従来の医学は、特定の疾患を単一の因子や物質に還元して原因を探求してきた。(MEDiCAL1.0時代)
そして、単一原因の理解が進むとともに、原因の早期発見や原因の元となる生活習慣の是正が重要視されるようになった。(MEDiCAL2.0時代)
ところが、アルツハイマー病をはじめとした神経変性疾患は、多くの要素が複雑に絡み合って発症することが明らかになってきた。このため、単一の要因に注目する還元主義では限界があり、全体像を総合的に理解するホーリズムの視点が必要不可欠である。
ALX(アルツハイマーズリンクス)検査は、このホーリズム的アプローチを可能にする検査である。脳内の異常タンパク質と、それらに対して産生される自己抗体の交差反応を評価することで、個人ごとの免疫状態を全体的に把握することができるのだ。(MEDiCAL3.0時代)
ALX検査では、アミロイドβ42(Aβ42)、タウ、αシヌクレインなど脳内の異常タンパク質に対し、自己抗体がどのような交差反応を示すのかを明らかにする。
こうした交差反応(モレキュラー・ミミクリー)が生じると、脳内で免疫複合体が形成され、慢性炎症が引き起こされる。この慢性炎症が、神経変性疾患の病態進行を促進する主要な要因となるのである。
➡︎ 交差反応を引き起こす要因の具体例
食品(卵黄、乳製品、小麦など)
化学物質(アルミニウム、水銀など)
病原体(口腔細菌、ウイルスなど)
疾病の予防や治療法を選択する際には、医学的な根拠だけでなく、患者自身や家族の価値観を考慮することが非常に重要である。
自己決定理論(Self-Determination Theory)に従い、患者が望むライフスタイルや価値観を尊重し、それに基づいた治療方針を選択することで、治療効果が持続的に高まり、健康維持が可能になる。
ALX検査を活用することで、患者の「脳内の未来」を予測できるようになる。
どの自己抗体が脳内タンパク質に対してどれだけ強く交差反応を起こしているかを明らかにすることにより、将来的な認知症や神経変性疾患のリスクを事前に把握でき、個人ごとの予防的介入が可能となる。
ALXの価値とは、「個別化されたブレインヘルスケアとリスク管理を可能にする」ことである。
さらに医師や医療従事者の脳にも変革を起こせる。
脳内未来を予測する挑戦は、まさに、“現代医師脳”を”還元主義”から”全体論”に書き換える(Recode)チャンスである。
ぜひ、MEDICA3.0への世界へと冒険に踏み出してほしい。
ALX検査の結果に基づき、包括的な予防戦略を以下の3つのアプローチで実施する。
Choice(選択):患者と家族の価値観を尊重し、それに基づいた行動変容を促す。
Change(変革):環境要因や食生活の改善を行い、必要に応じた薬物療法を取り入れる。
Care(ケア):睡眠の質を高め、粘膜や皮膚を保護するなど、日常的なケアを徹底することで慢性的な炎症を防ぐ。
これらを総合的に実践することで、免疫レジリエンスが強化され、自己抗体の異常産生が抑制される。これが脳機能を維持し、神経変性疾患を予防する鍵となる。
Livingston et al., 2020, Dementia prevention, intervention, and care: The Lancet
Karanth et al., 2020, JAMA Neurology
A:Aβ42に対する自己抗体(Aβ42Ab)が脳内で免疫複合体を形成すると、神経細胞に対する慢性炎症が誘導され、神経細胞が障害されて死滅してしまう。この自己抗体の存在が、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患の進行を加速させる重大な要因であることが分かっている。