クラン「ミダス王の腕、だって?」
本当にそんなものが存在すると言うのならば、戦争をしてでも取ろうとする価値はある。
フロウ「あの、私よく知らないんですけどミダス王って誰ですか?」
フェア「さあ?」
ミヤビ「お知り合い、ですか?」
ルー「?」
クラン「お前らなぁ・・・・・・『王様の耳はロバの耳』っていう童話は知ってるか?」
フロウ「童話なんて生まれてこの方読んだことありません」
フェア「妖精の森にはそんなものないわ」
ミヤビ「竹取物語でしたら」
ルー「(・_・)」
クラン「ああ、うん、そうか」
ああ、よく考えたらあれはギリシア神話は元だったか。だったら皆が知らないのも無理はないか。
クラン「簡単に説明すると、ミダス王ってのが昔いて、そいつの腕は触ったものを黄金に帰ることができたっていう話だ」
フェア「うそぉ!?」
フロリーナ「物語としてはそうだとは聞いていますが・・・・・・オッド?」
ディア「そもそも、クランが言ってたみたいにミダス王ってギリシア神話でしょ?なんでこの辺にその腕があるのよ」
オッド「そんなこと言われても」
それに、ミダス王の腕の力はどこかの川に移ったはずだ。その後もロバの耳にされたりと割と波乱な人生を送ったのは知ってるが・・・・・・。
オッド「ミダス王の腕があの土地にあることは私が知っている。今からそれを証明する」
そういうとオッドは近くに合った空のグラスを手に取り、強く握りしめた。
ディア「オッド!?そんなグラスを握ったら危ないって!割れる割れる!」
オッド「危ない?いいや、私の腕にそんな概念は存在しない。そして、このグラスは割れるんじゃない。崩れるんだ」
オッドがそう言うと、グラスが音もなく粉々に崩れ去る。そして、彼女の手の中には『砂』が残っていた。
クラン「・・・・・・これは、魔法か、それとも聖法か?」
いや、物質そのものを変化させる魔法だなんて聞いたことがない。魔法は魔力をイメージ通りに変えるだけだ。だから何かを生み出すことはできても、まったく別の物になんて・・・・・・。
オッド「・・・・・・これは魔法じゃない。聖法でもない。これは神の力だ。かつて私の祖先のミダス王が授けられて、今なお受け継がれている力」
ルー「!」
クラン「神、だって?いや、まて、いま祖先って言ったか?」
オッド「ああ。ミダス王は私の遠い祖先だ。私がこの力を受け継いでいるのはそれが理由だ」
彼女が今見せた力、まさに神の如き所業だ。だからこそ、納得せざるを得ない。
オッド「・・・・・・まあ、私はミダスと違ってこの力をコントロールできるがな」
ディア「そうだよね!これまで散々触られたことあるもんね!」
フロリーナ「かつてミダス王はその力を制御できないが故に飢えてしまったと聞きますが、オッドは普通に食事していますものね」
テトラ「さて、クラン。ここまでの情報をふまえて、お前はどうするべきだと思う?」
クラン「そうだな・・・・・・向こう方の狙いがミダス王の腕だというのならば、先に確保したいけど」
現物さえあればどうとでも交渉はできる。逆に言えば交渉をするためにはまずはミダス王の腕を見つけなければならない。
クラン「どこにあるのかはわかってるのか?」
オッド「それがわかったら苦労はしない」
そうだよなぁ。虱潰しに探そうにもこちらには人員が少ない。人海戦術が使えないのにそんなことはあまりにも効率が悪いし、その間に事態が悪い方向に進む可能性がある。
クラン「フレインがいれば、さくっと見つけられそうなんだけれどもなぁ」
フロウ「フレインお姉ちゃんの植物に話を聞く力は反則ですもんね」
フロリーナ「植物をお話を?」
実際に俺がミヤビに聞いてようやく見つけたルーチェの居場所を自力で見つけたりするほどの力があった。とはいえ、本人がいない以上どうしようもない。
クラン「魔力とか放ってくれてたらあるていど目測がつくんだけどな」
オッド「そんなもんない」
クラン「あるいは、神の力ってのを探し当てることができれば・・・・・・ファイス?」
ファイス「申し訳ありません。私が信仰しているのは主のみですので、聖力以外は・・・・・・」
ディア「封印されてるんだったらさ、やっぱりどっかの建物の中にあるんじゃないの?偶然誰かが見つけたりしないようにさ」
クラン「・・・・・・それもそうか」
ちょっと頭がこんがらがってきたな。そもそもミダス王の腕という神話の存在が現存しているという話に加えて、目の前の少女がその力の片りんを見せくれた。納得はできたのだが理解が追い付いていない。
ミヤビ「・・・・・・一度、今日は休みましょうか。みな様疲れているでしょうから」
クラン「そう、だな。正直ちょっと時間が欲しい。情報を整理する時間が」
テトラ「私は構わんが、大丈夫か?レオミュール嬢」
フロリーナ「はい。私も、かなり疲れました。・・・・・・今日はゆっくり休みます」
テトラ「よし、では今日はこれでお開きだ。また明日、話をしよう」
そして翌日。一日経ったからと言って革新的なアイデアが出るわけでもなく、俺たちは頭を悩ませていた。
フェア「うーん、難しいわねー」
クラン「やっぱり領主の屋敷に行くのが一番手っ取り早いか?情報を持ってるとしたらそこだろうし」
フェア「そうねー。って言ってもさ、ウチの城にもこう家宝みたいなのはあるけど、そういうのは全部宝物殿があってそこにしまってるわよ」
フロウ「宝物殿・・・・・・私たちみたいな余所者に教えてくれるわけないですよね」
ディア「オッドは余所者扱いなの?」
オッド「当然。私はあの腕の持ち主の子孫であるだけであそこの領主とはかかわりがない」
フロリーナ「私が口をきかせるのも無理でしょうし」
クラン「いっそのこと脅迫するか・・・・・・」
テトラ「クラン?」
クラン「いや、冗談だ。少なくともルーの前でそんなことをするつもりはない」
フロウ「私も子供なんですけどー。差別はんたーい」
はっきり言って手詰まりだ。ピピに連絡がつけば話は別なのだが、今どこにいるかわからないしなぁ。サーナさんならもしかしたら・・・・・
ミヤビ「・・・・・・探せないことも、ないですが」
クラン「えっ?」
ミヤビ「先ほどの話からミダス王の腕はまだ『生きている』と仮定します。そうしましたら、オッド様の血から探すことができます」
オッド「それも魔法か?」
ミヤビ「いえ、これは特技ですね。血の匂いって実は人によって異なるのです。ですから、似た臭いの血を探すことになります」
吸血鬼の種族としての特技といった感じか。しかしそれは、ミダス王の腕が生きているという前提となる。
クラン「ミダス王自身は遥か昔に亡くなってるんだろ?それでも大丈夫なのか?」
ミヤビ「ええ。本人が亡くなっても残された一部が生きていると言うのはよくある話です」
フェア「よくあるの?」
ミヤビ「え、ないですか?こう、腕だけで動きだしたりとか結構ある話ですけど・・・・・・」
ジパングの常識はよくわからない。だが、神の力が宿っている腕だというのならばもしかしたらありえるのかもしれない。
オッド「なら早速お願いする。血はどれくらいいる?」
ミヤビ「ほんの少しで構いません。我々吸血鬼の鼻は犬よりも強いと思ってください」
ミヤビ「・・・・・・。見つけ、ました。見つけましたが・・・・・・ひとつ、だけ?」
テトラ「どうした?」
ミヤビ「い、いえ。なにもありません。行きましょう。臭いは見つけましたから、あとは辿るだけです。これが違っていたら探しようがありませんが・・・・・」
オッド「・・・・・・」
クラン「まあ何もしないよりはいいだろう。行こう」
臭いをたどるミヤビについていき、4時間ほど。
フロリーナ「不思議ですね。まさか空を飛ぶことにこんなに慣れるとは思いませんでした」
ディア「それよねー。クランさんの魔法なんだっけ?私はその魔法とかよくわかんないけど、すごいね」
クラン「複数人で移動するときはこれが一番早いってことに気づいたんだ。といっても結構魔力を使うから、そこまで長くは持たないけど」
重力操作でまとめて人を運ぶことになるとは思わなかった。ジパングでも似たようなことはやったが、あれはその場に浮いているだけだったからまだ魔力の消費は少なかった。
フロウ「もう結構立ちますよ?ミヤビさん、まだですかね」
ミヤビ「もうそろそろ・・・・・・・っと、見つけました。あそこです」
ミヤビが指さした方向には、こじんまりとした小屋が建っていた。
フェア「誰もいないわねー。宝物殿だったら守衛でもいるもんだと思ったけど」
クラン「本当に、こんなところに・・・・・・?」
ミヤビ「臭いはここからです。・・・・・・地下、ですね」
ディア「この石畳の下?入口・・・・・・は見当たらないわね」
封印されているとオッドは言った。ミダス王の腕の力が健在ならば、富を得られると同時に強力な呪いともなる。ならば誰にも触れさせないように厳重に保管するのが一番だろう。
フロウ「じゃあ、壊して地下に!」
クラン「こら、待つんだ。それでここが崩れたら大変だろう?」
フロリーナ「この石畳が崩れたら・・・・・私たちはひとたまりもありませんね」
ルー「((((;゚Д゚))))」ガクガクブルブル
しまった。ルーにとっては地下はトラウマのはずだ。流石にこの状態で放置するわけにはいかない。
クラン「ルー、大丈夫か?なんなら外に・・・・・・」
ルー「(;∀; )=( ;∀;)」フルフル
クラン「ん、そうか。まあ、今は俺が側にいるから。つかまってろ」ギュッ
オッド「要はこの石畳を一部だけ、崩さないように壊せばいいんだろ?」
フェア「それができたらいいんだけど・・・・・」
オッド「さっき見せただろ、私の力。ミダス王のそれと違って、私のはコントロールできるんだ」
オッドがそう言って床に両手をつけ、人が一人通れる程度の穴を作る。
オッド「っと、階段だ。運がよかった、ちょうど崩したところから出て来た」
フロリーナ「では、降りましょうか。えっと、松明は・・・・・・」
クラン「ライトフォース」
光魔法を全員に纏わせる。これで暗い中でも周りをはっきりと―――。
ミヤビ「こ、この、光は・・・・・・きゅううう・・・・・・・」
しまった。ミヤビは光に弱いんだった。魔法の光もダメなのか・・・・・・
ミヤビ「私はここで待機してますから、みなさんは・・・・・・」ガクッ
クラン「えっと、解除しとかないと。よし、降りるか」
フロウ「お兄ちゃん、それでいいんですか?」
フェア「まあまあ、死んだわけじゃないしほっときゃ治るでしょ。ミヤビってタフだし」
地下は思ったよりも深く、かなり厳重に封印されているようだ。
クラン「っと、扉か。この中に?」
フェア「鍵がかかってるわね。あたりまえだけど」
オッド「任せろ」
オッドが鍵を砂に変え、いともたやすく扉を開けてしまう。
クラン「この鉄の扉、壊すことはできなかっただろうし・・・・・・そう考えるとここはオッドたちの一族しか開けられないように作られたのかもな」
ディア「そうね。今のところ全部オッドがやってるし」
フロリーナ「・・・・・・」
オッド「これ、が・・・・・・」
クラン「ミダス王の腕?」
そこにあったのは、本当に人の腕。切り取られているというのに、今だ鮮やかな血色を失っていない不思議な腕だ。
ディア「これがねー」ソー
フェア「ちょっと、触るんじゃないわよ」パシッ
ディア「えー、ちょっとぐらいいいじゃん!」
オッド「ディア、触ったらお前が黄金になるぞ」
ディア「げっ、そ、そうだった。あぶなー、止めてくれてありがと」
不用心に触れるわけにはいかないな。しかし、一応本物かどうか確認しておきたいし・・・・・・
クラン「この石のカケラでも触れさせるか」
近くに落ちてあった石を掌に触れさせる。そうすると瞬く間に石が黄金に変わってしまった。
フロリーナ「本物、ですね。これなら父が欲しがるのもわかります」
フェア「いやー、やばいわねー。こんなのあったら世界が混乱するわよ。だって金貨作り放題よ?億万長者なんてレベルじゃないわ!」
フロウ「わっ、すごい!魔法で作った氷も金になりました!しかも、魔法を解いても消えない!」
どんなものだろうと完全に黄金へと変える力。まさしく神の力だ。こんなものは放置できない。が、かといってどこかにしまうわけにもいかない。
オッド「・・・・・・これだけ厳重に封印されていたのなら、むしろ見つけたのは失敗だったか?」
ディア「えっ、なんで?」
オッド「考えてみろ。こんなところにあるもの、普通は見つけられない。あの扉や階段も普通の人間じゃ通ることはできないもんだ」
確かにそれは一理ある、が。
クラン「俺たちの目的はこの戦争を収束させることだ。ならば、こいつを使って交渉をするのが一番手っ取り早い」
もちろん、相手に交渉の意思があればの話だが。
「よくやった、フロリーナ」
不意に扉の方から男の声が聞こえてくる。
フロリーナ「っ!お父様!?」
「もしやと思ってお前たちをつけていたが・・・・・・まさかこうもたやすく見つけてくれるとはな」
クラン「・・・・・・あんたがレオミュール卿か?」
「いかにも。お前が娘を解放してくれたのだな?礼を言おう」
よく言うぜ。自分から捕らえさせておいて。
「おかげでミダースの腕を見つけることができた。これで私はこの世界の頂点となれる!」
フェア「よく言うわ。あんた、そんなやつだったのね」
フロリーナ「お父様・・・・・・・」
フロウ「くっ、ジャックプロミn」
クラン「待て、フロウ!ここで魔法なんか使ったら生き埋めになる!」
「くっくっく・・・・・・そもそもお前たちに選択権はないのだよ。さあ、その腕を渡せ!さもなくば、こいつを殺す」グイッ
フェア「あっ、ミヤビ!」
しまった、ミヤビはまだダウンしたままか!まさか尾けられているとは思っていなかったとはいえ、不用心だった。
「魔法を使ってもこいつを盾にすればいいだけだ。お前らにそんな気概があるのなら、な?さあ、渡せ!」
オッド「くそっ、卑怯な真似を・・・・・・」
「卑怯?いいや、知略と言って欲しいな。お前のような下民とは違うのだよ」
クラン「・・・・・・いいぜ。欲しけりゃくれてやるよ」
ディア「クラン、ちょっと!?」
クラン「見ての通り、ミダス王の腕はここにある。俺たちは後方に下がろう。但し、ミヤビを壁際に置いてからだ」
そう言って、俺はナイフを全て床に落とす。
クラン「これで俺の武器は全部だ。ミヤビを置いても不意打ちはできないさ」
「なるほどな。いいだろう。ふんっ」ポイッ
ミヤビ「あぐっ!?・・・・・・きゅううう・・・・・・」
フェア「ミヤビ!もう!女の子なんだからもっと丁寧に扱いなさいよ!」
「知ったことか。賊を殺さないだけでもよしと思え」
ああ、いいぞ。油断している。あとは、もう少し待つだけだ。これは釣りと同じだ。相手が餌にかかるその瞬間まで、決して動くな。
「これが、ミダースの腕・・・・・・」
クラン「その腕がどういうものか知っているのか?」
「もちろんだとも。知らぬわけがない。それに、お前たちが実践していたではないか。これは触れたものを黄金に変える力を持つ物。原理はどうあれ、それは確かだ。くっくっく、これでお前たちは用済みだ」
よし、十分に距離が離れているな。今だ。
クラン「そう、触れた物をならばなんでも黄金に変えるんだ」クイッ
「今更なにをっ!?なぁっ!?」
レオミュール卿を中心に引力を発生させる。それと同時に、ミヤビを俺たち側に引き寄せる。そうだ。そもそも俺の魔法はこういうときのためにあるんだ。
クラン「言ったぜ、欲しけりゃくれてやるってな!その力、その呪いをその身をもって味わえ!」
ミダス王の腕が、ヤツの身体に触れる。それと同時に、ヤツの全身が黄金へと変わっていく。
「あ、わ、私の、身体、が、ふ、フロリーナ!助けてくれ!」
フロリーナ「・・・・・・」
「フロリー、ナ・・・・・・たす、け・・・・・・」
フロリーナ「そんな都合のいい話が、あなたにあるとでも?」
「こ、の、おまえ、は、むすめ、だろう、が。ならば、ちちおや、を」
フロリーナ「ええ。娘です。娘ですから、あなたの死は無駄にはしません。これからできる黄金の塊はしっかりと利用させていただきますから喜んでくださいな」
「」
・・・・・・完全に、黄金と化した。もはや元には戻らないだろう。
ディア「・・・・・・リーナ、よかったの?」
フロリーナ「ええ。さて、まだやることは残っています。戦争を、止めないと。レオミュール家最後の者として」
どうやら、もともとレオミュール卿はあまり領民からよく思われていなかったようだ。フロリーナは以前から度々各地に出向いては領民たちの話を聞き、課題解決へと尽力していたそうで、代替わりすることに抵抗はなかった。なかったのだが・・・・・・
ディア「レオミュール家を解体する!?」
フロリーナ「はい。もはや私一人となってしまった以上、これ以上存続させる必要はありませんから」
テトラ「それはまた・・・・・・思い切った話だな」
フロリーナ「・・・・・・私が貴族として、この地を治める。そうすると、きっとまた戦争が起こります」
あの後、ミダス王の腕は一時的にレオミュールの屋敷へと移動させた。近くに置いておいた方がなにかと都合がいいからだ。しかし、それがまた戦争の種となることも想像できる。
フェア「でも、簡単な話じゃないわよね。結局、誰かがここを治めないといけないんだから」
フロリーナ「・・・・・・そう、ですね。そのことなのですが、クラン様」
クラン「うん?」
フロリーナ「どうか、私に代わりましてこの地を治めていただけないでしょうか」
・・・・・・はっ?
フロリーナ「此度の戦争は、あなた様の力があって収まったものです。そして、あなたならばあの腕を守り切れる。そう思ったからこそのお願いです」
テトラ「・・・・・・ふむ。後ろ盾としてアクリヴィア卿がいるのだ。クランが領主になってもなんら問題はないな」
フェア「サーナさんってそんなに地位の高い人なの?」
テトラ「少なくともこの近辺の国々全てに顔が効くと言っても過言ではないだろう。領土を持たない貴族、彼女はそう呼ばれている」
サーナさんがいるから・・・・・・。
クラン「・・・・・・悪いけど、その話は受けるわけにはいかない」
フロリーナ「どうしてでしょうか?お望みのものがあればなんでもご用意いたします」
クラン「そもそも、俺は人の上に立つような器じゃない。これがまず一つ。次に、俺は教会から指名手配されている。これが二つ目。そして三つ目は、俺たちはまだまだ旅を続けないといけない理由がある」
ルーの声を取り戻す、それが当面の目的なのだ。これから忙しくなるようなことに首を突っ込むわけにはいかない。
フロリーナ「では、どうすれば・・・・・・我々だけではあの腕を守り切れることは・・・・・・」
クラン「だったら、だ。あの腕自身に守らせればいい」
フロリーナ「え?」
フェア「クラン、何言ってるの?」
フロウ「お兄ちゃん、頭打った?あれはタダの腕だよ?変な力はあるけど、腕だよ?」
そんなことはわかっている。全員が可哀想なものを見るような目でこちらを見つめるが、意に介さず続ける。
クラン「魔力のコアさえ作ってやれば、スライムみたいに動かすことが可能だ。自分で動き、自分で考える様になれば守る必要もなくなるだろう?」
ルー「(*‘∀‘)」
ルーは賛同してくれているようだ。やはり素直が一番だな、うん。
オッド「そんなこと言ったって、魔力のコアはいったいどうやって作るんだ?」
クラン「ふっふっふ・・・・・・ここにちょうど、使えそうなものがある」
懐から『魂』を取りだす。四元素の内の1つ、【土】の精霊『ノーム』の魂だ。
クラン「このノームの魂、あとは3つだな。シルフと、ウンディーネと、サラマンダー。この4元素を集めてやれば、十分魔力のコアたり得るものになる」
フェア「ああ、なるほどねぇ。確かにそれなら・・・・・・うん。シルフの魂なら、エアが持ってるわね」
フロウ「・・・・・・ここから妖精の森まで行くの?」
クラン「そこは仕方ない。サーナさんの扉を借りよう。あそこからならすぐに行って帰ってこれるはずだ」
さて、あとはウンディーネとサラマンダーだが・・・・・・
ルルト「やっほー、ファイス!遊びに来たよー!」
フェア「・・・・・・あら?」
ルルト「えっ?」
クラン「ちょうどいい所に」
ルルト「ウンディーネとサラマンダーの魂?確かに持ってるけど・・・・・・」
やっぱり持っていたか。魂の有用性はルルトも理解しているはずだから、もしかしたら集めているかと思ったらビンゴだ。
フレア「そう簡単に渡すわけにはいかねーな!」
カレア「割と手に入れるのに苦労しましたので・・・・・・ごめんなさい、クランさん。今回は味方できそうにないです」
フレア「今回は!?」
ミヤビ「あの、この方々はどちら様で・・・・・・?」
フレア「あたしら?あたしらは不死鳥旅団!世界をまたにかける不死鳥の一味だ!」
ルルト「いまのところは各地を巡ってこんな魂とかを集めてるけどね。あと医者探し。あ、そうだ!そっちの収穫は?」
クラン「有用な情報はあった、けれどもこれから探さなきゃいけないんだ。その医者を」
フレア「ってことは、カレアの目も治るんだな!」
流石にそこまではわからないが、名医であることは確かだ。ルーのためにも早く情報を集めたいのが本音だが・・・・・・。
クラン「さて、ルルト。そのウンディーネの魂とサラマンダーの魂、俺たちは両方欲しいと思ってる」
ルルト「うん。そっちはじゃあ何を賭けるの?クランだけじゃあ釣り合わないかな」
ルルトも、今回は自分たちが交渉として有利な立場にいることはわかっているようだ。だからこそこちらは下手に出ざるをえない。
クラン「・・・・・・ルルトが勝ったら、結婚しよう」
ルルト「・・・・・・はっ!?」
フェア「えっ!?」
フロウ「うそっ!?」
フレア「なにっ!?」
カレア「まあ!」
フロリーナ「なんですって!?」
どうしてフロリーナまで反応するんだ。
クラン「もともとルルトが俺たちのもとを離れたのもその辺の話があってのことだ。だから、ルルトが勝ったらそこに決着をつける。そう言ってるんだ」
ルルト「ぼ、僕としては願ったり叶ったりな話だけど・・・・・・えっと、フレア、カレア、いい?」
フレア「あたしは構わん!ルルトがそれで喜ぶなら!」
カレア「ロマンチックですね!私も賛成です!愛は拳で勝ち取るものですね!」
フェア「ちょっとちょっと!クラン!」
クラン「これしか思いつかなかったんだよ」
フェア「だからって!だからって!」
テトラ「・・・・・・はぁ。クラン、お前中々に下衆いな」
クラン「えっ」
フロウ「割とひどいことしてます」
ディア「うわー、乙女の恋心を利用して交渉するとか・・・・・・サイテー」
フロリーナ「クラン様、お考え直してください。今ならまだ間に合います」
クラン「そんなこと言われても・・・・・・」
正直、相手を納得させる条件がこれくらいしか思い浮かばなかったのだ。
オッド「ディア、フロリーナ。少なくとも私たちはこの件に口出しはできないぞ」
フロリーナ「オッド!でも!」
オッド「クランは勝敗に関わらず最終的に私たちの問題を解決することができる方法を選んでくれたんだ。そこに感謝こそすれども、非難をするのは筋違いだ」
オッドは思っていたよりも賢明なようだ。自分の分をわきまえているというか、自分の立場を理解している。国を治めるのなら彼女のようなものがいいのではないだろうか。
クラン「さて、と。ルルト。今回は前みたいな手は使わない。俺が直接やる」
ルルト「オッケー。じゃあ外に出ようか。言っておくけど、僕は本気でクランと結婚したいから。全力で行くよ」
クラン「望むところだ。俺もそろそろ受け止めないといけないと思ってたんだ。まずはルルト、お前から」