LYCATがホスファチジルイノシトールの1位の脂肪酸を決める(111214)

投稿日: 2011/12/23 10:26:15

J Lipid Res (2011) in press

LYCAT, a homologue of C. elegans acl-8, acl-9 and acl-10, determines the fatty acid composition of phosphatidylinositol in mice.

Rieko Imae, Takao Inoue, Yasuko Nakasaki, Yasunori Uchida, Yosuke Ohba, Nozomu Kono, Hiroki Nakanishi, Takehiko Sasaki, Shohei Mitani, and Hiroyuki Arai.

哺乳動物のホスファチジルイノシトールには、sn-1位に飽和脂肪酸であるステアリン酸、sn-2位に高度不飽和脂肪酸であるアラキドン酸が主に結合しています。このような特徴的な脂肪酸組成はホスファチジルイノシトールが新規合成された後に脱アシル化、再アシル化反応により形成されると考えられています(脂肪酸鎖リモデリング反応)。私たちはこれまでに線虫C. elegansを用いた解析から、ホスファチジルイノシトールのsn-2位に高度不飽和脂肪酸を導入する酵素であるMBOA-7/LPIAT1、およびsn-1位にステアリン酸を導入する酵素であるACL-8, ACL-9, ACL-10を同定してきました(Lee et al. Mol Biol Cell (2008) 19, 1174-1184; Imae et al. Mol Biol Cell (2010) 21, 3114-3124)。

今回、私たちはACL-8, ACL-9, ACL-10の哺乳動物の相同分子であるLYCATの欠損マウスを作成し、LYCATのホスファチジルイノシトールの脂肪酸への関与を調べました。LYCAT欠損マウスではホスファチジルイノシトールのsn-1位にステアリン酸を導入する活性が減弱しており、ホスファチジルイノシトールの脂肪酸組成が大きく変化していました。これらの結果から、LYCATがホスファチジルイノシトールの脂肪酸組成を規定する酵素であることが個体レベルで示されました。

今回作成したLYCAT欠損マウスを利用することにより、今後ホスファチジルイノシトールの脂肪酸組成の生物学的意義が明らかとなることが期待されます。