●とき:2023年11月25日(土)13:00~15:00
●ところ:豊川市音羽文化ホール(ウィンディアホール)大会議室
●とき:2023年11月25日(土)13:00~15:00
●ところ:豊川市音羽文化ホール(ウィンディアホール)大会議室
第1部ではまず、豊川市市民部文化振興課長の林弘之さんより、とよかわ文化芸術創造プランを行政と市民が一緒に作り上げることになった経緯と、今後の期待が語られました。
続いて、公演を担当したメンバーが順次、当時の様子を報告。語りにも熱が入り、当時の思い出がよみがえるひとときとなりました。
第2部のパネルディスカッションでは、4名のゲストの方々に、とよかわ舞台公演実行委員会「こりんぐ」のこれまでの活動と思い出について、お話しいただきました。
最初にお話しいただいたのは、元豊川市文化振興課職員の佐藤美子さん。佐藤さんはとよかわ舞台公演実行委員会 こりんぐの大元となる、文化振興プランの立ち上げにご尽力された方です。文化振興プランスタートのきっかけは、行政の職員はローテーションで異動があるという点でした。担当職員が変わってしまうと、せっかく積み上げたスキルが途絶えてしまうことを問題視しており、「誰が見ても同じような形で文化政策を進めていける、バイブルのようなものが必要」との考えから、文化振興プランを立ち上げたそうです。人が変わっても続けていける文化振興プラン作成のためには、行政の力だけでは不十分。市民と市職員、そして市の財政が一体となった文化振興プランを作ることが重要だと考え、現在の形になっていったとのことです。
「こりんぐ」が10年続いてきた理由の1つは、行政と実行委員会がそれぞれの弱みをカバーしてきた点にあると、佐藤さんは語ります。行政にはない、実行委員会のすばやい行動力や、情報収集力に助けられてきたそうです。「10年続いていることが本当に嬉しい。皆さんを誇らしく思います。」とのコメントをいただきました。
続いてお話しいただいたのは、愛知県芸術劇場の林健次郎さん。文化振興課主催の「公演をつくってみよう!」WSでは、計45回講師を務めていただきました。林さんは過去に、文化ボランティアの運営経験があったものの、市民と対等な立場で協働し、自律的・持続的な活動につなげていくことの難しさを感じていたと振り返ります。豊川市ではパワーアップした市民活動を目指し、あえて委員会参加のハードルを上げたそうです。「志の高い人に集まって欲しかった。WSの回数や頻度、課題の要求度はとても高かったと思います。」と、当時を振り返ります。
講師としては、主に舞台制作のノウハウについて研修。その際、他の研修講師が言わなさそうな次の2点について強調したそうです。1つ目は、市職員に大きく依存せず、分担して両輪で進むこと。2つ目は、税金を使うことの意味を考えること。また、企画内容については、財政的に持続可能となるよう、「①出演者はプロ」「②入場料は有料」と決めたそう。大事なのは、出演者のための発表型ではなく、来場者のための鑑賞型であること。また、「自分たちがやりたいことではなく、市民が求めていることをみんなで考えました。」とお話しいただきました。
続いてお話しいただいたのは、当時の知立市文化会館「パティオ池鯉鮒」の企画制作者として活動されていた、品川佳代さんです。品川さんには講師として、企画政策論の研修をご担当いただきました。10年前の講義に、やる気のある少数精鋭が集まっていたことが、この10年続いてきた秘訣ではないか、と語ります。実行委員が実際に色んなところへ足を運び、「この人たちだったら、お金を払ってでも観に来てくれる」という市民プロデューサー感覚で出演者を選んでいる点に感心したそうです。また、研修では、記録に残しておくことの大切さを伝えたそうです。記録があることで、次世代へのバトンタッチができる。これを守ってくれたからこそ、10年続いたのだと思う、とコメントがありました。
最後にお話しいただいたのは、愛知大学の教員・吉野さつきさん。大学ではアートマネジメントなどについて教鞭を取っています。また、「門限ズ」のメンバーでもあり、昨年のまちなかパフォーマンス企画「あっちこっちde門前ズ」にも参加されました。吉野さんは出演オファーを貰った立場として、第1部での活動振り返りを聞き、「この10年の厚みがあったからこそ、『門前ズ』ができたんだな」と思ったそうです。「あっちこっちde門前ズ」開催の折、トラブルに見舞われた際の、実行委員会の臨機応変さに驚いたのだとか。あの時の実行委員会の意思疎通力と察しのよさは、10年間の経験値だったのかと感心していました。
また「観に行きたいけれど、行けないという人にも来てほしい、ある種の欲が、ホールを飛び出して街中で、しかも観るだけでなく一緒に作るというところまで来てしまった。これはもうプロがやっていること。」と、吉野さん。豊川市のような規模の市の市民活動で、ここまでの人材が育っていることは全国的にも珍しく、凄いことだ、と評価をいただきました。
ここまでのゲストの皆さんの発言を受け、ここからはフリートークとなりました。
元行政の立場から、「この組織を維持するために、この先もボランティアに頼るのはどうなのか」と語ったのは、佐藤さん。文化コーディネーターを雇うのか、組織の中から発生させるのか、どちらにせよ行政がどのように支えていくかが大事だと話していただきました。
続いて、10以上の自治体で文化振興プランの策定に関わったという林さん。「この実行委員会と文化まちづくり委員会とは、実質的にアーツカウンシルの機能を果たしている。この仕組みを10年以上前に考えた豊川市は凄い。」と林さん。ただ、市民ボランティアでは現状が限界であり、行政との両輪という仕組みをさらに強化する必要があるのでは?とのことでした。
吉野さんは「自分が楽しい、面白いと思うから人にも勧められる、アートマネジメントの原点を感じた」そうです。「市民の中から専門家が生まれ、後輩を育成できることは素晴らしいこと。ここから全国で教える人が出てきてもおかしくない。活かさないのはもったいないですよ!」と話しました。
吉野さんのコメントを受け、佐藤さんは「芸術は、お金があって暇な人の贅沢品だという位置づけだったものから、現在は人生に不可欠なものという価値観に変化した。文化芸術は、孤独に陥りがちな人たちを社会と繋げる役割を担える。」と語りました。
最後に、司会を務めた「こりんぐ」メンバーの平松より、「今日お話しいただいたような課題があるということは、まだ進化できる、続けられるということ。こりんぐや文化振興全体にもっといい影響があるといいなと思います。」とコメントがあり、報告会が締めくくられました。ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。