九州大学 大学院芸術工学研究院 デザイン人間科学部門
シアノの時計はわかってしまったのだろうか
あなたがある朝起きたらシアノバクテリアの時計研究者になっていた、としましょう。その日から一体あなたは何を研究をするでしょうか?
シアノの時計そのものは2005年に再構成されていて、3つのKaiタンパク質が生み出しているということがはっきりしています。Kaiへの入力系出力系もある程度クリアにわかっています。細胞間で時刻情報もやりとりしていませんので細胞間相互作用を考える余地もありません。ましてやシアノが寝たり肥満になったりもしませんので、臨床研究には遠そうです。
もう何も研究することなんかないんじゃないか、なんて思う人がいるかもしれません。でも幸い私はシアノの時計には謎がまだたくさんあるように心から感じており、その気持ちは第一回世話人であった10年前から少しも変わっていません。
この講演では、私の最近関心がある問―どうやって時計ができたのか?について参加者のみなさんと考えてみたいと思います。
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九州大学 大学院薬学研究院 薬剤学
時間創薬・時間育薬
私の専門領域は、時間薬理学、時間薬剤学です。世界の先駆けともいえるクロノケミカルバイオロジー技術(化合物と反応-時間-局在に着目した時空間解析技術)を駆使して、化合物による時計遺伝子の障害、操作、診断技術を構築した [1–4]。この技術を活用し、炎症過程の生体でリズミカルに機能している標的分子を対象に化合物スクリーニングを実施し、抗炎症作用を示す化合物の発見、特許、企業への導出に成功した [5–7]。本化合物は、多数の炎症関連分子の発現リズムを完全に消失させ、種々の炎症や癌化を顕著に抑制した。AMEDの創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業(BINDS)の研究開発代表者として、「グリーンファルマを基盤にした創薬オープンイノベーションの推進」を実施し、研究領域の枠を超えた研究者が総力を挙げての連携成果をあげている [8]。これらの実績と研究リソースをフルに活用した独創的な研究成果が「時間創薬・時間育薬」の概念の提唱につながっている [9,10]。
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九州大学 生体防御医学研究所 トランスオミクス医学研究センター 統合オミクス分野
血中インスリンパターンによる生体応答の制御
細胞は限られた数のシグナル伝達経路を用いて外界の多くの刺激に応答する必要がある。細胞の一つの戦略として分子の時間パターンに情報をコードする方法があるが、個体レベルにおける詳細は不明のままである。ほとんどのホルモンは特徴的な血中パターンを示し、いくつかのホルモンについてはそのパターンがホルモンの作用に重要であると報告されている。我々は血中パターンに何かしらの情報がコードされ、生命応答を制御しているのではないかと考えた。そこで、いくつかの血中パターンを示し良く研究されているインスリンに注目して研究を行っている。我々は、培養細胞と個体を用いて、インスリンパターンがインスリンシグナル伝達経路や代謝物量、遺伝子発現を選択的に制御できることとそのメカニズムを明らかにしてきた。殆どのホルモンが特徴的なパターンを示すことから「ホルモンの時間パターンへの情報のコード」は生命応答の一般的な戦略の一つだと考えられる。
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理化学研究所 数理創造プログラム
数理でせまる生物の時間の謎
20世紀後半からの分子遺伝学・分子生物学の驚異的な進展によって、生物リズムの仕組みは、遺伝子やタンパク質の言葉で解かれつつあります。皆さんの中には、今さら数学や数理モデルを使うメリットなどあるのか、と思う方もいるかもしれません。
今回の発表では、(遺伝子やタンパク質の)ミクロの情報を高校レベルあるいは大学1,2年生レベルの数学を用いて統合すれば、古くからの身近な謎にせまれることを示します。具体的には、「どうして、温度があがって反応が速くなっても体内時計の周期はほぼ一定なのか」、「どのように代謝は体内時計を制御しているか」、「冬眠とは何か」といった問いに対する数理的なアプローチを紹介する予定です。
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大阪市立大学 大学院理学研究科
昆虫の環境適応と時間設定機構
私はこれまで、昆虫類を対象として、環境適応に関わる生理機構を明らかにしてきました。地球上で大反映を遂げた昆虫たち。熱帯に起源する昆虫たちはどのようにして温帯、冷帯に進出してきたのでしょうか、進化の過程でどのような生理機構を獲得したのでしょうか、その適応機構は進化の過程でどのように変遷してきたのでしょうか。このようなことに思いを馳せながら、これまで研究を行ってきました。
今回は「生物リズム」というお題の中で、昆虫の環境適応と時間設定機構について、いくつかの話題を交えてトピックス的にお話するつもりです。普段皆さんが気にも留めない昆虫たちの野外での生活に、思いを向けてみて下さい。
キーワード:昆虫、季節、光周性、地理的変異、南極、カメムシ、ユスリカ、ハエ
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Kyoto University, Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Laboratory of Molecular Metabology
Methyl metabolism as a regulator of biological rhythms
Methylation of genes and proteins is widely recognised as critical for genomic regulation and underpins all epigenetic mechanisms. It is now known that many nucleotides in mRNA can also be methylated, which regulate various molecular processes during the lifetime of the transcript such as splicing, nuclear export, translation and degradation. Methylation of mRNA is essential for normal physiology since its absence is embryonic lethal and has been shown to be involved in fundamental processes such as stem cell differentiation, circadian rhythms, heat-shock response, DNA damage response, tumorigenesis, stress response and cellular immunity.
Cellular transmethylations are stimulated by the availability of the methyl donor cosubstrate adenosylmethionine (SAM) and inhibited by the methylation byproduct adenosylhomocysteine (SAH), both synthesised in a universal metabolic pathway called the methyl cycle, linking methionine, SAM, SAH and homocysteine. The methyl cycle is also required for the control of cellular REDOX potential via the synthesis of glutathione, and for the synthesis of polyamines.
How methylated nucleotides in mRNA are naturally regulated, and their function in normal physiology and disease remains largely unknown. Disruption of the hepatic circadian clock has major deleterious metabolic effects and is now considered a key component in shift-work associated metabolic diseases. This raises the critical question as to how the circadian clock, the methyl cycle and mRNA methylation are linked? This lecture will explain the fundamental mechanisms underlying the circadian clock and methyl metabolism, and their interactions as well as the potential implications for health.
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