わたしたち

設立趣旨書

~「子育て」を「孤育て」にしない~

ひとり親の方は、物理的な制約を抱えながら、子育ての責任を一手に担っています。

その重責は、ひとり親の肩に重くのしかかり、体力的にも精神的にも疲弊しやすい状況にあります。

親も子も、どのような境遇にあっても自分の選択に誇りを持ち、自分らしく生きるためには、心身の健康と人とのつながりが不可欠です。

核家族化が進む昨今で、孤立しやすいひとり親世帯が一人ひとりの自分らしさを尊重し、多様な生き方、多様な家族のあり方が認知されるよう、ひとり親がひとりで背負う重責を地域全体で担える仕組みを作りたい。

いつの時代にも子どもは社会の宝です。社会全体で大切に育むことが、次代を担う子たちの明るい未来に繋がると信じています。

「孤独な子育てはしんどい、けれど、つながって支え合えたら子育てが楽しくなるかもしれない。そのためにできることを小さなことから始めたい」

そんな思いから、孤立しやすいひとり親世帯が地域で誰かと繋がる場所のひとつになるべく、団体の活動をスタートさせました。


そこに、今日よく耳にする「子どもの貧困問題」も視野に入れたいと考えます。

これだけ豊かな日本で、貧困状況にある子どもがいるのかと疑問に思われる方も多いと思います。

しかしながら、子どもの貧困問題は実はとても深刻です。

「貧困」には2つの定義があります。

「絶対的貧困」:生きるために最低限必要となる食料・生活必需品を購入するためのお金が不足している家計の状況を示す。

「相対的貧困」:各世帯の所得の平均値の半分を下回っている人の割合、つまりその国の所得格差を表す。

日本が抱えている問題は後者の「相対的貧困」です。


2018年の日本の子どもの貧困率は13.5%*で、17歳以下の子どもたちの7~8人に1人(約260万人)が「貧困状態」にあります。 *2019年国民生活基礎調査(厚生労働省)

「貧困状態」とは貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)である127万円に満たない生活状態であることを意味します。


近年、日本での離婚率は急速に上昇しており、ひとり親世帯が増えています。

子どもの貧困は特にひとり親世帯で起こりやすく、父子世帯よりも6倍多い母子世帯(シングルマザー)においては、その労働条件が原因で子どもの貧困が起こりやすいと言われます。


家計を支えるためには安定した収入が必要ですが、母子世帯の場合はパートやアルバイトなどの非正規雇用で子どもを育てている家庭が少なくありません。

非正規雇用では十分な収入が得られずに貧困線を下回るケースが多くなります。

もともと正規雇用で働いていても、出産や育児・介護等でパートや非正規雇用になるケースもあります。

その状況を裏付けるように、「児童のいる世帯」(18歳未満の子どもがいるすべての世帯)と、そのうちの母子世帯の貯蓄について、以下のような調査結果が出ています。

*2019年国民生活基礎調査(厚生労働省)


母子世帯の場合、貯蓄がないと答えた世帯が約32%に上り、さらに平均貯蓄額も児童のいる世帯よりも大幅に少ないことが分かります。


さらに問題として挙げられるのが、「働いているのに貧困から脱せない」という日本特有の状況です。

経済協力開発機構(OECD)による14年版「世界のひとり親世帯の相対的貧困率」ランキングでは、日本は母親の就労率が世界的に高いにもかかわらず、ひとり親世帯の貧困率が50.8%とOECD加盟国33カ国中ワースト1です。

つまり日本では、ひとり親世帯(とくに母子世帯)に多い非正規雇用やパート雇用という雇用形態が、家計を成り立たせるのに十分な収入を担保しない場合が多いということを意味します。


そして、新型コロナの影響はひとり親世帯の家計に追い打ちをかけています。 

ある調査では、ひとり親世帯の7割以上がコロナの影響で収入が減っていることが分かりました。

緊急事態宣言の発令や勤め先の飲食店の経営悪化などで労働時間が減り、収入が大きく減少してしまい、家賃などを貯金から切り崩したり、先の見えない暮らしに心身ともにストレスを抱えるひとり親世帯も増えています。


かつて日本は「1億総中流社会」と言われていた時代があり、何となく貧困とは無縁だという印象がまだ残っているかもしれません。

しかし現実には、7人に1人の子どもが貧困状態であり、さらに、ひとり親家庭の半分近くが貧困状態にあるということが、目を背けることができない事実となっているのです。


貧困問題が深刻化する一方、日本では年間600万トン以上もの食品が本来は食べられるのに廃棄されているという状況があります。

こうした食の「もったいない」を「ありがとう」に変える一つの仕組みとして、 食の支援を必要としている方々にそれらの食品を無償で提供する活動を行うことで、フードロス解消の意味での社会貢献につなげたいと考えております。


まず、子どもたちが住む身近な地域からできる範囲で活動を進めることが、子どもの貧困問題を解決していくために大切であると考えます。

地域の「もったいない」を「ありがとう」に変えながら、必要な家庭には立て直すサポートができるように。

継続性と責任性を持ち、地域のみなさんと共に真摯に活動に取り組んでまいります。