竹下文雄・豊田賢治
多くの動物と同じように、甲殻類もまた長い進化的時間の中でそれぞれの環境に適した行動や形態、生活史を獲得してきた。環境要因の中でも、特に同種や他種の個体との相互作用は、その生態や生活史を理解する上で特に欠かせない淘汰圧と言える。これまでの甲殻類を対象とした生態学研究が、同種・他種との相互作用を考慮してこなかったわけではないものの、近年の研究は、こうした相互作用が私たちの想像していた以上に甲殻類の生態へ、より複雑に影響している可能性を示唆している。
本自由集会では4人の発表者が登壇し、各人が着目する甲殻類種における同種・他種との相互作用とそれに対する興味深い応答について紹介する。竹下はハクセンシオマネキの配偶行動における近隣個体の妨害と配偶様式の関係、為近はフジツボ類の性配分に種内関係と種間(寄生)関係が与える影響、吉川はヤドカリの深海適応におけるイソギンチャクとの種間相互作用、豊田はズワイガニ類の性成熟とそれに伴い発現する同種雄間の攻撃的な行動変容の創出機構について発表する。それぞれの研究事例をベースに、甲殻類の複雑な同種・他種との相互作用とそれに対する応答やそのメカニズムについて議論するとともに、こうした甲殻類種の複雑な相互作用の影響を発見・解釈する上で有用な手法・技術についても考察したい。
18:00 – 18:05
趣旨説明
竹下 文雄(北九自歴博館)
18:05 – 18:25
ハクセンシオマネキにおける複雑な社会性
竹下 文雄(北九自歴博館)
18:25 – 18:45
種内や種間の関係がフジツボの性配分に及ぼす影響
為近 昌美(北大院水産)
18:45 – 19:05
イソギンチャクとの共生によるヤドカリの深海適応
吉川 晟弘(国科博)
19:05 – 19:25
ズワイガニ類の雄間闘争の生理機構
豊田 賢治(広島大統合生命)
19:25 – 19:35
最後の質疑応答
19:35 – 19:40
まとめ
豊田 賢治(広島大統合生命)
*研究発表は質疑応答も含めて20分です。