北極は地球上で最も速い速度で温暖化が進行している場所です。温暖化が増幅される理由として、氷−アルベド(反射率)相互作用が最も重要視されています。氷河や海氷は白いため、太陽光を反射します。これらがなくなると、地面や海に太陽光が入り、熱が蓄えられます。その結果、次の季節に氷の形成が妨げられます。そしてさらに太陽光が入りやすくなり熱が蓄えられ、温暖化が増幅されます。
大気中の水蒸気や雲は、地球から出てくる放射を吸収し地面に向かって射出することで、地面を暖めます。つまり、海氷の生成に影響を与えます。一方、海氷があること自体も、大気に影響を与えます。海氷があると、海に蓋をする状況となるため、水蒸気や海の熱が大気に運ばれなくなるからです。
気候モデルの予測において、雲の作用はモデルにより大きく異なり、理解が不十分です。
本研究室では、特に、北極で観測される混合相層状雲の研究をしています。混合相とは、液体と個体の水粒子が共存している状態のことを指します。この雲の発生や持続する理由などを数値実験と観測を組み合わせて調査しています。
降水といえば梅雨や夏の強い雨を想像するかもしれません。中緯度では地上に降ってくる水粒子としては液体だとしても、上空では気温が0度以下になるため、固体つまり氷の状態で存在することが多いです。
気温が0度以上で発生する雲降水と比較すると、多くの物理過程を考慮しないといけません。氷粒子の形や密度、大きさが様々であること、また気温が-38 ℃までは過冷却状態の液体が存在すること、液体と固体の粒子が相互作用すること、雲内部の電荷の分離などです。地上で雪が降る場合に、特に雪の分布の予測が難しいのはこれらの理由によります。
研究室では、観測データと数値モデルを組み合わせて、降水現象の理解すること、予測向上のための要因の特定を目指しています。
雨粒が大気中でどのように形成されるかを想像したことがありますか? 雲と降水量の科学は、干ばつ時の水の必要性によって刺激され、その科学に基づいて天候を変える技術(人工降雨や雹の抑制)が開発されました。 気候変動により、降水量の分布、強さ、種類(雨または雪)が変化すると予想されます。 エアロゾル粒子から雨滴/雪に至る成長プロセスを理解することは、気候と天気の予測を改善するために重要です。
基本的な成長過程には、核形成、雲粒活性化、蒸着・凝縮と衝突・併合・分裂、融解が含まれます。 粒子の周囲の流れ場と粒子の物理的特性が成長速度を決定します。 私たちは数値的アプローチに基づいて成長を定量化することを目指し、粒子スケールの現象に興味を持っています。
雨音に基づく雨量計(音響計)は、雨量を計測するための機械的な部品が無いため、従来の雨量計に比べて単純です。 さらに、音自体が液滴サイズの分布に関する情報を持っています。 私たちの目標は、今後の極端な現象に備えて降水量をより適切に監視するために、地域全体に分散できる低コストの音響計を開発することです。