発表

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2月20日(土)

【発表ルーム1】

学習者と教師のオンライン授業に関する認識の分析―リュブリャーナ大学日本研究1年生を中心に

スロベニア

リュウ・ヒョンスク(リュブリャナ大学)

リュブリャーナ大学は 2019/20年の春学期が始まって、まもなく一週間の休校命令が下された。その一週間を経たないうちに学校の閉鎖命令と同時に自宅勤務が命じられ, 自宅で何らかの形で授業を継続することになった。そのため、学生も教師も四苦八苦した。

しかし、今年の新入生は新型コロナウイルスパンデミック下で入学し、オンライン授業を念頭に置いて大学生活を始めた学生たちである。最初二週間ぐらいはオンラインとオフラインを並行したハイブリッド型の授業もあった。しかし、3週目からはすべての授業がオンラインになった。

講義型の授業であれば、いろいろな選択肢があったと思うが、言語の演習の授業だとやはり選択肢はそれほど多くない。リュブリャーナ大学文学部日本研究はティームティーチングの方式をとっており、 今年の1年生は4人の教師が担当している。現在、文法の説明は録画して、演習のある前日の夜e-learningにアップロードし、他の授業は時間割の通りにZOOMで行っている。

本発表は2020年10月に入学した1年生とその1年生を担当している教師を中心にアンケート調査を実施した結果である。

【発表ルーム2】

制限の中で繋がる世界、そして広がる日本語教育の可能性~オンライン移行後のクラス活動と他国の先生達との交流を通じて~

ボスニア・ヘルツェゴビナ

ジェキチ美穂(デルヴェンタ中等教育学校センター 「ミハイロ・プピン」)

2020年3月下旬、ボスニア国内の学校では急遽授業をオンラインに切り換えることになり、クラブ活動的位置付けの日本語クラスは一時休止を余儀なくされた。

オンライン授業への移行から数週間後、生徒達と相談しオンラインでのクラス継続を決定。Web会議ツール使用も検討したが、基本的に生徒達がコロナ禍前から使用していた学習アプリやSNS、メールを活用した。また開始後には生徒の満足度の確認や授業の向上を目的としたアンケートを実施した。

中でも私が気を使ったのは学習に興味はあるがオンラインでの参加に積極的でない生徒達への対応である。少しでも参加してもらえればと、SNS内の投票機能を使い気軽に参加できる方法も用いた。またあるきっかけで授業での活動が日本の新聞に紹介されるなど、オンライン授業は生徒達と日本との繋がりを作るきっかけにもなった。

過去の中東欧日本語教育研修会で繋がった各国の先生達とはコロナ禍を機にZoomやSlackを使って交流する機会が増えたが、単に情報交換に留まらず大きな心の支えにもなった。またこの交流をきっかけに他国の高校クラスに参加する機会を得、自分の生徒達と同じ年代の生徒達と繋がることができた。

発表では様々な繋がりを振り返りつつ、同時に反省点等にも言及する予定である。

【発表ルーム1】

中級会話授業での主体的・対話的学びを目指したオンラインの学び場の構築

チェコ

ウッドゥルジャロヴァー美希(マサリク大学)

近年移動手段やインターネットの発達に伴い、国境・文化を超えて人間関係が流動化し、価値観が多様化している。急速に在り方が変化する時代への適応能力を伸ばすため、日本語教育でも発表やディスカッション、協働学習など学習者主体の学びと他者との交流による学びの重要性が指摘されてきた。

新型ウイルスの感染拡大により、チェコ、マサリク大学もオンライン授業へと切り替わったが、上記の学習環境の重要性を踏まえ、主体的・対話的学びに焦点を当てたオンラインの学び場の構築を試みた。学習者間の相互作用が働くことを期待し、非同期型の学習用SNSのEdmodoと、同時双方向型のウェブ会議を利用した。学生はクラスメイトが作成したビデオ発表を視聴し、翌週の授業で日本語母語話者を交え話し合い、その後振り返りレポートをEdmodo上に書く活動を行った。本発表では、本活動が学生の学習に主体性を与えたかどうか、そして対話により新たな理解が得られ、自身の考えを伝える表現力が向上したかどうかを考察し、今後の展望を述べる。

【発表ルーム2】

オンライン日本語教育授業の現状と今後の課題―日本語授業の実践報告とザグレブ市内の日本語教育機関のアンケート結果を中心に

クロアチア

村田マルゲティッチ恵美(ザグレブ大学)

〔共同発表者:山田モグシュ・イヴァナ(ENBE語学学校)〕

 クロアチアでも、2020年3月頃から徐々に多くの日本語教育機関が対面授業からオンライン授業へ移行していった。本発表では、初めにザグレブ大学哲学部で行われたオンライン授業に対するサポートと、発表者が所属する哲学部インド極東学科日本学コース内でのオンライン日本語授業の実践報告を行う。さらに、ザグレブ大学以外のザグレブ市内の日本語教育機関(高等学校・NPO団体・語学学校)にご協力頂きアンケート調査を行った。このアンケート調査の結果から、各機関での取り組みの共通点や相違点、対面授業に戻った後にも取り入れたいオンライン授業の成果と、現在解決したい課題などが見えてきた。

 次に、クロアチアで日本語を勉強している生徒数が一番多い言語学校、ENBEにおいて、オンライン授業に早くから取り組み、オンラインという新しい形での授業を実際に行った上で感じた、様々な利点や欠点、これから改善できそうな点、そして授業後に行ったオンライン授業に関してのアンケート結果などを紹介したい。

【発表ルーム1】

オンラインで中・上級の文型表現の運用を大量に教える試み

ポーランド

ジョンデクなぎさ(アダム・ミツキェヴィチ大学)

 本発表では、アダム・ミツキエヴィチ大学日本学専攻科修士課程1年を対象に2020年10月から作成中の教材の一つについて報告したい。

 同教材は、松田他2012(2006)『テーマ別上級で学ぶ日本語(改訂版)』に取り上げられた文型表現の運用力をつけることを目標とする。同様の指導を発表者はホワイトボードと例文作成の宿題によって行ってきたが、コロナ禍によるオンライン化に伴い、反転授業に耐えうるオンライン教材の必要性を痛感、着手した。

 同教材は、本学推奨のリモート教育用MS Teams/Office365のうち、とくにMS Excelを使用する。教科書の各課に1ワークシート、各課につき20前後の文型表現を選択し、それぞれの文型表現を1シートとした。各シートには、①各文型表現の意味、②典型的な例文の構造の図示、③例文、④確認用問題、⑤宿題の例文作文の記入欄を付す。

 現状では、作成に予想以上の時間がかかり、反転どころか、ポーランド語話者教師による教科書の説明を追うように授業で使用している。作成にあたっての問題点と改善策についても考察し、また研修会のスタッフ・参加者の方々にご助言いただければ幸いである。

【発表ルーム2】

コロナ禍におけるハンガリーと日本の学生のオンライン協働研究の試み

ハンガリー

セーカーチ・アンナ(ブダペスト商科大学)

佐藤紀子(ブダペスト商科大学)

ブダペスト商科大学(以下BBS)では、課題遂行能力と異文化間コミュニケーション能力の育成を目的として、2007年から13年にわたって毎年1回2月に、本学日本語学習者と城西大学の学生による協働研究活動を行ってきた。しかし、2021年度に関しては、BBSと城西の学生がハンガリーで共にフィールドワークを行い、ゲストの前で成果発表会をするという従来の実施方法が不可能となった。そこで、2020年3月に緊急事態宣言が出された後、すぐにオンライン授業に移行した経験を踏まえ、この新しい状況に対応した協働研究の可能性を考えた。その結果、現在世界的な問題となっているCovid19をテーマとし、新たな教育手段であるICTを活用した協働研究を実施することになった。本要旨作成段階までに、両大学の教員による準備会議と学生及び教員が参加した第1回会議が行われている。使用するプラットフォームも決定した。会議では、出席者全員が、自分自身が経験したCovid19の影響やその文化的な違いについて意見を交換し、それを踏まえて、研究テーマと調査手法、調査フィールドを決め、グループ分けをした。本研修会では、研究テーマを選んだ理由やCovid19の個人への影響、その文化的違い、調査手法、今後の日程などを報告する。

【発表ルーム1】

「日本メディアを通しての日本語・日本文化」という授業のオンライン実施のチャレンジについて

クロアチア

ドラガナ・シュピッツァ(ユライ・ドブリラ大学プーラ)

プーラ大学は2020年の秋学期から、日本語学科の修士課程をはじめたが、10月の半ばごろから大学全体で授業がオンライン化となった。修士課程では「日本メディアを通しての日本語・日本文化」という科目を教えるにあたって、オンライン環境をどうすれば最大に活かせるかを今でも検討している。オンラインだと、多様な可能性があるといわれるが、ツールや方法に関係なく対面式でないと、授業参加への動機が落ちる学生が少なくないことも事実である。学ぶことには、社会的なアスペクトが欠かせないからだと思われる。こういう問題を乗り越え、シラバス通りの目的を達成するために、学生にクリエイティブなタスクをさせることや、日本のメディアで取り上げられている様々なテーマについて意見交換をする場を提供するなどをした。具体的に言うと、学生にNHK News Web Easyという学習者向けのサイトなどから、記事を選ばせ、その要旨を書いたうえで自分の意見を述べるという課題を出した。その結果、様々な記事が選ばれ、記事で扱われるテーマについても、学生の意見がたくさん寄せられた。そうすることによって、学生は漢字や語彙の勉強をするだけでなく、自分の考えを日本語で表現できるようになる。そうすることによって、オンラインでも学生の学習意欲を高めることができると思われる。

【発表ルーム2】

学生の提言から見えるオンライン教育の課題

ハンガリー

若井誠二(カーロリ・ガーシュパール大学)

カーロリ大学日本学科では修士課程2年生が「論文作成(プロジェクトワーク)」というコースの枠内で学科改善を目指した提言書集を作成している。同コースでは学生が自らの経験や先輩の提言集から得た知見よりアンケート項目を決定し、学科学生を対象に調査を行う。そして結果を分析し提言を加え論文(提言書)を作成し学科に提出する。提言書集の内容は学科会議の議題となり、学科運営の1つの指針ともなっている。学生の提言がきっかけで、情報の可視化、日本語授業のシステム変更、協定校の拡大、キャリアサポートなど(不十分ではあるものの)学科が環境改善に至った例も見られる。2020年は、同年3月よりオンライン教育が続いていることもあり、「オンライン授業参加を妨げる要因」「対面授業との比較」「授業中の小グループ活動への影響」「授業外の日本語学習への影響」「課外活動の可能性」など、オンライン教育に関する項目もアンケートに加わった。そこで、本発表では、まず、カーロリ大学におけるオンライン教育の現状を簡単に説明し、学生の調査・分析結果、提言内容について紹介する。そして学科や教員が考えるべき点について自分なりの意見をまとめる。

2月21日(日)

【発表ルーム1】

グーグルクラスルームおよびグーグルミートを利用した日本語と日本文化授業における試み―評価を中心に

ルーマニア

アンカ・フォクシェネアヌ(ブカレスト大学)

 本発表では、現在コロナウイルス下で行われているオンラインの日本語・日本文化授業の利点・欠点を、評価を視野に入れながら分析する。

 オンライン授業についての資料、教師対象の講習会・技術研修などを参考に、発表者は学部と修士課程においてオンラインで授業を行ってきた。その経験と学生・院生からのフィードバックをまとめながら効果的であろう方法、この困難な状況からでも教師として学べることは何かを考察する。分析は学部での授業と修士課程の授業に分けて進める。

 ケーススタディーとしてグーグルクラスルーム・グーグルミートを利用した授業を例にとって、特に評価に関する以下の点について詳しく検討する。

1. グーグルクラスルームをインターフェースとした学生とのコミュニケーションの活発化

2. 評価のパータン・方法の多様化

3. 学期中の評価と期末評価のバランスの重要性

4. 口頭試験と筆記試験の構成、時間配分、問題の種類

 最後に入学試験、卒業試験の再検討についても触れる。

 オンライン授業には様々な欠点があるが、有効的に活用することができれば、学習者の自立度を高め、授業を彼らが中心となって学ぶ場とすることができると思われる。

【発表ルーム2】

オンラインのツールを使って、楽しく日本語の授業を行う方法

スロバキア

マイエレホヴァー・アンナ(自営業)

 2020年は教師に対して、チャレンジが多かったと思います。新型コロナウイルスが流行りはじめ、授業をオンラインで行うことになり、学生と直接接すことができなくなりました。どうすれば、情報を面白く、楽しく伝えることができるか考えてみました。学生たちと同じく、ITやゲームが趣味であって、若者に興味をもたせるような無料のサービス、またはオープンソースのグラフィクスソフトウェアやウェブのアプリを色々使って来ました。そこでソフトの設定や使い方、または授業の仕方について話したいと思います。

ご紹介したいサービス:Discord, Google classroom、Jitsi 、ネット上のホワイトボード

ソフトやツール:Krita / グラフィックタブレット 

ゲーム:日本語が練習できるPCゲーム

【発表ルーム1】

地域の壁を超えた交流:「世界と私」の活動実践報告

ポーランド

アンナ・チャスカ(日本美術技術博物館マンガ)

〔共同発表者:インド:アルン・シャム(英語外国語大学)〕

 2020年3月から新型コロナウイルス感染拡大によって、世界中の日本語学校や大学で日本語を学んでいる学習者は教室だけではなく、交流や応用等の場も失ってしまった。対面式の授業ができなくなった教育機関もインターネットを媒介とした遠隔教育を導入せざるを得なかった。

 ただ、既存の対面式の授業に比べて、ICTの利用によって、地域・国境を超えた新しいつながりの可能性も広がりつつある今日、遠隔教育が急に普及したとはいえ、対面式の授業を補う形のものだと、以前の物理的な教室の壁を今度はオンラインで再現することに過ぎないといえよう。むろん、教育のオンライン化は問題はいろいろあるものの、日本語が以前教室内でしか活用できなかった学生は、言語を用いて地域や国を容易く超えた新しいコミュニティー・新しい地域づくりができる時代になってきている。

 こういった新しい可能性を目的に、2020年4月から国・性別・年齢・日本語能力を問わず参加できる「世界と私」というオンラインおしゃべりスペースを実施している。本発表では、過去31回をふりかえり、試行錯誤を繰り返しながら実施してきた当企画の経緯について触れ、また、運営側の実施目的と参加者の動機を照らし合わせながら、今後の課題を明らかにする。