コレステロールはMultivesicular Body形成に重要である(100805)
投稿日: 2011/12/14 5:58:52
PLoS Genet (2010) 6, e1001055.
Multivesicular body formation requires OSBP-related proteins and cholesterol.
Hiroyuki Kobuna, Takao Inoue, Machiko Shibata, Keiko Gengyo-Ando, Akitsugu Yamamoto, Shohei Mitani, and Hiroyuki Arai.
コレステロールは生体膜の構成成分として重要な脂質です。細胞内オルガネラのコレステロール含量は各々異なっており、その違いには細胞内に存在する複数のオキシステロール結合タンパク質関連タンパク質(ORP: Oxysterol-binding protein-related protein)が関与していると考えられています。しかし、ORPの生理機能やコレステロールの各オルガネラでの機能というのはよくわかっていませんでした。
今回、私たちはORP分子群を遺伝学的に欠損する線虫を作成したところ、膜タンパク質の分解過程に重要なMultivesicular Bodyの形成にORP分子群が重要であることを明らかにしました。またORP分子群を欠損する線虫では、Multivesicular Bodyを形成するのに重要な細胞内オルガネラである後期エンドソーム/リソソームのコレステロール含量が減少しており、正常な線虫でも培地中のコレステロールを欠乏させることにより、Multivesicular Body形成に異常をきたすことも分かりました。さらに哺乳動物のORPの一つであるORP1Lを培養細胞で発現抑制すると、線虫と同様にMultivesicular Body形成に異常が起こることも明らかとなりました。
以上のことから、後期エンドソーム/リソソーム膜のコレスレロール含量がORP分子群により適切に制御されることが、Multivesicular Bodyの形成、ひいては Multivesicular Bodyによる膜タンパク質の分解に重要であることが分かりました。このような発見を皮切りに細胞内オルガネラにおけるコレステロール量の調節機構とその意義がより明らかとなっていくことが期待されます。