臨床行動分析研究会
Association for Clinical Behavior Analysis
本のご紹介
Single-Case Research Design: Methods for Clinical and Applied Settings.
Alan E. Kazdin
2010, Oxford University Press.
シングルケースデザイン(単一事例実験デザイン)の教科書と言える一冊。顕在行動の測定方法についての解説や、反転デザイン・多層ベースラインデザイン・操作交替デザイン・基準変更デザインといった代表的なデザインの解説、さらには日常的な臨床場面でも活用のしやすい準シングルケースデザイン(Quasi Single-Case experimental Designs)の解説も含まれている。準シングルケースデザインを活用する場合、測定方法やデザインの設計において、どのような工夫を行えば効果の検証が可能となるかについても解説されてあり、実践家が臨床場面でシングルケースデザインを柔軟に活用するために役立つ一冊である。
言語と行動の心理学:行動分析学をまなぶ
谷晋二(編著)
2020, 金剛出版
スキナーの言語行動から、関係フレーム理論、機能的文脈主義、そしてアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)に至るまで、現代の行動分析学における「言語と行動」がわかりやすくまとめられている。抑うつや不安に対して比喩を巧みに使ったACTの症例や、「言語的な自己」の概念に対する関係フレーム理論からの解説など、非常に興味深い内容が含まれており、臨床場面における「ことば」に対する新たな視点をもたらす一冊である。
一事例の実験デザイン:ケーススタディの基本と応用
D. H. バーロー&M.ハーセン(著)高木俊一郎・佐久間徹(監訳)
1997, 二瓶社
クライエントは本当に改善しているのだろうか?それは介入による効果なのだろうか?改善は安定しているのか、それとも不安定なのか?
実践家にとって、介入の効果を検討するために欠かせないのが、シングルケースデザイン(単一事例実験デザイン)。本書では、なぜシングルケースデザインが必要なのか、どのように組むことができるのか、データの変化をどのように判断したら良いのかなど、シングルケースデザインの基本が様々な事例をもとにわかりやすく解説されてある。「科学者ー実践家」にとって必読の一冊。
Metaphor in Practice: A Professional's Guide to Using the Science of Language in Psychotherapy.
Niklas Törneke
2017, Context press.
アクセプタンス&コミットメント・セラピーといった臨床行動分析において強調されるメタファー(比喩)について、関係フレーム理論から見た仕組みや、臨床場面での活用について解説されている。機能的アセスメントのためのメタファーの活用や、行動変容のためのメタファーの活用、効果的なメタファーをつくるための3つの方略など、メタファーを巧みに使いこなしたい臨床家にとって、とても興味深い内容となっている。
関係フレーム理論(RFT)をまなぶ
ニコラス・トールネケ(著)山本淳一(監修)武藤崇・熊野宏昭(監訳)
2013, 星和書店.
アクセプタンス&コミットメント・セラピーの基礎理論であり、人間の言語や認知に関する現代の行動分析的な説明である関係フレーム理論(RFT)について、丁寧に、わかりやすく解説されている。「結果に注目しながら文脈を変える」「先行事象に注目しながら文脈を変える」など、関係フレーム理論を臨床場面のアセスメントや介入でどのように活用するのかについて記述してあり、臨床行動分析の仕組みを理解し、実践に繋ぐために欠かせない一冊。
Behavioral Case Formulation and Intervention: A Functional Analytic Approach.
Peter Sturmey
2008, Wiley.
行動的アセスメントを基礎理論からしっかり学ぶことのできる本。オペラント条件づけの基本からルール支配行動や関係フレーム理論、行動的ケースフォーミュレーション、行動測定の方法や次元の選択、面接でのアセスメントの流れまで広く解説されている。基礎理論だけでなく、その臨床的示唆まで記述されてあり、臨床場面で行動分析学を活用したい実践家におススメの一冊。
Mastering the Clinical Conversation: Language As Intervention.
Matthieu Villatte, Jenifer L. Villatte, Steven C. Hayes
2015, Guilford Publication.
関係フレーム理論を、セラピー場面におけるクライエントとの言葉のやり取りにとのように適用するのかに関して、理論的な面と実践面から詳しく書かれた一冊です。
「言語的な一貫性(Coherence)がどのように行動に影響を及ぼすのか」、「関係フレーム理論では、自己の概念をどのように理解するのか」「「セラピーではそれをどのように扱ったらいいのか」などについて、豊富な例を交えてくわしく書かれてあり、とても興味深い内容です。クライエントとの言葉のやり取りの技術を高めるためにも役立つ一冊。
応用行動分析学
ジョン・O・クーパー,ティモシー・E・ヘロン,ウィリアム・L・ヒューワード(著)中野良顯(訳)
2013, 明石書店
言わずと知れた、応用行動分析の教科書。ホワイトブックと呼ばれることもあります。
電話帳サイズでボリュームはありますが、応用行動分析における哲学から、標的行動の選択、行動の測定、行動測定の質の向上、実験デザイン、動機づけ操作、行動機能査定、随伴性契約など、理論から実践までとても詳しく、わかりやすく書かれてあります。行動分析の基本を網羅したい方には必携の本です。
Clinical Behavior Analysis.
Michael J. Dougher(Eds)
2000, Context Press
行動分析学の基本から、機能的ケースフォーミュレーション、関係フレーム理論、そしてうつ病や夫婦間の問題、虐待等に対する臨床行動分析に基づいた介入など、臨床行動分析の理論から実践まで広く書かれており、行動分析学を臨床場面で活用する際に役立つ一冊。
臨床行動分析が、応用行動分析からどのように展開されてきたのかがよく理解できる。
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)第2版 ーマインドフルな変化のためのプロセスと実践-
ヘイズ, ストローサル, ウィルソン(著)武藤, 三田村, 大月(監訳)
2014, 星和書店
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)の基盤の哲学である機能的文脈主義から、言語行動や実践的なACTのテクニックまで幅広く解説されてあり、ACTの教科書と言える一冊。
また、この本の第5章では『ACTにおけるセラピー関係』について書かれてあり、「セラピー場面でセラピストはどのような文脈を追跡すべきか」、「セラピー場面でセラピスト自身が心理的に柔軟でいるとはどういうことか」、「クライエントと力強いセラピー関係を築くにはどうしたらいいのか」といった点について詳しく解説されている。セラピストが臨床的に柔軟な視点を獲得するためにも役立つ内容となっている。
The Social Validity Manual: A Guide to Subjective Evaluation of Behavior Interventions.
Satcy L., Carter & John J. Wheeler
2010, Academic Press.
実践場面における「クライエントにとって、妥当な介入目標って何なんだろう?」「どの行動が改善することが優先されるのだろう?」「QOLを高めるには、具体的にどのような視点が重要なのだろう?」といった疑問に対して、社会的妥当性の視点から答えを導き出すヒントになるのが、このSocial Validity Manual。
介入目標や標的行動の設定に限らず、介入の効果が社会的に重要なものとなるための工夫など、実践家にとって重要な視点が詰まった一冊。
心理療法と行動分析-行動科学的面接の技法-
ピーター・スターミー (著) 高山巌(監訳)
2001, 金剛出版
原題はFunctional Analysis in Clinical Psychology(臨床心理学における機能分析)。機能分析の基礎から,面接場面における機能分析の使用方法,そして記述や評価の仕方までを網羅している良書。
出版されて17年が経っているが,内容は少しも色あせておらず,むしろ読むたびに基礎が復習でき,再認識,再発見が得られる臨床家が多いのではないかと考えられる。
ただし,絶版なので手に入れ辛いのが痛いところ(復刊を望む)。
Mindfulness for Two: An Acceptance and Commitment Therapy Approach to Mincfulness in Psychotherapy.
Kelly G. Wilson & Troy Dufrene
2009, New Harbinger Publications.
本書のタイトルにある"Two"とは、セラピストとクライエントのことを指している。本書では、セラピストがクライエントとやりとりを行う面接場面において、『今自分がどのような文脈をつくりだしているのか』に気づいたり、その文脈を変えていくために役立つ視点について、ユーモアを交えて多数書かれてある。
この本では、面接場面の文脈をさまざまなメタファーを通して解説されてあり、理解しやすく、臨床に取り入れやすい。面接場面における文脈をマインドフルに知覚し、文脈を変えていくために役立つ一冊。
ACTハンドブック : 臨床行動分析によるマインドフルなアプローチ
武藤 崇(編)
2011, 星和書店
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)を、その基礎となっている行動分析学の視点から学ぶことができる。特に本書では、言語行動に関する章が複数設けられており、ルール支配行動や関係フレーム理論について詳しく解説されてあり、ACTの基礎理論を学ぶためにとても役立つ本である。また、マインドフルネス認知療法、森田療法、フォーカシングなど、様々な視点から見たACTについても説明している。ACTを骨格から理解できる優れた一冊。
臨床行動分析のABC
ユーナス・ランメロ & ニコラス・トールネケ(著)松見淳子(監修) 武藤崇, 米山直樹(監訳)
2009, 日本評論社
臨床行動分析の基本的な原理を学ぶことができる入門書。レスポンデント条件づけ、オペラント条件づけ、関係フレーム理論といった基礎理論について、それぞれ丁寧に解説されてあるだけでなく、文脈の視点から、クライエントの問題をどのようにアセスメントをするのか、文脈をどのように記述し、理解するのか、といったことも詳しく解説されている。臨床行動分析の教科書としておすすめの一冊です。
はじめてまなぶ行動療法
三田村 仰
2017, 金剛出版
臨床行動分析における哲学・基礎・実践の3つの側面について幅広く書かれてあり、臨床行動分析の教科書と言える一冊。オペラント条件づけ、レスポンデント条件づけ、関係フレーム理論などの基礎的な内容の他にも、機能的ケースフォーミュレーション、アクセプタンス&コミットメント・セラピー、機能分析心理療法と動機づけ面接、セラピー関係と言葉の技術、効果的なエクスポージャーの実施上のポイントなど、実践的な内容も多く含まれている。
全体を通して、基礎的な内容と実践的な内容がわかりやすくリンクされていて、「この基礎的な内容が、実践にどのように役立つのか」、「この実践的な内容は、どのような仕組みになっているのか」などについても、読者が理解しやすい構成になっている。