フロアマネージャー(GM向け情報)

このゲームはコンセプトとして、「TRPGで挫折したことがある人、TRPGの腕が伸び悩む人、TRPGを知ってはいるが遊んだことのない人、クトゥルフ神話TRPGではあまりやらないプレーを容赦なく遊びたい人」を対象にゲームデザインしています。ですから、TRPGって何? という人はこのゲームの想定客から外れ気味です。念のため解説は冒頭でしていますが、ぜひ、インターネットなどで調べるところから始めてみてください。

ゲーム作りをする誰もがそうだと思いますが、ゲーム作りでは想定客にとって良いゲームを目指します。上記の顧客にとっての良いゲームとは、「クトゥルフゲームとプレー感覚を同じにしながら、挫折・伸び悩みの原因がわかって、もう一度やってみるかと改めて思えるようなゲーム」です。

これを目指して本ゲームでは、以下のような施策を行っています。


1.進行管理の問題

多くの人が抱える問題として、杓子定規に、淡々と進行してしまう、というプレーミスがあります。これは、ルールを教条として一辺倒にルールを適用しようとするのを原因としています。TRPGに限りませんが、ゲームプレーとはマラソンのようなもので、ペース配分(ここではルールを端折って急がせる、とか、ここではシビアにルールを適用して緊張感を持たせる、とかです)が大事です。

これをフォローするため、本ゲームでは時間制限と傾斜式行動手番制度を設けました。

まず、プレイヤーを「主人公役と、そのサポート役の役柄」として再定義しています。そのうえで、制限時間を背景に、主人公の行動には巻き進行を、サポート役の行動には思考プレーを要求しています。


2.ワンパターンの問題

人間は同じことばかりやっているとそのうち飽きる性質があります。「(同じゲーム性が続くと)飽きる」というのは、TRPG出版を商売として成立させるためのファクターではあります(飽きるから次のゲームシナリオやシステムを遊びたがる)。が、ゲームの最適解が1つしかない場合や、プレイヤーがラクすぎる場合は、往々にしてワンパターン展開となり、商品寿命が短くなります。

これに対応する施策として、商用ゲームでは通常扱わない内容をゲーム化対象に選んで、いわゆるクトゥルフゲームの「探索者の、思いつくけど普通しないプレー」 --冒険の舞台に放火したり、謎の水晶球をペンキで塗りつぶしたり-- を使えるようにしています。

本ゲームで遊ぶプレイヤーのキャラクターはアンダーグラウンドの住人、つまり、悪所での商売を生業にしている人物たち、多くのヒーローゲームで悪役とされる人物です。そして、悪役といってもヴィラン(特殊な能力と背景設定(思想)を持った強大な悪役キャラクター)ではないので、プレイヤーはゲーム中、気楽に遊べるようになっています。普段やらない悪事をバンバンやりましょう。その過程で困った人や善良な人物を助けられたらいいですね。


3.プレー範囲の広げすぎ問題

実力を超えたところを望んで実践しても、面白くありません。学生時代、基礎を身につけていない状態で突然高等教育が始まって、以来学校教育が嫌いになってしまった経験はありませんか。ゲームも同じで、突然に高等プレーを目指しても全く面白くないです。

これに対応するため、本ゲームにおいては「閉鎖空間のストレス(鬱積)から脱出すること」にカタルシス(鬱積の浄化)を絞っています。これによりプレー範囲を一元化し、プレイヤーにとって難しいことを強要されないようにしています(難しいこととは例えば、美しいストーリーの構築、エモい演出や煮えたセリフと呼ばれるプレイングの応酬、重たいゲーム的処理などです……)難しいことは後日できればよいのですから。


なお、これら施策を投入した代償として本ゲームは「重厚なストーリーテリング」「リアル的な再現描写」「魅力的な悪役との丁々発止」「適切な難易度設定」については、かなり放棄しています。これら部分についてはルールを当てにせず、プレーの場におけるプレイヤーとのやり取りの中で得た肌感覚をもとに、遊んでください。