発表

2月10日 14:00~16:00 発表①~④

発表① 中東欧書道コンクールの取り組み

坂本龍太朗

ポーランド

ワルシャワ日本語学校

2013年にポーランド国内にいる書道学習者のつながりを作るという目的で第一回ポーランド書道展を開催した。その後ポーランド周辺国にも書道コースがあることが分かり、いくつかの機関からの声もあり翌年2014年に第一回中東欧書道展を開催した。2017年は中東欧書道展としては第3回目であり、今までの参加国はポーランド、スロバキア、チェコ、ルーマニア、ブルガリア、スロベニア、ハンガリーである。展示会はポーランドで毎年春に開かれている日本祭りで第一回目が行われ、その後毎年在ポーランド日本国大使館広報文化センターにて約1カ月間行われている。その後ポーランドの他の地域で行われた後スロベニアに移るというのが最近の動向である。書道展を始めたことで書道学習者がお互いの作品を見合うという機会ができただけではなく、展示会を通してより多くの方が書道そのものに興味を持ち始めたこと、さらに今まで個々に書道をたしなんでいた各教室が書道展に向けてという目標を持って取り組めるようになったことが一番の意義であると考えている。ちなみに日本祭りでは、第一回ポーランド書道展以来、毎年巨大書道パフォーマンスも行われている。


発表② セルビアにおける大学レベルの日本語教育の新たな動向

ヨカ・サーニャ

セルビア

ベオグラード大学

Since 2010, a major shift in Japanese language education has been seen. Until then, there was a tendency of setting a basis of grammatical structures and vocabulary needed for each level and the content of textbooks or language education in general was formed around them. Since 2010, The Japan Foundation has introduced the Can-do standard, grounded on CEFR and adjusted according to the needs of Japanese language acquisition. This approach implies situational and goal focused learning, meaning that the task of a teacher is to prepare students to communicate functionally in certain situations in real life. Moreover, it focuses on using Japanese not merely as a language spoken by Japanese people but as a tool of communication in a globalized society. It emphasizes diversity of backgrounds of its speakers and needs for intercultural understanding and exchange.

Speaking from the perspective of Japanese language educator at university level in Serbia, we can notice that one of the advantages of this approach is creating space not only for usage of general textbooks but a number of realia collected from situations in real life in Japan. This can foster customization of language acquisition according to learners` interests.

The biggest advantage of the Can-do approach is probably enabling people living and working in Japan to communicate functionally within a short time frame. However, when teaching Japanese on academic level, we have to keep in mind that this approach may not be sufficient and may result in students lacking structural basis of the language. Accordingly, one of the main tasks of educators is to create balance between functional situational communication and thoroughly teaching essential grammar structures and vocabulary.

This presentation will discuss the advantages and difficulties of this approach on the basis of the experience collected from teaching Japanese language at Faculty of Philology at the University of Belgrade.

(当日の発表は、日本語で行ないます。)


発表③ 教えることを通して見る「日本」

栗原幸子、竹内智美

ルーマニア

国際交流基金ルーマニア・ブカレスト大学派遣

ルーマニアでは、このところけん玉がブームとなっていて、子どもたちの間でも日本文化への関心が高まっており、日本語学習の広がりも見られる。このような中、ブカレスト市内の小学校で、ブカレスト大学日本語学科の学生たちが教師となって、小学生たちに日本語・日本文化を教えるというイベントが行われた。ブカレスト大学日本語学科には、書道、折り紙、お寿司、演劇など、学生主体の日本文化のクラブが存在し、それぞれのクラブでは、日本留学の際に学んだことや、文化イベントで習ったことを継承し、活動している。今回の小学校でのイベントでは、日本語学科の1年生、2年生、そしてこれらの学生クラブが中心になって、活動内容を考え、教材を準備し、授業・ワークショップを担当した。学生たちが、どのような準備を経て、どのような活動をおこなったのか、学生たちが「教える」ことを通して見た「日本・日本文化」を紹介する。発表の最後には、参加者の皆様と「異文化理解につながる取り組み」について考え、意見を交換する場を設けたいと考えている。


発表④ 謝罪会見の国際的比較

コバーチ・エメシェ

ハンガリー

カーロリ・ガーシュパール大学

「大変申し訳ございません」の表現は日本でしばしば耳にする。さらに、個人的な生活の場面だけではなく、テレビでも謝る人々の姿はよく現れている。不祥事を起こした販売店、公園で騒いだ芸能人、事故を起こした企業など、さまざまな種類とレベルの「謝罪会見」が開かれている。これと似たような事例は外国のメディアにも存在するが、日本と比較すると、その数は少ない。さらに、日本では謝罪を決まった型で行うが、ヨーロッパやアメリカでは謝罪の決まった型はなく、謝り方は人それぞれである。

本研究の目的は、各文化圏の謝罪行為がどのように異なるかを明らかにすることであるが、さらにメディア謝罪の違いが何を表しているのかを検討することにある。結論として、欧米文化圏で行われた謝罪会見には、経済的な責任が含まれているが、この点日本では感情的・情動的な側面に集中していることが言える。さらに、日本の謝罪会見は事件直後に行われるが、欧米の場合では、数日が経っても謝罪が行われない場合が珍しくない。



2月10日 16:20~16:50

発表⑤ ヨーロッパ日本語教師会の現状(AJE代表)

マルチェッラ・マリオッティ(イタリア・カフスカリ大学)

三輪聖(ドイツ・ハンブルク大学)

ヨーロッパ日本語教師会

ヨーロッパ日本語教師会の活動を紹介します。教師会のこれまでの歩みと現在、そして今後の展望についてお話ししたいと思います。

2月11日 8:40~10:10 発表⑥~⑧

発表⑥ 卒業論文作成をサポートする日本語授業―学習者それぞれが違う内容を扱う内容言語統合型学習―

内川かずみ

ハンガリー

エトヴェシュ・ロラーンド大学

CEFRの行動中心主義を筆頭に、CLIL(内容言語統合型学習)、CBI(内容重視教育)、PBL(課題解決型学習)、活動型日本語教育、自律学習、アクティブラーニング等々、「学習者は能動的に何かに取り組みながら、その過程で自然に、つまり目的達成のために必要不可欠な道具として、言語を習得していくべきだ」という考え方が昨今の語学教育における大きな流れの一つとなっているように思う。発表者はそういった理論や実践方法を活かしながら日本学専攻の大学生の卒業論文作成がサポートできるような日本語授業のやり方を模索している。卒業論文こそ、日本学専攻の大学生にとって日本語能力が目的達成に有用な道具として生かされるべき最も重要な機会の一つであり、また、それぞれの関心を活かしながら大学で取り組んでいくことができる最大の成果物でもあると考えるからである。

本発表では、上記の授業において発表者が今までに行った取り組みについて述べる。特に、2017-2018年度3年生前期のクラスにおいて、学生が行った発表の一部と、学期中に記入していた卒業論文作成ポートフォリオと、各自作成した冊子を紹介する。その上で、卒業論文作成のサポートを日本語授業に取り込むことの利点と問題点を検討の俎上に載せたい。


発表⑦ クロアチアにおける専門日本語教育の必要性

Sara Librenjak

クロアチア

Juraj Dobrila University of Pula(プーラ大学)

中央ヨーロッパの伝統、文化、歴史等は日本のそれと非常に異なる。サピア=ウォーフの仮説、または言語相対性仮説によると、文化や世界観は必ず言葉に影響を与えると考えられている。

この仮説をもとに、言語による異文化理解を考える場合、相手文化を理解した上での、自国文化の表現も重要になると考えられる。

しかし、クロアチアの上級日本語の学習者はどのくらい自国の文化語彙及びクロアチア文化を表現する専門用語が使えるだろうか。クロアチアの大学や言語学校で利用される日本語教科書を調べると、クロアチアの宗教、ヨーロッパ史、西洋美術、料理の用語はほとんどなく、またクロアチアの日本語教育機関においても専門日本語の科目が少ないことがわかった。

プーラ大学では、学生の将来の仕事も考えたコースデザインを目標の一つとしている。クロアチアの主要産業である観光に関する日本語を日本語教育に取り入れ、異文化理解にも力を入れている。今回、本調査を元にクロアチアにおける日本語教育における文化専門用語に関する現状を調査・分析し、解決法を提案し、専門日本語教育の在り方について考察した。


発表⑧ クロアチアにおける日本語教育について―日本語教師会の歴史と、誠クロアチア日本協会の活動から―

Tomislav Mamic(誠クロアチア日本協会)、村田恵美(ザグレブ大学)

クロアチア

まず初めに、村田よりクロアチア日本語教師会の歴史と活動について報告します。次にMamicより、2014年に設立された誠クロアチア日本協会での主な活動と日本語クラスの活動概要、学習者の背景について発表いたします。

クロアチア日本語教師会は2008年に設立された団体です。主な活動として、スピーチコンテストや勉強会などを行っています。2018年現在、会員数は設立時の倍にのぼり非日本語母語話者の教師が半数を占めるようになりました。欧州評議会の「自国の言語文化に誇りを持ち、同時に他の言語文化を尊重する」という相互理解の指針や、「ことばの教育における文化の問題を考える」点を元に、彼らの活動を紹介したく思っています。本日発表を行う、誠クロアチア日本協会は、2014年に日本文化に関心を持つクロアチア人が主体となり設立した団体です。活動はクロアチア国内での折り紙や書道などを初めとした文化紹介、日本文学や日本語などの授業を行っています。また日本からの文化事業団体がクロアチアにて活動を行う際には、会場予約、宣伝等の文化事業のサポートも行っています。本発表では、日本語授業を担当しているMamicから当協会の活動報告、ならびに日本語クラスと日本語クラスに参加する学習者の背景について報告を行います。


2月11日 10:30~11:30 発表⑨,⑩

発表⑨ Japan in Our Midst

クララ・フルヴァティン、リュウ・ヒョンスク

スロベニア

リュブリャナ大学

スロベニアでは、2017年5月から7月にかけて、Japan in Our Midst(JAPOM)というタイトルで、リュブリャーナ大学文学部アジア学科が企画し、スロベニア政府、日本大使館などの後援で、スロベニア中の博物館、美術館、映画館などと連携して、日本の歴史、文化に関する講演や実演、展示そして、映画上映会などを行いました。このプロジェクトJAPOMを企画したきっかけ、目的、経緯そして成果について話したいと思います。


発表⑩ チェコ日本友好協会の活動

アンドレア・ロウヴィチコヴァー

チェコ

チェコ日本友好協会

発表者が教えている機関、チェコ日本友好協会は、日本文化に興味を持っているチェコ人が主体の会員制の民間NPO団体です。20年以上に渡り、チェコ国内での日本文化紹介の活動をしてきました。会員と非会員のために、日本語をはじめ、書道、墨絵のクラス、和太鼓クラブ、チェコ囲碁クラブなど、さまざまなクラスや活動を開催しています。また、日本大使館やほかの機関との共催で、日本映画祭、菩提樹祭り、日本語弁論大会など、チェコ国内で文化行事を企画運営して、日本文化紹介の活動を行っています。日本語教育活動は1998年からですが、書道や日本食など文化活動を組み込んだ授業を心がけています。また、チェコ在住の日本人との「会話の会」では、他の言語学校の学習者も参加し会話を楽しんでいます。協会の理事山田と協力し協会の活動を紹介するつもりです。