奥田 昇(神戸大学・教授)
演題:流域ガバナンスのすすめ:地域に寄り添う生物多様性の保全
要旨:生物多様性保全の現場では、しばしば研究者の想いが空回りして保全活動がうまくいなかいことがある。演者は、地域の課題と流域の環境問題をともに解決する流域ガバナンスに携わってきた。地域に寄り添い、身近な生きものを守る活動の輪を広げることで流域環境や生物多様性が回復に向かうこと、さらに、このような成果を流域社会の多様な主体と共有することで地域による主体的・持続的な活動が促されるという琵琶湖流域の事例を紹介する。
西川 潮(金沢大学・准教授)
演題:持続型生物共生農業の構築への挑戦
要旨:日本では、劣化した水田生態系および衰退した地域経済の再生のため、水稲を中心として、生物共生農業の取り組みが進められている。その取り組みが生物多様性に与える影響については、一定の知見が蓄積され、農業政策の立案・検討に重要な基礎資料を提供してきた。しかし、水田地帯の自然再生のプラクティショナーは農家であるため、生物多様性保全と米生産の双方の視点に基づく農法の技術開発や、生物共生農業の実践・継続のためのインセンティブ設計も重要となる。本講演では、これまでの研究成果を交えながら、持続型生物共生農業を構築するうえでの今後の課題について述べる。
新田将之(愛媛大学・准教授)
演題:農村水辺空間の整備・利用管理活動に「保全」をどう埋めこむか?
要旨:約14万ある日本の農業集落では、慣行的ルールに基づき地域環境の利用管理が行われている。しかし、2045年には約1万の集落が存続危惧となる等、人口減少に伴う過少利用とコミュニティの脆弱化が新たな驚異となっている。こうした状況下、生物多様性保全は地域活動にどう埋め込むことができるのか?本講演では、地域住民による水路等の利用管理の実態を報告し、人間活動の視点から地域環境の利用管理の課題について考えたい。
片山 直樹(農研機構・主任研究員)
演題:農地生態系における生物多様性保全のエビデンス
要旨:日本の水田生態系においては、生物多様性に配慮した多様な取り組み(有機栽培、特別栽培、冬期湛水など)が実施されてきた。これらの取り組みの有効性については、全国各地で検証が進められている。本講演では、これまでに得られた知見を網羅的に収集・整理するために実施したシステマティックレビューの手法および結果を紹介する。さらに、全国規模で行われた水田の生物多様性調査の成果についても報告する。
菅村 定昌(コウノトリ市民研究所)
演題:「豊岡の自然を守るために」
要旨:NPO法人コウノトリ市民研究所は「自然環境に関心のある者に対して、生物調査・環境の保全と再生・ 環境教育に関する事業を行い、コウノトリの野生復帰が可能な自然と共生する社会作りに寄与する」という目的を持って活動している。また、そのメンバーは、各人が得意とする分野や場所で生き物たちの記録・保全・再生を行っている。私は但馬地方を主たるフィールドにしているが、講演では豊岡市で行っている活動の一端を紹介する。植生保護柵「ノアの方舟」の調査・点検、神鍋山の山焼きの復活支援、保護上重要な植物の種子の採取と専門機関への送付、保護上重要な植物の域外保全、外来種駆除など。
佐竹 節夫(日本コウノトリの会・代表)
演題:「コウノトリを里に迎える意味」
要旨:田んぼを主要な餌場としていた日本のコウノトリは、明治期に農業振興を阻害する害鳥として農村から追い出され、姿を消した。そんな中で、唯一豊岡で生息できたのはなぜなのか。その豊岡でも高度経済成長期に消滅せざるを得なかった理由、これは簡単明瞭だ。にもかかわらず、今日、野生復帰した彼らは不安な顔で歯ぎしりしている。「このままでは我々だけでなく、農村社会が消滅するぞ。カギは持っているのに」と。