レイラ・ビオレット。俺たちが探し求めていた相手であり、ルーの声を治すことができるかもしれない存在。そんな彼女がなぜここにいるのだろうか。
レイラ「まずは何も知らせず勝手なことをさせていただきましたことをお詫び申し上げます」
クラン「ああいや、それは、いいんだけど」
本当に彼女が医者、なのだろうか。見た目はどうも若い町娘にしか見えない。医者と言うともっと歳をとっていて太っていて・・・・・・。
レイラ「まず、オーラムちゃんについてのお話を。彼女が人の形をなしているのは私が持って来た賢者の石を埋め込んだからです」
賢者の石、錬金術における触媒だったはずだ。卑金属を金に変えるための者だったと思うが・・・・・・・。
レイラ「この賢者の石というものは、簡単に言うとあらゆる自然の力を内包した石なのです。これを核にしてあげることで彼女に知性を与えました」
オーラム「知性パワー」
クラン「な、なるほど?」
ヤバイ、全然わからん。賢者の石を使って知性を与えたってことはわかる。ただその方法とか賢者の石がそもそもどんなものなのかとかがまったくわからん。
フェア「えーっと、つまりとんでもアイテムでオーラムが喋るようになったってことね、うん」
レイラ「そういう解釈で構いませんよ」
フェアが雑にまとめてくれたおかげで話が進みそうだ。どうしても俺は考え込む癖があるみたいだ。反省せねば。
ルルト「あ、じゃあ質問。なんでそんなことをしたの?」
オッド「私たちからすれば願ったり叶ったりな状況なのは間違いないが、少なくともあなたにそういうことをする理由が見つからない」
何か特別な理由がない無償の行為、というのは普通は考えられない。それにオーラムのことをどこで知ったのかとか、気になることがありすぎる。
レイラ「そうですね、動機がわからないのは確かに不安でしょう。簡単にまとめますと、戦争を収めてくれたお礼と私の腕前を見せることの二つが目的です」
フロリーナ「戦争を収めたお礼?」
レイラ「はい。戦争というものはその内容に関わらず多くの命が失われます。それは医者として最も忌むべきものです。だからこそ、大きな犠牲を払わずにそれを収めたあなた方には感謝しています。まずこれが理由の一つ」
クラン「戦争が起きたら医者は儲けられるから喜ぶものなんじゃないのか?」
けが人が多いほど医者は儲かるだろう。彼女のように各地に赴く医者ならばけが人が多い所に行って治療を行い、費用を請求するのも簡単なことだろうに。
レイラ「私はお金が欲しくて医者をやっているわけではありませんよ。目の前で失われる命が1つでも少なくなることを願い、そのために行動している。そんな医者です」
クラン「・・・・・・・さっきのは失言だったな。非礼を詫びるよ。すまなかった」
レイラ「いえ、構いません。そして2つ目の理由は、私の腕を求めている人の話を聞いたから。ですが、実際の腕前も見ずに判断することは難しいでしょう。だからこのような形で示させていただきました」
ディア「・・・・・・・聖人かな?」
レイラ「え?」
フェア「私利私欲もなにもなしに命を助けたいだなんて、そんな聖人がこの世に存在するなんて・・・・・・・」
ルルト「ボクの知ってる聖人はもっと危ない感じなんだけど」
クラン「姉さんのことはあれは半分種族みたいなものだから」
しかし、彼女が本当になにかしら別の目的があって動いているのでなければ、本当に聖人並みの行動だと思う。それこそサーナさんと並ぶぐらいの。
レイラ「さて、私の腕と人間性を信じてもらえたのならば患者さんを見せてほしいのですが、いかがでしょうか?」
クラン「むしろ、こちらからすぐにお願いしたいぐらいなんだが・・・・・・・ここじゃなんだし場所を移そう」
諸々の後処理はフロリーナに任せて客間へ移動する。
ルルト「ルーちゃんつれてきたよー」
ルー「(>_<)」
レイラ「彼女が?」
クラン「ああ。さっき説明した通り、声が出せなくなったセルキー。名前はルーだ」
レイラ「わかりました。ちょっと調べさせてもらいますね。ルーちゃん、口を開けてもらえますか?」
ルー「(*'▽')」
レイラ「はい、いい子ですね。・・・・・・・喉がどうにかなっている様子はない。一度「あー」と声を出して見てもらえますか?」
ルー「 」
レイラ「・・・・・・・特段異常はなし。生まれつき声が出せないとかそういうわけではないんですよね?」
ルー「(*'ω'* )≡( *'ω'*)」
レイラ「ふむ、これは・・・・・・。ごめんなさい、すぐには原因を特定できそうにないです」
フロウ「えーっ!?どうしてー!?」
レイラ「喉の状態、少なくとも目に見える状態には一切の異常が見当たりません。だとすると、考えられるのは3つ」
レイラ「1つ目は心因性の病気。大きなショックがあったから声を出せなくなった可能性」
レイラ「2つ目は身体の中身の病気。喉ではない別の部分が悪くて、そこが作用している可能性」
レイラ「3つ目は呪い。何かしらの呪いによって声そのものを封じられている可能性」
彼女ほどの腕をもってしても、すぐに原因を特定するには至らなかった。ルーの問題は、思っていたよりも深刻なのかもしれない。
レイラ「こうなってしまうと、特定には時間がかかってしまいますね。今手持ちの道具ではどうしようもないです」
クラン「そうか・・・・・・」
なんとももどかしい話だ。だが、それだけルーの声のことは根深い問題だということでもあるだろう。
レイラ「・・・・・・この後もつきっきりで治療をしたいのはやまやまなのですが、残念ながら私にはそこまでの時間がありません」
フロウ「えっ?な、なんでですか!?」
レイラ「私を待つ患者さんは他にもたくさんいますから。それこそ私が治療しないと命を落とすような方も。そんな方たちを放っておくことはできません」
クラン「それじゃあ・・・・・・」
ルーの治療は、諦めるしかないということなのだろうか。確かに命に別状はない。優先度が低いのは当然だ。だが、それでも・・・・・・
レイラ「訪問診療、という形にしましょう。私が定期的に治療を施しに来ます。時間はかかりますが、確実に治すためにはこの方がいいでしょう」
ルルト「ほんと!?」
ルー「(´・ω・)」
クラン「それは、願ったり叶ったりだが・・・・・・いいのか?」
レイラ「ええ、もちろん。友人からの頼みでもありますしね」
クラン「友人?」
レイラ「ええ。その話はまたの機会に」
気になる言い方だが、今は話すべきではないということなんだろう。彼女の機嫌を損ねるわけにもいかないし、深入りはしないことにする。
レイラ「さて、私が訪問するまでの間何もせずただ待っているというのももどかしいでしょう?」
ルルト「それは、まあ」
フェア「でも、今のところ目的もないしね」
クラン「この国もできたばかりでいろいろと大変だろうから、多少は何か手伝おうと思ってるし」
ここを拠点にレイラを探す予定だったのだから、その予定が失われた今何をすべきかという目標は正直見失っている。
レイラ「そこで、です。彼女の声を治すための道具の材料を集めていただけないかと思いまして」
クラン「材料?」
レイラ「はい。薬の材料にしたり、魔道具の材料にしたりと様々ありますが、少なくとも私が集めるよりは時間がかからないはずです」
医者として患者たちの治療をしながら、治療のための道具を集めて作る。確かにその作業をすべてやらせていると相応の時間が必要だろう。
フェア「そういうことならなんでもやらせてもらうわよ!」
ルルト「ボクも!世界中を飛び回って集めてくるよ!」
クラン「何か処置が必要ならば手順さえわかっていればこなせるし、なんならサーナさんにも頼れるし」
レイラ「ふふ、それではお願いしますね。これから必要になりそうなものを書き留めますので、そうですね、だいたい1ヶ月毎ぐらいに訪問させていただきます。それまでに集めていただけると助かります」
1ヶ月か・・・・・・確かにその期間を何もせずに過ごすと言うのは俺には無理だ。やってやろうじゃないか。ルーのために。
フロウ「はいはーい!私もお手伝いしまーす!」
クラン「ああ、頼むよ。ルー、これから時間がかかるかもしれないけど、絶対に治してみせるから。待ってくれるか?」
ルー「<`ヘ´>」
クラン「えっ?いや、そんな顔されても待ってもらわないとどうしようも・・・・・・」
エア「バーカ。違うっての。ルーは待つだけなんか嫌なんだよなー?」
ルー「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)」
ああ、そうか。そうだな。彼女も、自分の事は自分でやりたい、か。
クラン「悪い。待つんじゃないな。一緒に頑張ろう、ルー」
ルー「(*‘∀‘)ノ」
こうして、ルーの治療が本格的に始まることになった。本当に治るかどうかはわからない。もしかしたら永遠にこのままかもしれない。だがそれでも、ほんの少しでも可能性があるのならば諦めずにやっていこう。
ルルト「・・・・・・読めない」
フェア「読めないわね」
ミヤビ「これは・・・・・・暗号?」
オッド「読めん」
フロリーナ「この文字は、一体何語でしょうか?」
ディア「わかんない。少なくとも酒場の文字とは違うし」
フロウ「お兄ちゃん、読めます?」
クラン「・・・・・・いや、無理だ。俺が勉強した文字じゃない」
エア「おー、サーナ呼ぶかー」
クラン「ああ。とりあえず俺たちが読める文字にしてもらわないと」
前途多難で先行き不安だが、がんばろう。