D研究所の建築
Works by D-Laboratory
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D研究所の建築その1 パッシブシステムを備えた建築 Passive Architecture
「竪穴の庭」を囲むパッシブハウスです。竪穴の庭は冬季はふんだんに差し込む日差しの熱を土間に蓄えて太陽暖房を。夏季は庇で日射遮蔽し、夜に風を通して土間を冷やして冷房します。この庭の周りに居間や寝室などが2層にわたって囲みます。静岡県磐田市,2025年竣工。
南側の大きな開口で冬の日差しを受け入れます。開口の上に大きく張り出した庇で夏の日射を遮蔽します。
竪穴の庭がパッシブシステムの要になります。北に高く伸びる塔には高窓があり、建物に風を通す力を高めてくれます。この高窓は真っ直ぐ北極星を指し示します。空や宇宙とつながる窓です。
日時計のあるパッシブハウスです。2階に大きな日時計が浮かび太陽の巡りと時を示します。日時計の南には冬の太陽暖房の要になる居間が、北には薄暗いながらも夏に冷気を蓄える土間が、2階の東西には寝室があります。太陽の巡りを知らせる日時計の東西南北に家族が好き好きに過ごす家です。奈良県生駒郡,2015年竣工。
母屋棟と、その東の倉庫棟が大屋根で一体化しています。母屋棟の真南側に大開口があり、冬季に太陽の熱を集めます。倉庫棟の地上部はテラスになって東側の眺望を楽しむことができます。
テラスから矢田丘陵と空を望みます。家の中で快適に過ごすだけでなく、家のたつ地域の風景と身体を浸透させて過ごせる、そんな家をめざしています。
奈良県生駒郡の信貴山麓に立地する葡萄棚ビニルハウスに寄り添うパッシブハウスの計画案です。葡萄棚ビニルハウスは斜面地の地形をそのまま活用した温室です。冬季にも太陽の熱をたくさん集めて、ハウス上部からは温風が吹き出します。このパッシブハウスは冬季にその温風を受け取って暖房します。まるで大地芸術のようなビニルハウスに寄り添って快適に過ごす家です。計画2019年〜2024年。
D研究所の建築その2 地を読解し、地を編む建築 Architecture adapted to Field Environment
タイとミャンマーの国境に立つ政府公認の児童教育施設「虹の学校」のシンボル学舎です。子どもたちの夢である「母なる大地につつまれる場所」「大空を自由に駆け巡る舟」、この二つをカタチにしました。下部は土嚢で作った土のドーム。上部は工事足場用の単管と竹、草屋根で作った大きな屋根の高床教室です。昼は40度近く外気温は上がりますが夜は15度まで下がります。土嚢ドームは夜の冷気を蓄えて、外気が40度の時も30度弱までしか上がらず、熱中症からも逃れることができます。熱帯地域のパッシブ建築としても機能しています。2013年に竣工。
タイのお昼は太陽がギラギラ照りつけてきて凶暴です。そんな時に皆が集まるのは屋根だけがあって風が吹き抜けるテラスです。方舟はそんな地域に愛される木かげな場所を、アレンジしました。土嚢のドームに囲まれて、上は2階の竹床が天井になります。土嚢ドームからは蓄えられた冷気がしみだしてきて、ここはとても涼しいです。お絵描きしたり、昼寝をしたり好きに過ごします。みんなこの広場が大好きです。
木や竹で作られた高床の家は、タイの伝統的な住まいです。方舟はこの住まいにならつつ、新しい形式を取り入れました。高床を土嚢のドームが支えます。高床は工事足場用の単管で組み立てます。軽やかに高床が浮かびます。床や壁は竹、屋根は厚い草葺き。これは伝統的なものです。新しい工法と伝統の工法を組み合わせて作った高床の教室。馴染み深くも新しい、そんな空間です。
ヨルダンは死海のほとり、南シューナ地区に立つコミュニティセンターです。現在、「絶滅危惧種」になりつつある当地伝統の石造建築と、現在主流の鉄筋コンクリート構造を組み合わせて適材適所の新しい形式の建築にしました。石造の厚い壁で断熱蓄熱をして、鉄筋コンクリート造で大きな開口を可能にしています。開口は二重窓にして断熱性を高めています。石の伝統的な空間に光がふんだんに差し込む、コミュニティセンターです。2010年に竣工。
秋田県角館の外町にたつ築120年の町家の移築保存と、その後背地に増築した離れによる町家の更新です。前面道路の拡幅に伴い、この道に面する町家は建て替えを余儀なくされましたが、この計画では町家を曳家することで保存しました。背後の狭い余地には、私的な自由空間を増設しています。景観形成に寄与する町家の継承と、新しい生活を謳歌する自由空間の結合です。曳家部分「渡邉家住宅」は、2011年に国の有形登録文化財に指定されました。
高知県香美市にある土地を対象に、周辺風景と呼応する庭とともにあるパッシブ園舎を計画しました。そばにある村の祖先が眠るお墓、大きな神様の木がある神社、遠くまで広がる平野への眺望、この3つの風景に呼応する庭と園舎空間を重ね合わせて計画しています。なお、冬季には直接熱取得太陽暖房を、夏季には躯体蓄冷自然冷房を導入しています。
D研究所の建築その3 祈りの空間 Prayer Space from Earth to Sky
高知県香美市土佐山田町の中後入集落の氏神さま、金峯神社の再建プロジェクトです。この集落は1960年代から過疎化が始まり、2010年次には、限界を超えて消滅寸前の集落になってしまいました。その過程で、金峯神社も激しく社殿が傷み、お祭りも長く開催されていませんでした。ただし、村に住んでいた方々は比較的近隣に移り住んでおられたので、神社の存続を強く願っておられました。資金、立地等の極めて厳しい状況の中、社殿を本殿と拝殿に分割して、小型化し、拝殿を里に移したことで人が集いやすくなり、お祭りも復活しました。江戸時代まで坐王権現を名乗っていたこの神社は修験の聖山御在所山をまっすぐ向いています。再建した社殿も、この向きを踏襲しました。
もともとの社殿は、山中にありました。ここは急峻な道を辿らねばならず、高齢の村人のみなさんが集まるのは困難です。そこで人がお祈りする場所である拝殿は、里の畑地に移しました。ここまでは、そんなに坂道もないので、みなさんが集まりやすい長閑な場所です。ここで長らく途絶えていたお祭りも開催されます。2016年に復活し、以後、毎年、開催されています。拝殿には御神体はなく、聖山御在所山を向く遥拝の社殿です。ちなみに本殿はもとの社地に鎮座しています。
里の拝殿、森の本殿ともに、セルフビルドで建築しました。高知工科大学渡辺菊眞研究室のメンバーによる建設です。構造を工事用足場の単管、屋根や床を杉の垂木と板とし、屋根防水にはポリカーボーネートを使用しました。単管とポリカはホームセンターで、材木は大工さんの紹介で材木屋さんで購入しました。資材搬送は手運び往復(1.5km)を何度も。どちらの社殿も、のべ10名、2週間ほどで作り上げました。
新潟市 水と土の芸術祭2012にて招待作家として制作した建築です。日本海側最大の都市である新潟市ですが、元々は一面の湿地であり、土と水との飽くなき格闘の末に生まれた大都市です。その根っこの記憶を思い返すための神社です。都市は日々姿を変えて、私たちがどこにいるかさえわかりません。そんな記憶喪失の町に対して、根元の風景を投げ込みました。本殿は床は土、真上に丸い穴のあく土嚢ドームです。空と地を垂直に結ぶ場で、根源を憶う神社です。
金沢21世紀美術館展示「内蔵感覚」にて招待作家として制作したインスタレーションです。ナンセンスの絵本作家、長新太の絵本展示とリーデングスペースを兼ねます。絵本展示の白い丸壁を聖地と設定し、そこにL型の朱の参道をあしらいました。これは伏見稲荷大社の千本鳥居をモチーフにしています。
高知市の寺院境内にたつ、実験建築としてのお堂かつ庵です。土嚢壁の下部に工事用足場の単管で組んだ大屋根がかかります。お堂としては阿弥陀堂で夕日(西方浄土)を拝みます。ここにテントを張ると僧侶の庵になります。事実、半年間、修行僧がここに起居しました。今後は温熱環境を測定し、改変を重ねていく予定です。祈りの建築と居住の重なりの可能性を見出していきます。