オメガ3脂肪酸を動かしてアレルギーを促す酵素を発見!(171012)

投稿日: 2017/10/12 4:20:14

“Omega-3 fatty acid epoxides are autocrine mediators that control the magnitude of IgE-mediated mast cell activation”

Yuta Shimanaka, Nozomu Kono, Yoshitaka Taketomi, Makoto Arita, Yoshimichi Okayama, Yuki Tanaka, Yasumasa Nishito, Tatsuki Mochizuki, Hiroyuki Kusuhara, Alexander Adibekian, Benjamin F. Cravatt, Makoto Murakami* & Hiroyuki Arai*

*:co-corresponding author (下線部は衛生化学教室)

Nature Medicine, doi: 10.1038/nm.4417

論文へのリンクはこちら:

http://dx.doi.org/10.1038/nm.4417

プレスリリースはこちら:

http://www.amed.go.jp/news/release_20171010-01.html

近年、先進国におけるアレルギー患者数は急増しており、大きな社会問題となっています。アレルギー患者では血中IgEの上昇とマスト細胞の過度な活性化が生じていおり、マスト細胞の活性化制御機構の解明がアレルギー治療のための急務となっています。マスト細胞は、アトピーや蕁麻疹、喘息などのアレルギー症状の中心的役割を担う細胞です。マスト細胞がアレルゲンと出会うと、マスト細胞は活性化し、蓄えられたヒスタミンなどの化学伝達物質を放出することで、痒みや気道収縮、血管拡張による体温低下などを引き起こします。急激なマスト細胞の活性化はアナフィラキシーを引き起こし、時には死に至ることもあります。

今回、マスト細胞がエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ3脂肪酸が酸化されて生じた「エポキシ化オメガ3脂肪酸(17,18-EpETEと19,20-EpDPE)」を常時産生していることを発見しました。また、これらエポキシ化オメガ3脂肪酸は、PAF-AH2という酵素によって細胞膜から遊離されることも明らかとなりました。そしてエポキシ化オメガ3脂肪酸が、遺伝子発現を変えることにより、活性化マスト細胞の細胞内シグナル伝達を調節するという、新しいアレルギー反応の調節メカニズムを解明しました。さらに、PAF-AH2の阻害剤をマウスに投与することにより、アナフィラキシー反応が大きく抑えることに成功しました。PAF-AH2の阻害剤は、ヒト由来のマスト細胞に対しても同様の効果がありました。

本研究の成果をもとに、今後、PAF-AH2の阻害を分子基盤にした全く新しい抗アレルギー薬の創生が期待されます。