦闘開始後の最初の行動で飛行状態を宣言する。PCの攻撃パワーの射程が短いものが多い場合は、そのまま「不整地」と「移動適正:飛行」を駆使して、エリア移動を駆使しながらPCたちを射程外から翻弄するとすればいいだろう(彼らは両名とも射程3の攻撃パワーを所持している)。PCの攻撃パワーの射程が長いものの場合は、移動戦は諦め積極的に攻撃を行っていけばよい。 その間にヘンチマンたちは各々の射程範囲内のPCへひたすら攻撃を行う。PCはダメージ、サニティ、クレジット、各種ステータスをバラバラに攻撃され、リソースを削られる戦いとなるだろう。デラックスマンが撤退している場合も基本的な方針は変わらない。 バスカのリセットは基本的には自分の身を守る為と、味方の支援に使うとよいだろう。バスカの「精神爆弾」はエリア攻撃の為、味方を巻き込むリスクがある。構成員たちが生きている間は極力支援に徹し、ヒーロー達が集中などでサニティを減らしていったタイミングで「精神爆弾」を使用すれば良い。 バスカのライフは低いため、一撃で戦闘不能になるような危険な攻撃が飛んできた場合は、可能な限りワーム・ミートボールの「釣り餌」を使用して庇うと良いだろう。 ワーム・ミートボールの攻撃である「飲み込み」と「咀嚼」の射程は0のため、「釣り餌」以外のパワーを使用するには目標と同じエリアにいる必要がある。ワーム・ミートボールは移動適正に飛行を持っていないので、「不整地」のデメリットを受け、移動に20ターンかかることを忘れないようにしよう。ヒーロー達がバスカへの攻撃のために射程外へ行ってしまった場合は「ブラッドジグ」を使用し妨害役として立ち回るのが良いだろう。

【戦闘が終わったら】

 戦闘が無事終了すれば、ヘリに残っている意識のあるヴィランはいなくなる。PCたちはヘリを運転し、あるいはパワーによって操作し、近くにあるヘリポートへヘリを着陸させる必要があるだろう。ここは演出の領域になるため、PCの好きなように着陸演出をさせるとよい。 アンプルが投与されていれば、戦闘不能となったワーム・ミートボールはボロボロと肉片が剥がれおちながら、やがて元のバランサー・フォー三人の姿に戻る。彼らは意識を失った状態で網の中にぶら下げられているので、そのまま病院に搬送したということにしてしまえばよいだろう。  未来人バスカは死亡させてしまっても問題のないタイプのNPCのため、処理はGMとPCの自由にしてよい。デラックスマンは死亡させてしまった場合は代わりが効かないので、意識不明になったところを逮捕されるか、隙をついて戦場から逃げ出したとするのが、今後のセッションに関して都合が良いだろう。ワーム・ミートボールはチャレンジ3の判定に成功しているなら、ステータスを0にしても死亡とはみなさない。反面、チャレンジ3の判定に失敗しているのであれば、処理はGMの采配に委ねる。

【戦闘情報】──チャレンジ③に失敗している

【エネミー】

・未来人バスカ×1(基本ルールブック191頁『未来人バスカ』参照)・デラックスマン×1(基本ルールブック191頁『デラックスマン』参照)・構成員×5(基本ルールブック218頁『ヴィランメンバー』参照)・少年隊×2(基本ルールブック218頁『セキュリティガード』参照)・ワーム・ミートボール(後述)

【エリア配置】

エリア4:未来人バスカエリア3:構成員×2/少年隊×2/デラックスマンエリア2:構成員×3/ワーム・ミートボール
PCの初期配置エリア:エリア1 or 2

【勝敗条件】

勝利条件:全てのエネミーが戦闘不能になる。敗北条件:味方の全滅

【備考】

・全エリアを『不整地(基本ルールブック180頁参照)』として扱う。・ワーム・ミートボールは3ラウンド目終了時点で戦闘不能となる
----------------------------------------

【エネミーの行動方針

 バスカの基本的な役回りは射程と地形を利用したヒーローの翻弄だ。実際のライフ削りはヘンチマンやワーム・ミートボールに任せるのが理想だろう。デラックスマンがいる場合は彼が強力なアタッカーとなるだろう。 GMはヒーローの構成を見ながら以下の戦術を参考にすること。 バスカ・デラックスマンの両名は、戦闘開始後の最初の行動で飛行状態を宣言する。PCの攻撃パワーの射程が短いものが多い場合は、そのまま「不整地」と「移動適正:飛行」を駆使して、エリア移動を駆使しながらPCたちを射程外から翻弄するとすればいいだろう(彼らは両名とも射程3の攻撃パワーを所持している)。PCの攻撃パワーの射程が長いものの場合は、移動戦は諦め積極的に攻撃を行っていけばよい。 その間にヘンチマンたちは各々の射程範囲内のPCへひたすら攻撃を行う。PCはダメージ、サニティ、クレジット、各種ステータスをバラバラに攻撃され、リソースを削られる戦いとなるだろう。デラックスマンが撤退している場合も基本的な方針は変わらない。 バスカのリセットは基本的には自分の身を守る為と、味方の支援に使うとよいだろう。バスカの「精神爆弾」はエリア攻撃の為、味方を巻き込むリスクがある。構成員たちが生きている間は極力支援に徹し、ヒーロー達が集中などでサニティを減らしていったタイミングで「精神爆弾」を使用すれば良い。 バスカのライフは低いため、一撃で戦闘不能になるような危険な攻撃が飛んできた場合は、可能な限りワーム・ミートボールの「釣り餌」を使用して庇うと良いだろう。 ワーム・ミートボールの攻撃である「飲み込み」と「咀嚼」の射程は0のため、「釣り餌」以外のパワーを使用するには目標と同じエリアにいる必要がある。ワーム・ミートボールは移動適正に飛行を持っていないので、「不整地」のデメリットを受け、移動に20ターンかかることを忘れないようにしよう。ヒーロー達がバスカへの攻撃のために射程外へ行ってしまった場合は「ブラッドジグ」を使用し妨害役として立ち回るのが良いだろう。

【戦闘が終わったら】

 戦闘が無事終了すれば、ヘリに残っている意識のあるヴィランはいなくなる。PCたちはヘリを運転し、あるいはパワーによって操作し、近くにあるヘリポートへヘリを着陸させる必要があるだろう。ここは演出の領域になるため、PCの好きなように着陸演出をさせるとよい。 アンプルが投与されていれば、戦闘不能となったワーム・ミートボールはボロボロと肉片が剥がれおちながら、やがて元のバランサー・フォー三人の姿に戻る。彼らは意識を失った状態で網の中にぶら下げられているので、そのまま病院に搬送したということにしてしまえばよいだろう。  未来人バスカは死亡させてしまっても問題のないタイプのNPCのため、処理はGMとPCの自由にしてよい。デラックスマンは死亡させてしまった場合は代わりが効かないので、意識不明になったところを逮捕されるか、隙をついて戦場から逃げ出したとするのが、今後のセッションに関して都合が良いだろう。ワーム・ミートボールはチャレンジ3の判定に成功しているなら、ステータスを0にしても死亡とはみなさない。反面、チャレンジ3の判定に失敗しているのであれば、処理はGMの采配に委ねる。

【エネミー一覧】

■ワーム・ミートボール

【エナジー】ライフ35 サニティ25 クレジット20

【移動適性】地上・水中【能力値】肉体:60 精神:10 環境:10【技能値】白兵70% 運動60% 意志10% 知覚10%
『飲み込み』属性:攻撃 判定:なし タイミング:行動射程:0  目標;1体 代償:ターン10効果:詳細は『ブ・ロ・ブ(基本ルールブック202頁)』の同名のパワーと同じものとして扱う。(ブ・ロ・ブと違い、目標が1体に変化していることに注意)──餌に食いつく魚のように。

『咀嚼』属性:攻撃 判定:なし タイミング:行動射程:0  目標:1体 代償:ターン4効果:詳細は『ブ・ロ・ブ(基本ルールブック202頁)』の同名のパワーと同じものとして扱う。(ブ・ロ・ブと違い、目標が1体に変化していることに注意)──本能に任せ無差別に。
『ブラッドジグ』属性:攻撃 判定:- タイミング:行動射程:2 目標:1体 代償:ターン6効果:目標は『意志』で判定を行う。この判定に失敗したキャラクターは状態異常:狼狽を受ける。──毒に侵された血が君の精神を揺さぶる。
『釣り餌』属性:妨害 判定:白兵70% タイミング:特殊射程:2(特殊:効果に詳細)目標:1体 代償:サニティ5効果:自分以外を目標に含む「属性:攻撃」のパワーが目標に命中した後に使用できる。そのパワーの目標を自分に変更する。ただし、相手のパワーの射程が自分がいるエリアに届くものに対してしか使用できない。このパワーは1ラウンドに1度まで使用できる。──ヘリが攻撃軌道上に彼らを放り投げる!

5.余韻フェイズ

【各PCの結末(一例)】

【PC1の結末】

 バランサー・フォーはその後、病院で意識を取り戻す。 意識を取り戻した彼らが最初に尋ねたのは、自分たちが怪物となる直前に目の前にいた青年、アイビー・ライダーの安否確認だったという。 その後の調査の結果、バランサー・フォーは後遺症も悪影響もなく、完全に元の旧人類へと戻ることになる。 退院し、君のもとにやってきた三人は、救出された礼と謝罪を告げながら、君へ語りかける。「俺たち、自警団の、ヒーローの活動を続けます。 守れなかったブルーのためにも、傷つけてしまった、多くの人たちの為にも。 やり方はもっと……もっと、いろいろな方法を、ちゃんと考えないといけませんが」
「……あなたは俺たちを応援してくれますか。それとも、今度こそ、俺たちを止めますか?」 君はバランサー・フォーの新たな門出を応援してやってもいいし、ここで止めてやってもいい。 才能のない者をヒーローとして取り沙汰することの是否を、改めて考え、君なりの答えを出してみると良いだろう。

【PC2の結末】

 アイビー・ライダーはその後、病院に連れ戻され、再び入院生活を送る。 片足を失った彼は車椅子や義足の生活を続けながら、リハビリに励むことになる。 何の力も持たない彼がヒーロー活動に復帰するのは絶望的に思われた。 そんな時、ライダーから折り入って相談があると君に連絡が入る。「……実は……バランサー・フォーの、新メンバー募集の話があって。おれ、応募してみようと思うんです」「この足じゃあ前みたいに動くことはできないけど、でも後方支援とか、サポートぐらいなら出来るはずだし!」「だから……もう一度、俺と手合わせをしてください! お願いします、師匠!」 ライダーは河川敷で君に求めたように手合わせを求めてくる。 君はその求めに応じてもいいし、応じなくてもいい。ライダーを引き止めてもいいし、応援してもいい。 さあ、どうする?

【PC3の結末】

 未来人バスカは倒れ、彼の目論見は頓挫した。 デラックスマンも何処かへ消え、世界には束の間の平和が訪れた。 しかし、君は分かっている。バスカは倒されたが、過去と未来を行き来することの出来た彼の得た「ミュータジェン」の知識が完全に失われたわけではない。 これからの戦いの中で、いつ何時、あの薬品が蘇るか分からないのだ。 来たるべき悪との戦いに備え、君自身もまた強くならねばならない。 その為に、自分には何が出来るだろうか。 君は自分自身へ問いかけながら、コーヒーをすすり、ドーナッツをかじった。