リン脂質中のPUFAの増加に対する細胞応答を解明!(160210)

投稿日: 2016/02/10 5:09:33

Lysophosphatidylcholine acyltransferase 1 protects against cytotoxicity induced by polyunsaturated fatty acids.

*Akagi S, *Kono N, *Ariyama H, Shindou H, Shimizu T, Arai H. (下線部は衛生化学教室)

FASEB Journal. 30, 2027-2039 (2016) *co-first authors

リン脂質中のPUFAの増加に対する細胞応答と、その生理学的意義について、修士2年の赤木君が明らかにしました。

リン脂質の脂肪酸鎖は単なる膜の構成成分ではなく、膜タンパク質の機能調節や膜ドメインを介したシグナル伝達など、様々な細胞機能に関わっており、適切なリン脂質の脂肪酸組成が、正常な細胞機能を発揮する上で重要です。一方で、我々の体は、食餌などの外来性、あるいは内在性の脂肪酸に常に晒されており、リン脂質の脂肪酸鎖は絶えず変化しています。そのような脂肪酸鎖の変化に対して細胞機能を正常に保つために、細胞はリン脂質の脂肪酸鎖の恒常性を維持する必要がありますが、そのような恒常性維持機構は今までほとんどわかっていませんでした。

当研究室では、リン脂質中のPUFAが増加した際に、細胞はDPPCというリン脂質を産生することにより、リン脂質の脂肪酸鎖の恒常性を維持していることを見出しました。また、このDPPCはLPCAT1というアシルトランスフェラーゼにより産生されており、リン脂質中のPUFAの増加により引き起こされる細胞死を抑制することを明らかにしました。最後に、このような脂肪酸鎖の恒常性の維持機構が、網膜において生理的な条件下で働いていることを示唆しました。

本研究は、未だほとんど解明されていない、リン脂質の脂肪酸鎖の恒常性維持機構とその生理学的意義を分子レベルで明らかにするものであり、リン脂質の研究分野をさらに先へ押し進めるための大きな一歩となることが期待されます。