第２章：免疫レジリエンスと自己抗体

〜脳の健康維持と神経変性疾患予防の分子基盤〜

免疫レジリエンスの概念と重要性

**免疫レジリエンス（Immune Resilience）**とは、免疫系が外的環境からのストレス要因（病原体、毒素、食品抗原など）に対して適切に反応し、その後迅速に恒常性を回復する能力を指します。この能力は遺伝的要素のみならず、ライフスタイルやエクスポゾーム（環境曝露因子の総体）に強く影響され、長期的な健康と疾患予防において重要な役割を果たします。

免疫レジリエンスが低下すると、自己免疫疾患や慢性炎症のリスクが高まり、神経変性疾患の発症を促進する可能性があります。

自己抗体の神経変性疾患への関与

自己抗体とは、本来異物から身を守るために存在する免疫機構が、自身の組織を誤認して攻撃する抗体です。特に脳組織に対する自己抗体は神経炎症を引き起こし、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患の病態を進行させる可能性があります。

• 脳内に存在するタンパク質（例：アミロイドβ、タウタンパク）に対する自己抗体が産生されると、ニューロンの機能障害や神経細胞の死滅が引き起こされます。

• これらのプロセスは自己免疫疾患に類似した病理機序で進行することが示唆されています。

食品抗原による免疫交差反応

食品抗原（例：グルテン、乳製品、レクチンなど）が体内で十分に消化されず、抗原として免疫系に認識されると、脳組織と交差反応を起こす抗体が産生される場合があります。この現象を免疫交差反応（Cross-Reactivity）と呼びます。

• 食生活を見直し、これらの食品を避けることによって自己抗体の生成リスクを減少させ、認知機能低下を予防する可能性があります

脳機能改善のための統合的介入（by DR.iSHiGURO）

① 行動変容の促進（Choice）

患者やその家族が望む生活や価値観に基づいて選択したアプローチは、持続可能性が高く、治療の遵守や効果の維持につながります。

② 環境・生活習慣の最適化（Change）

• 食生活の改善（抗炎症食、腸内環境の最適化）

• 有害化学物質（重金属、環境汚染物質など）への曝露低減

• 必要に応じた薬物療法の活用

③ 日常的なケアの実践（Care）

• 睡眠の質の向上（アミロイドβの排泄促進）

• 口腔衛生や皮膚の健康維持（慢性炎症を予防）

認知症予防における修正可能なリスク要因（Lancet報告）

『Lancet』誌が示した認知症の予防可能な12のリスク要因は以下の通りです。

• 高血圧、肥満、糖尿病、過度な飲酒、喫煙、うつ病、社会的孤立、身体的不活動、難聴、大気汚染、低学歴、頭部外傷

これらのリスク要因は免疫系を弱体化し、慢性炎症、血管障害、神経変性の進行に寄与します。予防策を講じることが認知症の発症リスクを有意に軽減できることが研究で示されています。

Lancet誌 Dementia prevention, intervention, and care (2020)

アルツハイマーズリンクス（ALX）検査の臨床的意義

**アルツハイマーズリンクス検査（ALX）**は、脳関連タンパク質やそれらと交差反応を起こす可能性のある食品抗原・環境抗原に対する自己抗体を網羅的に評価し、個人の免疫レジリエンスおよび免疫トレランスを総合的に解析する画期的な検査手法です。

• ALX検査結果を元に、リスク因子を特定し、それぞれの患者に適した個別化された予防的介入を実践することが可能です。

＜結論＞

免疫レジリエンス強化による認知症予防と健康長寿の実現

免疫レジリエンスの強化を目的とした包括的かつ個別化された介入により、自己抗体の産生抑制、神経変性疾患の進行予防、そして最終的には健康寿命の延伸が可能となります。

👉脳の健康維持は免疫系の管理から始まることを明確に示し、このアプローチを未来の予防医療戦略として積極的に推進すべきです。