折紙の設計手法を応用した膜テンセグリティ

折紙の設計手法を応用した膜テンセグリティ
下田悠太、林盛 2023
Membrane Tensegrity Applying Origami Design Techniques
Yuta Shimoda, Sei Hayashi 2023

協働:淡路広喜、中村太一、上條陽斗、権藤智之、舘知宏、佐藤淳、須藤海

「膜テンセグリティ」とは膜を引張要素、線材を圧縮要素として接続することで成立するテンセグリティ構造の一種です。張力をかけた膜に線材を固定し、張力を開放すると自然と立体が立ち上がります。「平面の布を立ち上げる」膜テンセグリティの設計法は確立されていませんでしたが、「平面の紙を折る」折紙のデザイン手法を取り入れたことで、様々な自由曲面を作れるようになりました。具体的には、舘によるソフトウェア「FreeformOrigami」を用いて任意のポリゴンメッシュを可展な折紙に変換し、その折線の一部を線材(圧縮要素)に変換しています。作りたい形を先に与えるとそれを作るための展開図(圧縮材の配置図)が生成される「逆問題」を解くことができるようになりました[Shimoda et al. 2023]下田悠太

折紙とテンセグリティの幾何学的な関連は、テンセグリティの発明者であるKenneth Snelsonによって指摘されています[Snelson]。具体的には、折紙が微少変形できるとき、その山折り・谷折りの折り角の回転角速度を圧縮・引っ張り力に変換すると釣り合いの状態になるという関係です[Tachi 2012]。ただしどのような折紙もテンセグリティになるわけではなく、どのような折紙がテンセグリティになるのかは未解決の問題です。— 舘知宏

Kenneth Sneleson  http://kennethsnelson.net/tensegrity/14-triangulated-tension-networks-cont/Tomohiro Tachi, (2012) "Design of Infinitesimally and Finitely Flexible Origami Based on Reciprocal Figures", Journal for Geometry and Graphics, 16(2), 223--234Yuta Shimoda, Sei Hayashi, Horoki Awaji, Taichi Nakamura, Haruto Kamijo, Tomoyuki Gondo, Tomohiro Tachi, Jun Sato, (2023) Construction of Developable Freeform Membrane Tensegrity Structures, in Proceedings of IASS Annual SymposiumYuta Shimoda, Kai Suto, Sei Hayashi, Tomoyuki Gondo, Tomohiro Tachi (2023) "Developable Membrane Tensegrity Structures Based on Origami Tessellation", Advances in Architectural Geometry 2023協力:太陽工業株式会社

自由形状の膜テンセグリティパビリオン
下田悠太、林盛、淡路広喜、中村太一、上條陽斗、権藤智之、舘知宏、佐藤淳2023
Freeform Membrane Tensegrity Pavilion
Yuta Shimoda, Sei Hayashi, Koki Awaji, Taichi Nakamura, Haruto Kamijo, Tomoyuki Gondo, Tomohiro Tachi, Jun Sato 2023

膜テンセグリティ構造の実現可能性を確かめるため実大で試行建設を行いました。本構造は平面の膜にロッドを挿入することで順次張力を導入して曲面を形成していくことで複雑な立体構造物が建設できるため、製造工程上の利点があります。単一の平面膜をガイドとして未熟練者でも容易に構築する方法で自由形状テンセグリティ構造を実現させました。

膜材は屋外でも使用でき伸縮性のある素材である太陽工業の「シェードアズール」を使用しています。この膜材は縦方向と横方向の強度や引張に対する伸びの性能が均一です。ロッドは軽くて剛性の高いCFRP(炭素繊維補強プラスチック)を用いています。ロッドの集まる箇所には3Dプリンタで制作した柔軟性のある熱可塑性ポリウレタン(TPU)製のジョイントで接合し、膜とはワイヤーで固定しピン接合を実現しました。

下田悠太

協力:太陽工業株式会社

 

膜テンセグリティ構造の生成プロセス
下田悠太、舘知宏 2023
Process of Generate Membrane Tensegrity Structure
Yuta Shimoda, Tomohiro Tachi 2023

本提案では作りたい形を先に与えるとそれを作るための展開図が生成される「逆問題」を解くことができますが、その生成の流れは以下のようになります。

1.ターゲットの曲モデルを多体メッシュとして作成する。

2. 舘が開発したアルゴリズムを適して、曲の多体メッシュから折紙テセレーション(Generalized Ron-Resh Pattern)を作成する。

3. 1,2によって得られたメッシュの折り線を圧縮部材に、それ以外の折り線を引張部材に置換し膜テンセグリティ構造とする。

下田悠太


photo:Choku KIMURA