この項目について選択肢が3つありますが、データの形式としては2種類です。どちらも入力フォーマットはスペース区切りのテキストデータです。
H K L |Fobs| |Fobs_err|
実験で観測される量は積分強度ですが、既にローレンツ因子などを補正した上でStructure factor |Fobs|の形に変換できている場合はこれを選択します。extinction効果を補正する場合には入射中性子波長も記入してください。
H K L Iobs Iobs_err
測定した積分強度を入力データとして用いる場合は2、3番目の選択肢を使います。単結晶、単波長実験であることを仮定して、プログラム中でLorentz因子が補正され、Fobsが計算されます。波長の指定の仕方で、エネルギーで指定するか、直接波長を入力するかを選択することができます。
Option : Extinction correction
Extinction効果の補正を行う場合は、各反射に対して中性子が試料中を通る距離を記述する必要があります。上記の「H K L |Fobs| |Fobs_err|」「H K L Iobs Iobs_err」のどちらについても、一番右側にもう1列データを追加して、試料中を中性子が通る距離を cm 単位で書いてください。(mm単位ではないので注意)
上記で選択したフォーマットにしたがって記述した測定データのテキストファイルを読み込ませてください。ファイルを選択するボタンを使っても良いですし、テキストボックスに直接コピペしても良いです。
最適化したいパラメーターについてチェックボックスをクリックして、「Start calculation」をクリックしてください。
スケールファクターについては必ず最適化されるので表には出ていません。その他のパラメーターについて、原子位置の対称性の要請によって動かすできないものについてはクリックできないようになっているはずです。
等方性原子変位因子(Biso or Uiso)は各原子について独立に最適化できるようになっていますが、測定データの数が限られている場合などでは正しく決まらない場合もあります。「Overall factor for Biso or Uiso」をクリックすると、CIFファイルで与えられたB/Uisoの比を固定し、その全体にスケールファクターをかける形で最適化します。
Max iterationはLevenberg-Marquardt法による非線形最小二乗法を行う際の繰り返し回数です。LM法では段階的にパラメーターを更新しながら最適な値を探しますが、その試行回数を示します。一度実行してみて、「Iteration number reached maximum」という表示がcalculation logに出た場合、LM法の収束判定をクリアする前に試行回数が上限に達したという意味ですので、再度「Start calculation」をクリックすることでfittingを継続することができます。
最適化されたパラメーターの誤差についてはCalculation logの欄を下にスクロールしてください。
論文等でみられる|Fcal| vs |Fobs|のデータはFcal-Fobs data/plotにあります。
例として私が学生の頃にJRR-3の4軸回折計FONDERで測定した結果を示します。
CIFファイルはVESTAで作成しました。動かすことができるのは、
Extinction parameter
Oのz座標
Cu, Fe, Oの等方性原子変位因子Biso
ですが、初期値としてzやBisoは適当な値に変えてあります。
実験データはFobsの形式で書かれていますので、Data typeとしては一番上を選択します。
実験条件は
λ=1.24 A
d-value of the monochromator : d=1.70576 A, Ge(311)
でした。
Extinction補正をするため、Fobsデータファイルの一番右の列には各反射に対する試料内の散乱パスの長さが入っています。Extinction correctionにもチェックを入れておきます。
最小二乗法によるパラメーター最適化については上で述べたように
Scale factor
Extinction parameter E0
Oのz座標
CuのBiso
FeのBiso
OのBiso
の6パラメーターについて行います。スケールファクターは表に出ていませんが、残りの5つのパラメータについてチェックを入れて、Start calculationボタンを押してみます。
Max iterationが20では少なかったようで、一度最大値まで達してしまいましたが、そこまででもある程度最適化は進んでいます。さらにもう一度Start calculationを押すとそのパラメーターからさらに最適化が進み、The least-squares fitting converged のメッセージが出ました。
結果は下記の通りでR-factorは4.7%程度でした。Extinctionがかなり強い系ですし、あまり形の良くない、大きな結晶だったと記憶しているので、まあこんなもんですかね。