「フード・マイレージ」という言葉を聞いたことはありますか。
これは、輸送される食料の量と距離を数字で表したものです。
食べ物の安全性問題や地球環境への負荷もここから見えてきます。
私たちが日々食べているものが、どこから運ばれてきたか意識したことはありますか?
お店に並ぶ穀物や野菜、肉、魚などは皆、国内外の農業・漁業現場からもたらされますし、工場で作られる加工食品の材料も同様です。遠い国から輸送されている食品もたくさんあります。
食料が最初に生産された場所から、私たちの口に届くまでの輸送距離に量を掛けた、指標となる数字がフード・マイレージです。
輸入食料の場合は、生産地から港までと輸出国から日本までの船便での距離、日本の港から消費地までのトラック輸送距離を足した数に総量を掛けます。地球の反対側から大量に輸入されている場合、大きな数字になるのは必然。また、国産食料でも、はるか離れた場所で生産されたものを運んでくれば、高い数字になるでしょう。
フード・マイレージを知ることによって何が分かるのでしょうか。
表を見てください。輸入食料のフード・マイレージは日本が断トツです。どれほど輸入に頼っているかは食料自給率の各国比較からも一目瞭然。100%を超える国は輸出もできている国であり、日本は食べ物の約60%が輸入品です。畜産用の飼料を含む穀物の自給率は、わずか28%まで下がってしまうのです。
輸入が多いということは、それだけ国内の第1次産業が縮小しているということでもあります。耕作放棄地が増え、農山村が荒れると、土地の貯水力が低下したり獣害が増したりもします。
輸入食料には安全性が不安な場合もあります。生産現場で何が行われているか私たちは知ることができませんし、長い時間をかけて運んだり保管したりするために、保存性を高める必要もあります。そして、最も大きな問題が地球環境に対する負荷です。
長距離輸送には多大なエネルギーを使います。例えば国産ブロッコリーに対して、米国産は輸送に際して約8倍の二酸化炭素を排出しているという報告も。試算では、2008年度の国内での食料輸送に伴う二酸化炭素排出量約900万トンに対して、輸入食料では1億6900万トン(全て船舶輸送と仮定した場合)にも及びます。日本の人口で割ると1人当たり年間約130kg。この二酸化炭素の量を、電力を節約して埋め合わせるには、テレビを見る時間を毎日1時間減らしても11年もかかります。
地球環境を守るための二酸化炭素排出量削減が世界的な課題になっている今、フード・マイレージの数値を減らしていくことが大きな意味を持っているのです。
各国の輸入食料のフード・マイレージを比較すると、日本は格段に多い。
欧米先進国と比べて日本の食料自給率がいかに低いかが分かる。
フード・マイレージを減らすために、一番簡単な方法は「近くで作られたものを食べること」に尽きます。つまり地産地消。近隣の農漁業者が生産した旬の品を買えばフード・マイレージはゼロに近い上、顔が見える品として信頼性も高いでしょう。近年では学校給食などでも地産地消に取り組む自治体が増えてきました。
加工食品ではどうでしょうか。国内製造の品でも、原料が輸入品ならフード・マイレージは大きくなります。大豆1トンで豆腐5000丁を作った場合、米国産大豆に対して地元産大豆ではフード・マイレージは約6000分の1、二酸化炭素排出量は約400分の1です!
こうした取り組みが地元農家の維持にもつながっていきます。
フード・マイレージには、輸送手段の違いは考えられていません。多くはトラックで輸送されている国産品は、海外から船舶で入るものより多くの二酸化炭素を排出している場合もあります。旬を先取りするハウス栽培、消費地での廃棄なども環境負荷の増大につながります。一方、私たち日本人が「近くの旬のもの」だけでは満足できなくなっているのもまた事実。遠い産地から直送の野菜や魚も、海外産の安価な食材も食卓をにぎわせます。普段の買い物ではぜひ、フード・マイレージを意識してみてください。フード・マイレージとは、地球環境と日本の農を共に守るための重要なキーワードの一つなのです。