細胞質DNA応答分子STINGの活性化機構を解明!(160627)

投稿日: 2016/06/27 9:04:39

"Activation of STING requires palmitoylation at the Golgi"

Kojiro Mukai, Hiroyasu Konno, Tatsuya Akiba, Takefumi Uemura, Satoshi Waguri, Toshihide Kobayashi, Glen N. Barber, Hiroyuki Arai*, Tomohiko Taguchi*

* : co-corresponding author (下線部は衛生化学教室)

Nature Communications, doi:10.1038/ncomms11932

哺乳動物細胞は、ウイルスや細菌の感染などで出現する細胞質中のDNAを危険物質として認識し、I型インターフェロンおよび炎症応答を惹起することで感染に対応します。2008年にこの自然免疫応答の中心分子STING(STimulator of INterferon Genes)が同定されました。STINGは小胞体局在の4回膜貫通タンパク質で、刺激に応じ核近傍に存在するオルガネラに輸送されることがわかっていましたが、その細胞内輸送経路及びその局在変化の炎症応答への重要性は全く不明でした。

今回我々はSTINGの詳細な細胞内輸送経路とシグナルの活性化を解析し、STINGがゴルジ体においてパルミトイル化されることが下流シグナル活性化に必要であることを発見しました。また、家族性の自己免疫疾患患者から見つかったSTINGの点変異に起因するI型インターフェロン応答及び炎症応答が、STINGのパルミトイル化の阻害によって抑制できることを見出しました。さらに、ゴルジ体のスフィンゴ脂質が作る脂質環境がSTINGの活性化に必要であったことから、パルミトイル化されたSTINGはゴルジ体の脂質ラフト上でクラスター化して活性化している可能性が示唆されました。

近年、ウイルス感染やSTINGの点変異だけでなく、ガンやミトコンドリア損傷、紫外線暴露時においても細胞質中に自己DNAが蓄積し、STINGを介した炎症応答が起きることが報告されています。本研究により、このようなSTINGを介した様々な炎症応答の場面において、STINGのパルミトイル化酵素の阻害剤が薬剤として有用である可能性が期待されます。また今回の結果は、細胞内オルガネラがそれぞれ固有な脂質環境を持つ意義を解明するための大きな一歩になると期待されます。