特別講演

9月7日 

AUVによる海底生物サンプリング:”制御ループに人の意思決定が存在するシステム”の構築 

講師:石井 和男(九州工業大学 大学院生命体工学研究科 人間知能システム工学専攻 教授)

概要:自律型水中ロボット(AUV: Autonomous Underwater Vehicle)は一定深度,一定高度での観測航行が可能であり,安定した観測プラットフォームとしてAUVによる海洋調査は実用化されつつある.広範囲の海底面の撮影を行い,それらからモザイク画像を生成しているが,

次に期待されるのは海底生物のサンプリングである.船上のオペレータから深海底を航行するAUVにサンプリング目標を指示するシステムを構築するには,制御ループに人の意思決定が存在するため,人が意思決定をしやすい情報を提示し,Autonomousにサンプリングするロボットシステムが必要となる.本講演では開発したシステムと実海域実験の成果を報告する.


9月8日 

生殖医療支援研究の最前線

講師:畑 豊(兵庫県立大学 理事・副学長 兼 大学院情報科学研究科 健康医療科学コース 教授)

概要:現在、健康医療分野で、情報技術(IT)・人工知能(AI)を活用する研究が盛んである。特にMRやX線CTのモダリティにおける画像診断の分野では、既に実用化されている。この講演では、生殖医療の融合研究を取り上げる。
① 睾丸内にある太い精細管を検出する超音波装置:非閉塞性無精子症患者の精子回収手術には睾丸の切開が必要になるが、後の睾丸機能を低下させないために睾丸へのダメージを最小限に抑える必要がある。顕微鏡を使用しながら手術を行うMicro-TESE手術では精子が生成される精細管を摘出し、その精細管から精子を回収する。この手術の際、非侵襲に睾丸内に精子の有無を検出するシステムが求められている。本研究では超音波を用いて、精子回収可能な直径250-300μmの精細管を検出する装置の開発について述べる。
② 顕微授精時に破膜を生じる卵子の質評価:不妊治療の一種である顕微授精は、女性から採取した卵子に対しピペットを用いて直接精子を注入する。精子を注入する際、ピエゾパルスによって破膜を行う。しかし卵細胞質膜の進展中の破膜は授精率を低下させる。ここでは顕微授精時の卵子画像から破膜の有無により、卵子の質評価と穿刺位置による破膜への影響を定量的に評価する装置を紹介する。
③子宮煽動運動の解析:子宮は精子を運搬するために、子宮蠕動と呼ばれる運動を行う。子宮蠕動は月経周期によって方向と発生頻度が変化することが知られている。しかし、不妊症患者の場合、月経周期に関わらず運動が多発する場合や上向性と下向性の運動が同時に発生する場合がある。そこで、Cine-MRI解析により蠕動運動の評価法、及び臨床で使用される超音波画像解析による蠕動運動頻度の評価システムを紹介する。
最後に、医療分野での今後のITベースの医療研究の将来性について考えたい。