レオミュールの屋敷まで移動し、ミダス王の腕のある部屋まで来る。
クラン「んじゃ、後はこの宝石をコアにしてミダス王の腕を生き物にしてやるだけだ」
フェア「埋め込むだけでいいの?」
クラン「埋め込んで魔力を流し込めばいいんだ。ただ直接触るわけにはいかないから」
ナイフを重力で操り、切込みを入れて宝石を埋め込む。
クラン「うん、こんなもんか」
フロウ「こういう時に便利ですよね」
ミヤビ「後は魔力を送るだけ、ですが直接触れずにというのは難しいのではないでしょうか」
クラン「それについてはこいつを使う」
妖精の魂。純な魔力を魔法として撃ちだすこいつをうまく利用すれば腕に触れずに魔力を流し込むことができる。
クラン「さ、行くぜ。新たな生命の誕生だ。リインカーネーション!!!」
魔力を流し込んでやるとミダス王の腕はまずどろどろに溶け、そしてだんだんと一か所に集まって・・・・・・
「・・・・・・」
フロウ「あ、動きました!」
フロリーナ「これが、ええーと・・・・・なんと呼びましょう」
クラン「んー、なんて呼ぼうか。名前は決めてなかったな」
ミダス王の腕、黄金の腕、黄金・・・・・・・。
クラン「よし、決めた。こいつの名前は『オーラム』だ」
オッド「オーラム?」
フロリーナ「そのまま『黄金』という意味ですよ」
フロウ「え、すっごい安直」
クラン「こんくらいの方がわかりやすくていいのさ」
にしても、なんだろうこいつは。ぷにぷにとひっきりなしに動き、周囲を確認するかのように体?を伸ばしては元に戻す。
フェア「かわいいわね、この子」
ディア「ペットにしたい」
クラン「あとは知能だな。これからは少しずつ物を教えていこう」
ある程度知能がつけば制御もできるだろう。少なくとも自分で自分の身を守る程度の知能は欲しいものだ。
と、意気込んでから1週間ほど。
ルー「(´・ω・)」
フロウ「全然変わんないね」
クラン「・・・・・・・一週間程度じゃ足りないってことか?」
思いつく限りいろいろとしたのだが、知能らしきものはついてくれない。相変わらずぷよぷよとしているだけだ。
オッド「まあ触っても黄金にならないってのは収穫だけどな。これでこいつを狙っても意味がない」
ディア「それを周知させるべきか、それとも秘匿しておいた方がいいのか・・・・・・微妙ね」
フロリーナ「周知させるにしても、どのようにして周知させればいいのやら。まさかミダス王の腕などと言うわけにもいきませんし」
こいつに金銭的価値がないことを世間に知らしめてしまえばこいつが狙われはしないのだが、そもそもの存在が知られる方がよろしくないかもしれない。
ミヤビ「・・・・・・少なくとも領民には知らせた方がいいかもしれません」
フェア「なんで?」
ミヤビ「此度の戦について、必要なのは彼の男を悪へと仕立て上げる筋書きです。フロリーナさんを信頼してくれている人は多数いますが、それだけでは反乱分子を抑えることはできない」
クラン「要はこちら側は悪者を打ち倒した正義だってことを言ってやれってことだな。戦争をするのに大義名分がいるように、戦争を終わらせるのにも大義名分が必要なんだ」
フロリーナ「そうですね・・・・・・ですからクラン様、あなたがこの地を治めてくれると我々としても非常にありがたいのですが」
クラン「その話は断っただろ」
医者を探し回らないといけないのに、一つの土地に縛り付けられるというのはよろしくない。融通が利かない状態にはできればなりたくないんだが。
ディア「・・・・・・クランはここの領主になるつもりはない。かといってフロリーナも家を解体するってことで責任をとる。じゃあ、他に誰かが必要ね。この地を治める正当性のあるやつが」
オッド「とは言っても、そんな都合のいいやつなんて」
ディア「いるじゃない。あんたが」
オッド「・・・・・・え?」
ディア「筋書きはこう。レオミュール伯爵が隣の領土にあるミダス王の腕を奪うために戦争をしかけた。父の邪知暴虐な行動を事前に察した娘フロリーナがそれを守りきり、強欲な伯爵にはミダス王の呪いがかけられた」
ディア「そして、今後二度とこんな戦争を起こさせないようにするために、私たちがミダス王の腕を神にささげると、新たな生命として生まれ変わることになった」
ディア「その名はオーラム。私たちはこの子を神の子として祭り、オーラムの名のもとに神の子を守護する国を作る」
ディア「そして、その国王となるのが・・・・・・ミダス王の子孫であるオッド。そして私たちは臣下としてオッドを支える。こんな感じ」
オッド「え?え?え?」
フロリーナ「国を作る、ですか。領地という形をとってしまうと国からの命令には逆らえない。ならばいっそ国として独立することでオーラムを守る意思を見せようということですね」
オッド「あの、ちょっと」
クラン「いいんじゃないかな。新興国の臣下ってことにしてもらうと俺たちもいろんな地域に出かけやすいし、拠点もできる」
あてもなくさまようよりは自由な身分のまま拠点をもらえた方が人探しはしやすいだろう。ならばこの話に乗らない手はない。
フェア「ここを国にするのなら私たちも喜んで協力するわよ。妖精の森もそろそろ他国との貿易とかもちょっとずつやらないといけないと思ってたところなの」
ミヤビ「一つの国になるのなら、たくさんの絵が集められそうですね。まとめて持ち帰りたいものです」
フロウ「ルーちゃん!私たち偉い人になるんですって!」
ルー「(>_<)」
国を作るというディアの大胆な発想には恐れ入る。だが彼女の筋書きは実際に起こった出来事が交えられているから信用しやすいものになるだろう。
オッド「ちょっとっ!聞いてっ!」
フロリーナ「オッドちゃん?」
オッド「私、いきなりそんなこと言われたって無理!だって、リーナもディアも知ってるでしょ!?私が家も名前もない浮浪者だってこと!」
ディア「家はここでしょ?ここがあんたの家になるんだから」
オッド「でも、名前もない!国を作るなら受け継いでいく名前が必要だ!だけど、私には・・・・・・」
クラン「名前が無いなら、勝手に名乗ればいいじゃないか」
名前が無いことが問題だと言うのならば、彼女が新たに名を作り名乗ればいい。たったそれだけで解決することだ。
オッド「そんな、無理だ・・・・・・私に、受け継いでいかなきゃいけないような名前なんて・・・・・・」
フェア「オッドの言うことは確かにそうよ。私の名がフェア=タイタニアっていう種族名がそのまま名であるように、受け継ぐ名前ってのには意味がなくちゃいけない。特に、王族なんかは」
フロウ「フロウラルフロスト・フレイアムフロウ。こんな長い名前でも一応受け継いできた名前だからさ。やっぱ大事にしないといけないものだよ」
ミヤビ「名とはただの記号ではありません。その人の存在を確立させる力があるものです。決して無碍にできるものではありませんよ」
ルー「(´・ω・)」
そう言われると確かにそうだが・・・・・・。いや、受け継がせればいいんだな。受け継がせる理由があればいいんだな。
クラン「オッド、これから君に名前を与える」
オッド「え?与えるって、今の話聞いてた?」
クラン「ああ。だからこそ今から与える名前を、刻み込むんだ」
「オッド=ソフライム」
オッド「・・・・・・その、名前は」
クラン「受け継ぐ名前が無いのなら、俺が与えてやる。君はこれからオッド=ソフライムを名乗って生きるんだ。先祖代々から受け継ぐ我が家の名前だ」
オッド「オッド、ソフライム・・・・・・私の、名前・・・・・・」
フロリーナ「では私もこれからはフロリーナ=ソフライムということで」
オッド「えっ」
フェア「えっ?」
フロリーナ「自らの強欲により呪われたレオミュール家は解体し、新たに国の救世主であるクラン様の名を受け継ぐ。形式上ではありますが、かつての領民にレオミュールが無くなったと伝えるにはこうするのが一番ですから」
ディア「だったらあたしもディア=ソフライムね!仲間外れは嫌よ!」
フェア「なるほどねー。クランもうまいこと考えるわね。オッドはこの名前を拒否するわけにはいかないもんね」
オッド「それは、そうだけど・・・・・・」
クラン「まあ嫌なら仕方ないけどさ」
オッド「嫌じゃ、ない。私は、私の名は、オッド=ソフライム。あなたがくれた、大切な名前。この名を決して失わせず、未来永劫受け継いでいくことをここに誓う」
フロリーナ「ならば私はオッドちゃんの、いえ、オッド様の右腕として同じくこの名を未来永劫受け継いでいくことを誓います」
ディア「んじゃ、私はオッドとリーナの親友として、この国の発案者としてこの名前を未来永劫受け継いでいくことを誓うわ」
オッド「・・・・・・ここで宣言する。私たちはソフライムの名の下、オーラム王国を建国し、子々孫々この国を守り続けることをここに誓う!」
オッド「オーラム王国は、ここに誕生した!」
数日後、サーナさんやテトラとも相談し、独立の承認や諸々の手続きなんかを二人に任せることにした。それと同時に、国民へ新たな国として独立することを宣言すると同時に女王であるオッドを知らしめるために戴冠式を行うことになった。
クラン「・・・・・・うん、様になってるよ」
オッド「・・・・・・こんなきれいな服は、慣れない」
ディア「しっかりしなさいよ。これからはあんたがこの国の代表なんだから。以前みたいに路地裏でゴミ漁りとかできないんだからね」
フロリーナ「国の威厳を保つためにも身なりは整えておかないといけませんよ。オッドちゃんへの印象がそのまま国の第一印象となるのですから」
オッド「うう、やっぱり引き受けたの間違えたかな・・・・・・」
身分外のホームレス生活から一転して一国の女王となったのだ。戸惑うのも無理はない。
ファイス「あ、あの、私なんかが戴冠などと恐れ多い役柄を任せられてもよいのでしょうか。テトラさんやアクリヴィア様の方が・・・・・・」
ディア「なーに言ってんのよ。同じ牢屋に入れられてた仲じゃない」
フロリーナ「そうですよ。私たちは同じ苦難を乗り越えた友ではありませんか。水臭いですよ」
オッド「こいつら、本当に調子がいいから困る」
ファイス「そうですね・・・・・・オッドさんも大変そうです」
オッド「うん。だけど、1人よりかは断然いい」
オッド「・・・・・・人が、いっぱい」
ルルト「外にたくさん集まってるよ。新しい国の誕生と、王女様を一目見たいんだって」
この事態の関係者であるルルトたちも、戴冠式に出席してもらうことにした。ただ、俺たちは華やかな役目ではなくて。
フレア「警備は任せろ!あたしらの手があればどんなやつでも返り討ちだ!」
カレア「不審者がいればすぐに探知しますから。安心してくださいね」
クラン「ありがとう、フレア、カレア、ルルト。わざわざ引き受けてくれて」
ルルト「水臭いこと言いっこなしだよ!それに、僕だって新しい国ができるとこを間近で見たいんだから!」
フェア「ふふ、そうよね。さ、そろそろ時間よ」
ミヤビ「皆様が首を長くしておまちしております。どうぞこちらへ」
オッド「ん、わかった。行ってくる」
最初の不安そうな態度から一変して、しっかりとした目つきになってオッドが歩き出す。彼女は一度やると決めたことはきちんとやり通す人間だ。俺も、スワンもそこは同じだ。だからこそ、ソフライムの名は彼女に相応しい。
クラン(ま、言いふらすつもりはないけれど)
ファイスとオッドが壇上に上がり、戴冠式が始まる。とは言っても二人とも大きな式典には慣れていないので簡易的なものにはとどめてあるが。
ファイス「オッド=ソフライム。あなたの力が神より賜った物であることを認め、あなたが王としての権威をもつことをここに宣言します」
ファイス「これが、その証です」
純金で出来た冠を、ファイスが持ち上げ、オッドに被せる。ここに、新たな王が誕生したのだ。
オッド「みんな!私の名はオッド!オッド=ソフライムという!」
オッド「はっきり言おう!私は不安だ!ほんの少し前は住む場所も名前すらもない身分外の浮浪者だった!そんな私が突然女王なんていう立ち位置に就くことになった!」
オッド「ミダス王の血統であり、その力の片鱗を受け継いでいるのは知っていた!だが、それだけだ!」
オッド「きっと私は王にはふさわしくないのだろう!王として振る舞うことができない私は王となるべきではないのだろう!」
オッド「だが、私は名を受け継いでしまった!力を、責任を、義務を負ってしまった!」
オッド「もはやこれまでだ!もう私に逃げ場はない!こんなに重い冠をかぶってしまっては逃げ出すことはできない!」
オッド「だから、みんなには協力を頼みたい!無知な私が、王として、この国の長として治めていけるように!未来永劫この国を守り続けられるように!」
オッド「私は決して手を抜かない!生涯努力を続け、この国をより良いものにできるようにする!」
オッド「それが、この地の救世主であるクラン=ソフライムから名を授けられたこのオッド=ソフライムの誓いだ!」
オッド「私は皆に望まれる限り王として生きよう!ソフライムの名に懸けて!」
歓声が上がる。彼女の正直な心情を吐露されて、みなが共感をする。思いの丈をぶつけられると、人は反応せざるを得ない。俺だって、少し涙腺にきているのだ。
フロリーナ「オッドちゃん、立派になって・・・・・」
ディア「まさか酒場のゴミを漁ってたあの子がこんなになるなんてね」
二人はオッドの親友というだけあって、彼女の以前の人生を詳しく知っている。だからこその想いが込み上げてきているのだろう。
フェア「心なしか顔つきが立派になった気がするわね」
ミヤビ「以前は刺々しい感じでしたが、今は責任を背負い果たそうとする強い目です。人は、変わるのですね」
フロウ「オッドさん、かっこいいなぁ」
ルー「(*‘∀‘)」
人は、使命を帯びた時に本性が出ると思っている。オッドはこの国を守るという使命を帯びた。だからこそ、彼女の隠れていた強さが発露したのだ。
フレア「カレア、周りに変なのは?」
カレア「今のところいないね」
ルルト「まあまあ平和なら問題ないよ」
オーラム「あらかじめ片付けておいたから当然」
フレア「へぇ、なるほどなー」
ルルト「あー、ってことはやっぱりいたってこと?」
オーラム「そう。旧レオミュール派の兵士が残っていた。まとめて資金源に変えておいた」
カレア「それだったら安心ですね」
フレア「資金源って?」
オーラム「純金」
ルルト「・・・・・・」
フレア「人を純金に変えるとかすげーな!クランが行ってたミダス王の腕みたいな・・・・・・あれ?」
ルルト「だ、誰だ!?」
カレア「曲者!?」
オーラム「えっ、違う」
ルルトたちがなにやら騒いでると思ったら、見たことがない金髪褐色の女の子がとらえられていた。
ルルト「クラン!曲者!こんなやつ臣下にいなかったよね!?」
クラン「え、あ、うん。確かにこの子は見たことないけど・・・・・・」
オーラム「マスターはひどいことを言う。私に命を与えておいてこの言い草」
マスター?それに命を与えたって・・・・・・
クラン「もしかして、オーラム?」
オーラム「サー、マスター。私はオーラム。神の呪いそのもの」
カレア「ええっと、クランさん、お知り合いなんですか?」
クラン「知り合いって言うかなんていうか・・・・・・とりあえず縄は解いていいよ。んで、オッドたちの用事が終わったら来てもらう」
つい昨日までスライムみたいな感じだったオーラムが突然人の姿になった。実は少しずつ知能がついてきていて人型になれるまで育ったってことか?
クラン「ええと、君はオーラムで間違いないんだね?」
オーラム「そう。触れた物を純金へと変える力を見せれば納得してもらえると思う」
オッド「その力は残っているのか?」
オーラム「残ってる。というより、その力そのものが私だと思って欲しい」
フェア「いつ人型になったの?昨日までは確かにもっとぷにぷにしてたわよね?」
オーラム「それは――」
「ついさっき、ですよ」
クラン「誰だ!?」
後方から、突然声をかけられる。赤い瞳を持ち、薄紫の髪を二つにまとめた少女
オーラム「ドクター」
フェア「ドクター?」
「どうもはじめまして、みなさん」
レイラ「私はレイラ・ビオレットと申します」
俺たちが探し求めていた医者が、ルーの治すことができる可能性がそこに佇んでいた。