コモンズ研究会
2018年度 第二回関西コモンズ研究会
2018年7月21日の13時より18時まで、コモンズ研究会関西支部研究会が開催されました。
猛暑にも関わらず、報告者を含め、6名の参加を賜りました。
報告者および報告内容は以下の通りでした。
・岩田健吾(京都大学大学院地球環境学堂)
「修士論文報告と、博士からの研究構想」
・白石智宙(京都大学経済学研究科)
「Relation between inhabitant and newcomer toward endogenous development - The case of Nishiawakura Village of Okayama Prefecture.(内発的発展に向けた地元住民と移住者の関わり―岡山県西粟倉村を事例として)」
・峰尾恵人(京都大学大学院農学研究科)
「林業経済学の総括と「新しい林政学」の構想」
・白石智宙(京都大学経済学研究科)
「島根県隠岐郡海士町のケースリサーチレポート」
いずれの報告も活発に質疑応答および意見交換がなされました。各報告の内容はおおよそ次の通りです。
岩田健吾氏による報告は、CVMおよび選択型実験を用いて、滋賀県の森林が有する森林生態系サービスの経済評価を支払意志額の推定によって行い、森林生態系サービスからの市民の受益の「距離減衰効果」の有無を確認し、森林生態系サービスに純粋公共財としての役割が期待されている可能性を明らかにしました。質疑応答からは、森林のレクリエーション効果を含めた更なる調査の必要性や、全国レベルでの調査の必要性、森林の所在として県庁を代理としていることの限界等が指摘され、意見交換では現行の森林環境税の望ましいあり方等が議論されました。
続く白石智宙氏による報告は、岡山県西粟倉村を事例として、従来の地域資源管理のあり方が人口減少期におけるものとして被る影響とその変化について、特に増加する移住者と地元住民との関係のあり方に焦点を当てて考察を行いました。その考察は内発的発展論に立脚したものでしたが、質疑応答からは、移住者と地元住民との区別の基準や、“集落”所有から自治会所有に改変した入会林の管理の実態等について指摘がなされ、意見交換では内発的発展論に求められている“新しさ”について議論がなされました。
また峰尾恵人氏による報告は、明治時代に遡り、個人による創始的な研究から「林業経済学会」という学術組織を中心とした「林業経済学」の研究が現在へと至るまでの経緯を総括し、新しい学問領域の枠組みが求められていることを指摘した。そこから横断的学際分野として「新しい林政学」を提起し、その実現のための学術組織の変革と展望を提言した。質疑応答からは、「新しい林政学」に係わる国際学会や既存の学問分野との関係等について指摘があり、意見交換ではこれまでの「林業経済学」の総括における時期区分等について議論がなされました。
最後に、白石智宙氏によるケースリサーチレポートでは、島根県海士町の取り組みのうち、地域産業創出への取り組み、および「高校魅力化プロジェクト」を中心とした教育への取り組みが報告された。当該地域は、地域づくりの先進事例として多くの事例報告および研究がなされており、本報告はそれら先行研究の成果をまとめたものであった。質疑応答からは、現在の海士町が抱えている課題、移住者増加に伴う地元住民のコミュニティの変容、海士町が成果を生み出すことができた要因等について指摘がなされました。
本研究会の報告は以上となります。
2018年度 第一回関西コモンズ研究会
2/17(土)京都大学 吉田キャンパス にて (主催:竹内)
発表内容
①Yamin Bayazid(長崎大学)
"The evolution of a floodplain aquaculture management system in Bangladesh"
②嶋田大作(福岡女子大学)
「先進国型コモンズの環境保全機能を維持・再生するための分析枠組み―ノルウェーでの国際共同研究に向けて―」
③西條辰義(総合地球環境学研究所、高知工科大学)
「フューチャー・デザイン」
④白石智宙(京都大学経済学研究科)
「農山村における地域内経済循環の理論と実際-岡山県西粟倉村を事例に」
⑤竹内亮(京都大学経済学研究科)
「コミュニティ形成の場としての里山保全ー同志社大学の事例からー」