『太政官日誌』を対象にした史料学の構築と戊辰戦争期の社会文化論に関する学際的研究

研究概要

本サイトは、 平成22(2010)年度~平成24(2012)年度 科学研究費助成事業

(科学研究費補助金)研究成果報告書として、作成しています。

研究種目:基盤研究(C)(一般)

研究課題名(和文)

「『太政官日誌』を対象にした史料学の構築と戊辰戦争期の社会文化論に関する学際的研究」

研究課題名(英文)

Interdisciplinary research about Dajokan Nisshi, the Official Journal of Meiji Government :

the construction of its histographic and the studies on social process and culture in the

Boshin War term.

課題番号 22520699

研究代表者 藤實久美子・ノートルダム清心女子大学・文学部・准教授 (当時)


研究目的


本研究は、政治・社会の激動期である戊辰戦争期(慶応4=明治元〔1868〕年正月~明治2年5月)の

新政府系の出版物である『太政官日誌』に関する調査を通じて、当該期に大量に現出した木版刊行物に適合的な史料学を確立し、合わせて、当該期の社会文化の研究をおこなうことを目的とする。

維新政府系の出版物、いわゆる日誌類は官報前誌に位置づけられるものだが、日本近世・近代史研究の狭間にあって、研究が著しく立ち遅れている。ゆえに本研究では以下の4点を目的に定める。

①日本各地に散在する『太政官日誌』の所在状況の確認。

②モデル調査の実施と書誌情報の収集。

③史料学的な調査方法論の提示をおこなう。

④維新政府系の『太政官日誌』を通じて、諸情報が流通していくメカニズム及びその受容と影響に関する問題を解明して、当該期に特有な社会文化の展開とその過程について展望する。


研究実施計画と実績


平成22年度-平成23年度の研究計画

①『太政官日誌』の所在状況を把握する。

WEB上の各機関OPACおよび冊子型目録を参照して、日本各地に散在する『太政官日誌』の所在状況を可能な限り網羅的に調査する(研究開始時の2010年4月、『太政官日誌』を所蔵する145機関を確認)。

②各所蔵機関での同版・同版(修あり)・異版・異本状況精査を中心とした調査をおこなう。通巻を複数セット所蔵することから、書誌的な史料調査を効率的におこなうことができ、また伝来上の違いから流通過程・受容と影響を考えるときに好素材を与えてくれる史料群を選択してモデル調査を実施する。

③②の遂行を通じて、『太政官日誌』の史料学的な調査方法論を模索する。調査と議論を重ねて、『太政官日誌』用調査カードとマニュアルを確定させて、戊辰戦争期の史料学の構築を目指す。

④調査データを分析して、研究をおこなう。各領域の研究動向・意義を確認しながら、適宜、本研究に関わる学術的研究成果を積極的に公表していく。

⑤定例研究会 2回

日常の意見交換はメーリングでおこなうが、討論の場を設けて、研究の進捗をはかりたい。

第1回(夏季)研究実施計画の確認、調査方法の検討。実地調査対象機関及び分担の決定。

第2回(冬季)平成22年度実地調査結果の評価、平成23年度の実地調査対象機関及び分担の確定。


平成22年度の成果


4月~『太政官日誌』の所在状況調査をすすめた。

分担して、実地調査をできる機関におもむき、所在確認と史料の閲覧・複写条件、史料の状態、史料群の概要を把握した。並行して、『太政官日誌』調査カード」の修正、調査カードのデータ化と共有方法の設計を進めた。

8月、東京で研究会を開催し、モデル調査を実施した。モデル調査先は東京大学経済学部資料室。

9月、データ・フォームを決定して、入力作業に入り、1000データの入力をおこなった。

2月、名古屋でモデル調査を実施した。モデル調査先は愛知県立公文書館・愛知県図書館・名古屋市蓬左文庫。

3月、試

作としてのデータの第1次集計を終えた。

日常の意見交換はメーリングでおこなった。

計画の変更点は一つで、3月に開催予定であった研究会を、東日本大震災の発生のため、ネット上での研究会と意見交換に切り替えた。

研究会実施状況については、戊辰戦争期木版刊行物研究会ホームページの研究会実施記録2010をご覧ください。



平成23年度の成果


『太政官日誌』の所在調査を継続的にすすめ、これに基づいて、モデル調査・再調査を順次実施した。

並行して、調査カードからテキストデータを入力、データ集計の設計、集計と数値のデータのグラフ化をおこなった。

8月、東京で研究会を開催し、モデル調査を実施した。モデル調査先は国立公文書館内閣文庫。

8月~岡山大学附属図書館・中央大学図書館・東京大学経済学部資料室・東京大学総合図書館・東京大学史料編纂所・早稲田大学中央図書館などにおいて、分担して再調査を行った。

12月までに再調査終了後、順次、入力修正をおこなった。

11月~2月、第2次集計作業としてデータの集計と数値データのグラフ化、第3次集計作業としてテキスト入力データの数値化およびグラフ化をおこなった。

3月、大阪でモデル調査を実施した。モデル調査先は大阪市立中央図書館・大阪天満宮御文庫。

3月、東京で研究会を実施した。

日常の意見交換はメーリングでおこなった。

研究会実施状況については、戊辰戦争期木版刊行物研究会ホームページの研究会実施記録2011をご覧ください。


平成24年度の研究計画


①モデル調査の実施、データ作成・分析・研究については、従前の通りおこなう。

②研究の公表については、積極的に機会を設けていく。

・研究成果の共有化をはかるために、公開研究会の開催を企画する。

・研究報告書を冊子型の印刷物とはせずに、WEBページとして公開し、諸データが有機的に結びつくプレゼンテーションを試行する。


平成24年度の成果


4月~、データ分析・研究を本格的に着手した。

8月、東京でモデル調査の再調査を、国立公文書館内閣文庫・国立国会図書館において実施した。

再調査終了後、順次、入力データの修正を行い、データ分析をおこなった。

8月、東京で研究会を開き、研究の中間報告を行い、報告書の構成・執筆分担を決定した。また公開研究会の目的・日程・分担を決め、各自準備を進めた。

12月9日(日)13:30~17:30公開研究会を東京大学史料編纂所において開催した。報告者は3名で、会場の一部を使用して、複製写真および原史料による小展覧会を開いた。

12月中旬、「戊辰戦争期木版刊行物研究会」のWEBベージを公開し、公開研究会の様子、『太政官日誌』の同版・異版・異本調査の状況といった研究成果の共有化をはかった。

3月、メーリングで意見交換をしながら、研究報告書を作成した。

4月、WEBページの技術的な調整をおこなった。

5月、WEBページとして公開する。

研究会と公開研究会の実施状況については、戊辰戦争期木版刊行物研究会ホームページの研究会実施記録2012をご覧ください。


なお、本研究の趣旨を了承され、調査を許可され、本WEB報告書への写真掲載等を許された諸機関のご好意に、この場を借りて、深く感謝の意を表する次第である。


関連する学術研究

本WEB報告書に掲載していない、関連学術研究の実績については年度別成果物を参照のこと。


平成22年度~24年度の成果(総括)


研究対象は『太政官日誌』(慶応4年2月~明治2年12月・通巻304号)である。

(1)所在調査により日本国内322ヶ所の機関に所蔵されることが確認された。

(2)2種の書誌的な調査カードによって現地調査を実施し、現地調査報告書の作成全72件を行った。

(3)クラウドサービスのgoogle Documentにより10万件以上のデータベースの共同的構築と共有化をはかり、グラフ化し、同版(修あり)・異版の混入状況などを明確にした。

(4)戊辰戦争期の社会文化論の構築に向けて、『太政官日誌』の作成、交付、販売、修正という情報流通、読者・官庁文書のなかでの蓄積という受容の側面が解明された。


平成22年度~24年度の成果(総括・英文)


This research focused on 304 numbers of Dajokan Nisshi published in 1868-1870 :

(1) It has revealed that 322 organizations in Japan archive some or all numbers.

(2) The original two types cards were made for the bibliographic survey. Totally 72 survey reports were written on their conditions.

(3) The databases with more than 100,000 bibliographic data on the Google documents of crowd computing service have been constructed cooperatively and become common. They revealed some editions and the combination of their variations. The original research sheets and graphical documents are located in the web site of this research.

(4) Each research member has fulfilled to study about the social process and culture during the Boshin War ; the information flow through the issue and dissemination of the Dajokan Nisshi ; its readers and their activities ; the archived process as the official documents in the Meiji government.


交付決定額

(金額単位:円)


直接経費

間接経費

合 計

2010(平成22)年度

1,400,000

420,000

1,820,000

2011(平成23)年度

1,100,000

330,000

1,430,000

2012(平成24)年度

800,000

240,000

1,040,000

総 計

3,300,000

990,000

4,290,000


研究分野 人文学

科研費の分科・細目:史学、日本史・史料研究

キーワード:戊辰戦争期社会文化論・木版刊行物・『太政官日誌』・書誌データ・史料学

研究組織


研究代表者

藤實久美子 ノートルダム清心女子大学・文学部・准教授


研究分担者

箱石 大 東京大学・史料編纂所・准教授


連携研究者

松沢裕作 慶應義塾大学・経済学部・准教授


研究協力者


奈倉哲三 跡見学園女子大学・文学部・教授(当時)


石田七奈子 総合研究大学院大学・博士課程(当時)


清水詩織 早稲田大学大学院・教育学研究科・博士課程


寺島宏貴 東京大学大学院・総合文化研究科・博士課程 (当時)


山田英明 福島県文化財センター白川館・主任学芸員 (当時)


山口順子 オノーレ情報文化研究所