リゾフォスファチジン酸(LPA)合成酵素のミトコンドリア融合における重要性を解明(130409)

投稿日: 2013/04/19 3:33:35

The EMBO Journal 32: 1265-1279 2013

Mitochondria-type GPAT is required for mitochondrial fusion.

Ohba Y, Sakuragi T, Kage-Nakadai E, Tomioka NH, Kono N, Imae R, Inoue A, Aoki J, Ishihara N, Inoue T, Mitani S, Arai H.

ミトコンドリアはエネルギー産生を担うのみならず、アポトーシスや自然免疫をはじめ、多彩な細胞現象に関与することが知られている細胞内小器官です。 近年、ミトコンドリアが融合と分裂を繰り返す動的なオルガネラであり、融合・分裂のバランスがミトコンドリアの機能維持に重要であることが明らかにされてきています。しかしながらその分子機構については不明な点が多く残されていました。本研究では、線虫C. elegansを用いた解析から、ミトコンドリアに局在するリゾホスファチジン酸 (LPA) 産生酵素、グリセロール3リン酸アシルトランスフェラーゼ (GPAT) を欠損するとミトコンドリアの融合が阻害されること、また、GPATの産生物であるLPAというリン脂質そのものがミトコンドリアの融合に重要であることを明らかにしました。これまでLPAは細胞膜上のLPA受容体を介して作用することが知られていましたが、今回見出したLPAの作用は細胞自律的であったことから、細胞内で産生されたLPAが直接ミトコンドリアに作用していると考えられます。本研究は、ミトコンドリアの融合機構の一端を明らかにしたものであるとともに、LPAが細胞内においても生理活性脂質として機能する可能性をはじめて示すものです。この発見を糸口に、ミトコンドリア融合機構の更なる解明や、細胞内におけるリゾリン脂質の多彩な機能が明らかになってくることが期待されます。