フロリーナたちを手伝うことになって啖呵を切ったはいいものの、結局のところどうすれば収束するのかがわからない。
クラン「まずは、どういう経緯があって今の状態になっているか戦争の当事者から詳しく話を聞きたいな」
なぜ彼女たちを狙わせたのか、どうやってそれを知ったのか。情報を集めない限りは判断のしようがないし、動けない。
クラン「・・・・・・ってことは、二手に別れないといけないな」
フェア「二手に?」
クラン「片方は領主の方に、もう片方は彼女らを攫ったやつらの方に」
フロウ「えっと、戦争している両方の話を聞きに行くの?いくらなんでも無茶だよ!」
クラン「そんなことはわかってる。だから話は実行犯の方に聞きに行くんだ」
ファイス「それは、件の盗賊たちですか?」
クラン「ああ。そっちには俺が行こう。一人でもいいが・・・・・・」
こういう時にルルトがいないのは少し厄介だ。彼女にもう片方を頼んでおけば、難なくこなしてくれるだろうに。
テトラ「お前には私がついていこうじゃないか。ここの守りはファイスに任せておけば問題ない。だろう?」
ファイス「ええ。攻撃はできませんが、守ることならできます」
クラン「じゃあ向こう側にはフェアとミヤビ、頼めるか?」
フェア「構わないけど、どうやってその領主のとこまで行くのよ」
ミヤビ「我々のような見ず知らずの相手を相手にするとは思えませんね。力技でいいのならなんとかしますが」
クラン「幻惑と魅了をうまく使ってやれないか?」
フェアの鱗粉による幻惑、ミヤビの魔法による魅了。一般人なら問答無用で操れると思うのだが・・・・・・。
フロリーナ「私が行きます。領主の娘である私が行けば、父も無視はできないでしょうから」
ディア「リーナ!?危ないって!」
フロリーナ「なにもかも任せきりではレオミュールの名が廃ります。貴族として、私の義務を果たさないといけません」
ディア「でも!」
フロリーナの側にいてもおかしくなく、警戒もされず彼女を守り切れる人物。共に行かせるならそんな人が適任だ。だったら――
クラン「・・・・・・ル―!」
ルー「(>_<)」
クラン「君はフロリーナの側で彼女を守ってやってくれ。大役だけど、任せられるか?」
ルー「(*‘∀‘)」
クラン「よし、いい顔だ。任せたよ」
テトラ「その幼子にやらせるのか?子供を巻き込まなくても」
クラン「テトラ、この件に関してはルーから関わったことだ。なら、自分で責任をとらなくちゃならない。それに、ルーは今の俺たちの中で俺に次いで長く旅をして修羅場をくぐってきたんだ。彼女の強さは俺が保証する」
フロウとの戦いや、ワグラネリーに一泡吹かせた実力、なによりあの村で巨大な竜と戦ったという経験。歴戦とまではいかないが、普通の人間程度ならルーに勝てる奴はいないだろう。
クラン「そしてフロウはこっちに来てくれるか?」
フロウ「はいはーい!お任せあれー!」
こうして、領主側はフェア達に。盗賊側は俺たちが行くことで決定したところで、一晩を明かした。そして朝の内に準備を整え、すぐに例の場所へ向かう。
クラン「この道を通ったのも一年半前か」
ルルトと旅をはじめ、フレインと出会い、テトラのもとへ行くまでに通った道。あのころと変わらぬ景色が、2人の事を思い出させる。
テトラ「どうした、クラン」
クラン「・・・・・・いや、2人は元気にしてるかなって」
袂を別った二人。1人は新たな友のために。もう1人は自分の責任を果たすために。今は共にはいられなくなってしまったが、お互いに大切なものができた。だから別れたのだ。
テトラ「ルルト嬢とフレイン嬢か。お前から聞く限りでは二人とも自分の道を歩んでいるようではないか」
フロウ「ルルトおねえちゃんが自分の道を・・・・・・?」
テトラ「ああ。聞いた限りでは、クランと共に行くという選択もとれたじゃないか。だが、あえてそうではなく別の道を歩んでいる」
フロウ「・・・・・・それもそっか!なるほどー。単に引っ込みがつかなくなってるだけだと思ってたけど、そうでもなかったんだね」
クラン「俺も、ルルトも。もう子供じゃないからな。自分の事は自分で決める時期なんだ」
テトラ「ハッハッハ!いうじゃないか!それが聞けただけでも成長だな、クラン」バシバシ
クラン「痛い痛い。っと、ついたついた。ここだ」
盗賊たちのアジト、かつてファイスたちがとらえられており、俺たちの路銀稼ぎの場になった洞窟。
前と同じく、頭領のもとへ案内してもらえるように近くの盗賊に話しかける。
クラン「やあやあ、そこの盗賊さん」
盗賊A「ああ?なんだテメェ?ここをどこかわかってきてるんだろうな?」
クラン「もちろんさ。君たちの頭領に会いたくてね」
盗賊B「そう簡単に会わせてやれるかよ。それともなんだ?なんかの依頼か?金を持ってるようには見えねぇが」
クラン「君たちの返事はハイかイエスだ。さもなくば、フロウ!」
フロウ「あいさ!ジャックプロミネンス!」
フロウに近くの岩を攻撃させる。岩はぐつぐつと煮えたぎり、瞬く間に溶けてしまった。その様子をみた盗賊たちは慌てだす。
クラン「さて、もう一度お願いしよう。頭領のもとへ案内してくれるね?」
クラン「逃がさないよ」
重力で相手を補足し、そのまま引き寄せる。懐かしいな、このやり取り。
盗賊B「わ、わかった!わかったから!命だけは!」
クラン「よし、頼んだよ。ちなみに嘘をつこうものなら嘘をつかなかった方を溶かすからね」
盗賊A「お、お前!変なことするんじゃねえぞ!」
盗賊B「うるせえ!お前こそだ!」
テトラ「・・・・・・クラン、お前かなり手慣れているようだが」
クラン「旅をするのにもお金はいるからね。まあこれで二回目だよ」
路銀が尽きたのはこの時だけだったな。あの後はワグラネリーから謝礼としてもらったり妖精の森で援助を受けたりピピが持って来てくれたりで路銀に困ることはなかった。
フロウ「お兄ちゃんの意外な一面・・・・・・」
盗賊A「お頭!お頭に会いたいってやつが・・・・・」
頭領「なんだぁ?俺に会いたいだと?」
クラン「やあやあやあ、久しぶりだね、頭領」
頭領「て、テメーは!なにしにきやがった!金ならやるからさっさと帰れ!奴隷はいない!」
クラン「そう言うわけにもいかないんだ。今日は話を聞きに来たんだから」
テトラが前に出て制止する。
テトラ「無駄に威圧をするな。さて、盗賊よ。こいつがかつて解放した奴隷たちのことを覚えているか?」
頭領「え?」
テトラ「正確には、誰かに依頼されて捕らえた女の事だ。赤みがかった髪の貴族の娘だ」
頭領「・・・・・・ああ、覚えている。破格の報酬だったからな。捕らえた後は好きにしろと言われたから売っぱらう予定だったが・・・・・・」
クラン「それは誰から依頼されたんだ?」
テトラ「クラン?」
どうにも引っかかる部分がある。フロリーナがあのあと自分の屋敷に帰らないとは思えない。なのになぜ、こんなにも長い間隠れ住まなければならなかったのか。俺の予想が正しければ――
頭領「・・・・・・領主だよ。ここのな」
テトラ「なっ!?」
やはりな。フロリーナもそれを薄々感じていたんじゃないだろうか。だからこそこの機会に自分で確かめに行った。
クラン「ってことはだ。ここの領主はもともと戦争がしたかったんだ。領地が欲しかったのか、それとも別の何かを求めていたのかはわからないが」
テトラ「だけど戦争をするのには大義名分がいるから、そのためにフロリーナ嬢を・・・・・・」
フロウ「そんなの、ひどい!ひどすぎるよ!自分の子供をだしにしてそんなことするだなんて!」
クラン「ああ。大人は汚いんだ。それくらい平気でやるやつもいる」
とにかく、聞きたいことは聞けたんだ。後は教会に戻って、フェア達を待とう。
ええっと、拝啓、クラン様。雅でございます。この声は届いていないとは思いますが、現状報告を。私たちは今
領主「決して逃がすなっ!地の果てまででも追って捕まえろ!!!」
会いに行った領主に身を追われています。
まずはじめに領主のもと、つまりフロリーナ様のお屋敷へと到着したときの話です。彼女が姿を眩ませていた理由を守衛に話し、私たちは彼女を助けた者として迎え入れられました。
ミヤビ「こちらのお布団はどこも背が高いのですね」
フェア「あの国の地面に直接敷くっていうのが異質なだけよ。どこもこんなもの」
ミヤビ「そうでございますか・・・・・・やはり異国の文化は興味深いです。履物を脱がないという点なんかも」
フェア「そうねー。でも私、ジパングのタタミ好きよ。床に寝転がってごろごろするのとか気持ちいいし」
ミヤビ「それは僥倖でございます。私はこちらの布団は好ましいですね。このように柔らかく包まれて眠れるのは我が国では味わえない感覚です」
フェア「やー、固いものは固いわよー。領主の家だけあってここのは質がいいみたいだけど」
ミヤビ「洞窟暮らしをしていた私にとっては全て柔らかく感じますよ」
フェア「え、洞窟暮らしだったの?なんで?」
ミヤビ「知っての通り、私は水神に敗れてしまいましたので、いわば縄張り争いに負けたわけですね。ですから住居を追いやられていたのです」
フェア「へー・・・・・・え、もしかしてあの社ってもともとアンタの家?」
ミヤビ「左様でございます。とはいえ、本当に遥か昔の事。フェア様が生まれるよりもずっと以前でありますよ」
フェア「私が生まれたのって300年ぐらい前だけど、それよりも?」
ミヤビ「ええ」
フェア「・・・・・・ミヤビって何歳?」
ミヤビ「2千は超えていますとだけ」
フェア「なるほどねー。それであんなに強いのにこれだけ落ち着き払ってるんだ」
ミヤビ「日の本で生まれ育った以上、大和撫子たるべきですからね。とはいえ、皆様には私の本性もお見せしたとは思いますが・・・・・・」
フェア「あれはあれでかっこよかったからあり」
ミヤビ「そう言われると嬉しいです」
フェア様と同じ部屋で2人きり、ということで普段はあまりしないような会話を存分にいたしました。お互いの身の上の話や、なぜこの旅についてきているのかなどいままだ語らえなかったことを。
しかしながら、平和な時間は長くは続きませんでした。ルーちゃんがフロリーナ様をつれて部屋まで駆け込んできたのです。
フロリーナ「ミヤビさん!フェアさん!逃げますよ!」
ルー「(>_<)」
フェア「えっ、どうしたの?」
フロリーナ「父に命を狙われています!私がいることがよほど都合が悪いようです!」
ミヤビ「なるほど。いつの世も欲に目がくらんだ人間と言うのは恐ろしいものです。壁を破壊しますが構いませんね?」
フロリーナ「はい!」
フェア「んじゃ、時間稼ぎはやっとくからそっちは任せたわよ」
ミヤビ「任されました。夜は私の時間。月光雅!!!!」
ドガァァァァァァン!!!!
ミヤビ「皆様方、しっかり捕まっていてください!飛びますよ!」
フロリーナ「へ?飛ぶ、とは?」
ミヤビ「文字通りです!」
ルー「(*‘∀‘)b」
フロリーナ「ふぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?」
フェア「あとで合流するわ!頼んだわよ!」
ミヤビ「全速力ですから、振り落とされないように死ぬ気で掴んでくださいね!」バサッバサッ
そうして、その場をフェア様に任せて夜天へと飛び立ちました。フェア様も幻惑の粉を撒いたあと、すぐに我々に合流いたしました。
ですが、それが効いたのは屋敷の中にいた者のみ。屋敷中に撒くと言っても限度がありますから、外にいた者には今なお追いかけられているわけです。
フェア「もー!しつこいわねー!こっちは飛んでるんだからもっとびっくりしなさいよ!」
ミヤビ「弓で射られてはひとたまりもありませんね。できるだけ高度をあげたいところですが・・・・・・厳しいですね」
フロリーナ「ほ、本当に空を飛んでる・・・・・・た、高い~~~~~~!!!!」
フェア「落ち着いて、フロリーナ!落ちはしないから!」
フロリーナ「でも、でもぉ!」
フェア「わわっ、馬で追ってきてる!当然か!」
ルー「('◇')ゞ」
ミヤビ「えっ?」
左手で敬礼をすると、ルーちゃんが一人で地上に向かって降りていきました。
ルー「(*‘∀‘)<===∋」
「な、なんだ!?急に雨がっ!?」
「くそ、前がよく見えない!」
フェア「なるほど、大量の水を広範囲に・・・・・・これなら視界も塞げるわね」
ルー「(*'▽')」
ルーちゃんは水の反動でそのまま私の背に戻ってきました。見かけによらず俊敏ですね。
ミヤビ「なるほど、目を暗ませる。フロリーナ様、声を出さないようおねがいします」
フロリーナ「へっ?」
ミヤビ「夜中霧行」
フロリーナ「!?」
ああやって視界が制限されている状態ならば、この術が効きますね。身体の一部を黒い霧へと変化させ、相手の目くらましを行う。今回は足全体を霧へと変えたため、フロリーナ様を固定するのが少し弱くなってしまいますが・・・・・・
フェア「大丈夫よー。私が下で待ち構えておくから」
フロリーナ「」コクコク
フロリーナ様は必死に声を押し殺しています。帰った時が大変ですね。
夜遅くになって、フェアたちがもどってきた。数日は向こうにいると思ったのだが、向こう方にとってはよっぽど都合が悪いことなのかすぐに事を済ませたかったらしい。
クラン「で、だ。お察しの通り、フロリーナを狙っていたのは領主自身だった」
フロリーナ「はい。部屋で寝ようとしていると突然ドアが開いて、私たちに襲い掛かってきたんです。こう、槍をもってですね」
クラン「いや、襲い方は別にいいんだが・・・・・・」
こうなると、領主の目的はただ一つしかない。向こうは戦争がしたかったのだ。だからその口実のために娘を亡き者にしようとした。
ディア「リーナ、大丈夫?」
フロリーナ「え、ええ。まだ足元がふわふわしている感じですが・・・・・・」
ディア「あ、そっちじゃなくて。実のお父さんに命を狙われたんだし」
フロリーナ「・・・・・・覚悟は、していました。ええ、ですが、やはり実際に体験してみると、おぞましいものですね」
実の家族に命を狙われる。親近感を覚える話だ。あれは気持ちがいいものではない。むしろ、信じていた家族に裏切られるというものは心にくるものがあるのだ。俺でさえ未だにトラウマになっているのだから、彼女の心境は推して図られる。
テトラ「辛いだろうが、話を続けよう。一番の肝は『どうして』戦争がしたいのか、だ」
クラン「単純に領地を広げたいから、じゃないのか?」
テトラ「これは簡単な話ではないのだ。領地を広げるとその分だけ管理する土地が増えると言うことだ。領主が変わると民の反発もある。それを押してでも領地を広げたい理由があるのだ」
フェア「フロリーナの家は支配欲が強いとかそういうのはあるの?」
フロリーナ「いえ。少なくとも私の前でそのような姿を見せたことはありません。どちらかというと放任的ですので」
ディア「だからこそ私たち三人が一緒にいられるんだけどね」
オッド「本来は会うことすらなかった立場だし」
単純に土地を広げたいということじゃないのか?考えろ、土地を広げたら何が得られる?人、資源、税・・・・・・。
フロウ「とっても欲しいものがあった、とか?」
クラン「・・・・・・どういうことだ?」
フロウ「ほら、水神の話、覚えてる?」
フェア「ええ。忘れるわけないわ」
テトラ「フレイン嬢が残った村の話だな」
フロウ「はい。あれってさ、水神は村が欲しかったんじゃないよね。生贄が欲しかったから、村を手中に収めたわけだよね?」
ミヤビ「ええ。私には理解できませんが、人、とくに生娘の肝は極上らしいですから。かの龍はそれを欲しがっていたのです」
クラン「なるほど。その土地に欲しいものがあって、その土地自体はただのおまけということか」
ならば戦争が目的ではなく手段に代わってくる。戦争をしてまで欲しいものが相手方の土地にあるということだ。
ファイス「しかし、心当たりがありませんね。戦争を仕掛けられている側の領地には特別なものはなにもないはず。本当に人と資源ぐらいしか・・・・・・」
オッド「あるぞ」
クラン「え?」
意外な人物から声が上がる。オッド、そう呼ばれる彼女は名前すらない身分外の人間だ。オッドという名もその奇妙な目(オッド・アイ)からそう呼ばれているだけのはずだ。
オッド「・・・・・・どんなやつでも、喉から手が出るぐらいに欲しがるものがあそこにはある」
ディア「・・・え、あんたってあそこ出身だったっけ?」
オッド「ミダス王の腕」
クラン「・・・・・・なんだって?」
オッド「あの領地には、ミダス王の腕が封印されてる。レオミュール伯爵はそれを欲しがっているんだ」