「ビルド(B)」→「挿入(I)」を選択すると、さらにその下に「DNA/RNA...」「フラグメント...」「SMILES...」「ペプチド...」の4つのメニューがあります。
「DNA/RNA...」を選ぶと、DNA/RNA Builderのダイアログが開きます。
DNAまたはRNAの分子モデルを作成することができます。
最初にDNAかRNAかを選びます。上の図は、デフォルトであるDNAを選んだ状態です。RNAを選んだ状態では「T」ボタンは「U」ボタンとなります。またDNAを選んだ状態では、StrandsをSingle(一本鎖DNA)かDouble(二本鎖DNA)かをラジオボタンで選ぶことができます。
シーケンスは5'→3'の順に書きます。ボタンを押すか、またはキーボードからの手入力でSequence窓に配列を入力します。
Bases Per Turn:でA、B、Z、Otherのどれかを選びます。通常は生体内の構造であるBでしょうか。
A-DNAとB-DNAは右巻き、Z-DNAは左巻きですが、残念ながらすべて右巻きになっているようです。1ターンの塩基数だけは異なります。A、B、Zでそれぞれ11.0、10.5、12.0塩基です。
(左巻きDNAをつくろうと試みた話は「左巻きDNA」に書きました。よろしければそちらもどうぞ)
Otherを選ぶと、1ターンの塩基数をユーザーが設定できます。というか、A、B、Zを選んだ状態でも1ターンの塩基数を変更できますが、A、B、Zの元の値が変わってしまうので、Other以外のA、B、Zでは変更しないほうがいいでしょう。
Avogadroがあらかじめ持っている約300個くらいの化学構造を挿入することができます。
SMILESの文字列から、AvogadroはOpenBabelの3D Builderを使用して、分子モデルが作成できます。
「SMILESの文字列は、文法を知らないと書けない!」と思われる方もいらっしゃると思いますが、文法を知らなくても、たとえばウェブサイトのChemIDPlusを使ってSMILES文字列を検索、表示することができます。
ChemIDPlus (https://chem.nlm.nih.gov/chemidplus/)を開き、化合物名の検索窓(Substance Identification)に化合物名を入れます。
英名で入れないといけませんが、綴りが多少違っていても、類似の候補を提示してくれるのでありがたいです。
また医薬品ならば一般名でも商品名でもOKです。
またコロナねたになりますが、ためしに検索窓にアビガン(Avigan)と入れてみます。
「Search」ボタンを押すと、検索結果のファビピラビルが表示されます。
下の方にSMILESも表示されています。
ダウンロードボタンもありますが、ここでは簡単に、選択してコピーしてしまいます。
Avogadroの「ビルド(B)」→「挿入(I)」→「SMILES...」の入力窓にペーストします。
ファビピラビルのモデルがビルドされて表示されます。
構造が歪んでいることがあるので、ツールアイコンの自動最適化ツールで最適化しましょう。
これで一応ファビピラビル(商品名アビガン)の分子モデルができました。
「ペプチド」を選ぶと、「Peptide Builder」が開きます。
指定の一次構造を持つペプチド鎖の分子モデルを作成できます。
シーケンスはN端→C端の順に書きます。
20個のアミノ酸ボタンがあるので、それを押すか、または三文字表記のアミノ酸記号を、ハイフンでつないで、キーボードから入力します。ここではCase Insensitiveで、大文字でも小文字でも三文字表記のアミノ酸記号であればオーケーのようです。
Structureで、「Straight Chain」「Alpha Helix」「Beta Sheet」「3-10 Helix」「Pi Helix」「Other」のいずれかを指定します。実際に指定されるのは、ラマチャンドランプロット(Ramachandran plot)で登場するφ(phi)とψ(psi)です。
アミノ酸ごとにφとψを指定するのでなければ、すべて同一のφとψになってしまいますので、できあがったペプチドの構造は現実のたんぱく質やペプチド鎖とは異なります。
そうでなければ
1 アミノ酸のボタンをクリック
2 structureのphiとpsiを設定
3 「ペプチドを挿入する」ボタンを押す
を繰り返して、アミノ酸ごとにφとψを設定するという、超面倒なことをすれば、もう少し現実に近い立体構造にすることができるかもしれません。
たとえば、X. Xia and Z. Xie, Protein Structure, Neighbor Effect, and a New Index of Amino Acid Dissimilarities, Mol. Biol. Evol., 19(1), 58–67(2002) (https://doi.org/10.1093/oxfordjournals.molbev.a003982) によりますと(Fig1)、
Ala, Glu, Lys, Gln, Arg, Met, Leu, Asn, Asp・・・ヘリックスを取りやすい
Ser, His, Cys, Thr, Tyr, Phe, Trp, Ile, Val・・・・シートを取りやすい
Gly, Pro・・・ターンを取りやすい
とのことですので、これらのアミノ酸では、Structureのリストからそれぞれ「Alpha Helix」「Beta Sheet」「Other: Psi= 75, Phi=-65(γターン)」と割り当てるのは、相当の単純化ではありますが、ひとつのやり方ではあると思います。
Stereochemistryで、L-アミノ酸かD-アミノ酸かを、ラジオボタンで選択します。通常はL-アミノ酸でしょう。
chain numberというAからGまで選ぶリストがあります。これを使ってペプチド鎖にAからGまでの一文字の名前を付けることができます。
pdb形式で保存すると、5列目のフィールドにこのペプチド鎖の名前が表示されます。