オーソモレキュラー医学の最新動向 2025年春
アルツハイマー病やパーキンソン病など、従来は別個の疾患名で語られてきた神経変性疾患が、実際には多層的かつ連続的な病態を示す「スペクトラム」として捉えられている。
食事や運動、睡眠状態、さらには口腔内細菌叢・腸内細菌叢や血液脳関門の機能は、脳の炎症制御や代謝、免疫寛容に深く関わる。脳内への不要物質の侵入を防ぎ、神経炎症を抑える上で、こうした要素は欠かせない。
免疫レジリエンス:免疫系の柔軟性や自己寛容の維持。炎症や自己抗体の過剰な産生を抑え、細胞修復・再生を促す力。
認知レジリエンス:知的刺激や学習、社会活動によって“脳の予備能(リザーブ)”を高めることで、病理があっても症状を軽減できる力。
脳レジリエンス:免疫レジリエンスや認知レジリエンスと密接に関連しつつ、“脳そのものがダメージを受けても修復し、機能を保ちやすくする総合力”を示す概念。
機能的な面:神経ネットワークの可塑性(プラスティシティ)や代替回路の活性化により、ある領域が障害を受けても他の領域で補おうとする仕組み。
構造的な面:グリア細胞や血管ネットワークの再編に伴う、微細な損傷部位の修復や神経細胞の生存維持。
環境的な面:栄養バランスや運動、睡眠をはじめとするライフスタイル全般の調整や、ストレスマネジメントによる慢性炎症の抑制など。
「脳レジリエンス」が低下しなければ、たとえ何らかの神経変性の原因(たとえばアミロイドβ42の蓄積や血管障害、自己抗体による神経炎症など)が生じても、脳がそれを受け流し、うまく対処できる可能性が高まる。したがって、免疫・認知・脳の三位一体のレジリエンス向上こそが、将来の“脳内未来”をより良いものにする鍵といえる。あとは、筋骨格レジリエンスも重要である。
こうしたレジリエンスを総合的に(多層的レジリエンス)高めることは、将来の脳機能(=脳内未来)を左右する。早期の対策は神経変性の進行を食い止めるばかりか、認知症そのものを予防または緩和しうる可能性がある。
自身のライフスタイルを見直し、腸内環境や免疫系の状態を把握できる検査(例:アルツハイマーズリンクス検査の抗体プロファイルなど)を活用することで、より早期に個別最適な介入を行える。結果的に高齢期の健康寿命(=健康脳寿命)を延ばすことが期待できる。
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