Research

最先端質量分析技術を基盤に脂質の生理機能・病理機能に迫る

生体膜は1,000種類以上の「脂質」分子から構成され、その一つ一つに特異的な機能があると考えられています。近年、その一部が解明され、脂質分子が生殖・発生・血管形成・細胞増殖などの生理現象からがんや線維症など難治性疾患にも関与することが明らかにされつつあります。また、質量分析計の進歩から、生体内には機能未知の脂質分子がさらに多く存在することもわかってきました。タンパク質とは異なり、脂質分子は遺伝子により直接コードされず、通常、その合成には複数の遺伝子産物が複雑に関与しています。したがって、ある脂質の機能を調べることはタンパク質の機能を調べるよりはるかに難題です。また、このような理由で、脂質の機能・働きを調べるという課題の多くは未解決なまま残されています。衛生化学教室では、質量顕微鏡や質量分析計などを含む最新のテクノロジーで、“多種多様なリン脂質の機能解明”という難題に取り組んでいます。具体的には、(1) GPCRを介して機能する1本脚のリン脂質“リゾリン脂質”生理・病態機能の解明、(2) 新規GPCR脂質リガンドの発見と機能解明、(3) リン脂質の生合成や恒常性維持に関わる分子の同定を通じた新規リン脂質の機能解明、を行なっています。脂質代謝の異常が多くの疾患に深く関わることも明らかになりつつあり、研究成果の創薬やバイオマーカー探索への応用も期待されます。