さて、フレインと別れたのはいいものの、ピピが言っていた医者の居場所まではかなり遠い。また徒歩で旅するにはあまりにも時間がかかりすぎる距離だ。
クラン「なぜかサーナさんのところに行けないしなぁ」
二回曲がって三番目の扉を五回ノックして七秒待つ。で、あってるはずなんだけど・・・・・
クラン「やっぱり扉の形式が悪いのかな」
フロウ「あー、なんかこの国の扉の形ってかなり違いますもんね」
横にスライドさせて開く扉は、今までの土地にはなかった。サーナさんの屋敷ももちろん前後に開く扉なので、たどり着けないのも無理はないのかもしれない。
フェア「とりあえず、いつもの扉があるところまで戻ればいいんでしょ?」
ミヤビ「初めて見る異国の地、楽しみです」
ルー「(*‘∀‘)」
まあ、焦る必要もないし、ゆっくり行くか。時間だけはあるんだから。
そうこうして、なんとか大陸まで戻ったのだが・・・・・・
スワン「待っていたわよ、クラン」
クラン「えー・・・・・・」
姉である聖人スワンが港で待ち構えていた。
スワン「あなたたちがここの港から出たとの情報はあったから、待っていれば戻って来ると思っていたわ。まさか半年も戻ってこないとは思わなかったけど」
クラン「そりゃそうだ。アリスを探してたんだから」
スワン「・・・・・・!」
アリス、という単語に反応を見せる。それも当然だ。俺たちの因縁は彼女から始まったと言っても過言ではないのだから。
スワン「・・・・・・見つかったの?」
クラン「いや、残念ながら。別用ができたから後回しにすることにした」
スワン「そう・・・・・・」
姉さんにも少しは思うところがあるのだろう。彼女にとってもアリスは妹のような存在だったはずだ。いくら魔女だったとはいえ、彼女と過ごした思い出は変わらない。
スワン「さて、それはともかく。私が待っていた理由はわかっているわよね?」
クラン「ああ、もちろん」
スワン「じゃあ、場所を移しましょう。人目が付かないところまで」
ミヤビ「あの、少しよろしいでしょうか。その方はどちら様で・・・・・?」
ミヤビがおずおずと声を上げる。そういえば彼女には姉さんたちのことを話していなかったな。
スワン「・・・・・・クラン、また新しい女をひっかけたの?」
クラン「誤解を生むような発言はやめてほしいな」
街から少し離れた平地、街道から外れているため人通りもほとんどなく、誰かに迷惑をかけることもない場所だ。
ローチェ「来たわね、悪魔共。今日こそおまえらを地獄に送ってやる・・・・・・!」
フェア「え、あいつあんなやつだったの?そりゃフレインが遠ざけるわ・・・・・」
ミヤビ「日差しが・・・・・・まぶしい・・・・・・」
ノイス「さて、前みたいなやられ方はしない。この開けた場所なら撹乱もされないさ」
クラン「えっと、じゃあフロウとルーチェは下がって――」
フロウ「んーと、要はあいつらが鬱陶しいんだよね、お兄ちゃん?」
クラン「え、いや、たしかにまあそうだけど」
フロウ「なら・・・・・・氷漬けにしてあげる!」
ルー「(>_<)」
クラン「えっ、ちょっと待て!」
ルーとフロウが二人そろって突撃を仕掛ける。
スワン「昨今の子供はずいぶんと血気盛んなのね!きなさい、相手してあげるわ!」
ノイス「そんなに真っすぐ飛んで来てたら、当ててくれって言っているようなもんだ」
クラン「くそ!二人を援護する!ノイス、俺が相手だ!」
ローチェ「ちぎれ飛べ!エアリス・トルネイド!」
フェア「させないわ!パラレルレーザー!」
ミヤビ「日差し・・・・・・きゅう・・・・・・」
日差しに晒されてミヤビがダウンしているので、とりあえず放置だ。今は目の前の相手を――
ローチェ「エアロ・ストライク!」
フェア「ああ、もう!そんな風ばっかり吹かされたら鱗粉がとどかないじゃない!」
フェア(私は直接やり合うのは苦手なのに!もー!)
ローチェ「神の御命においてお前たちを浄化する!」
フェア「うっさい!何が浄化よ!こちとら妖精だから純粋な魔力で満ちてるっての!ムーンカッター!」
ローチェ「魔物であることそれ自体が穢れているのだ!ゴミは純粋だろうが濁っていようがゴミには違いない!」
フェア(相手があまりにも不利すぎる・・・・・!他の相手だったら幻惑なり麻痺なりでやりようがあるのに!)
クラン「くっ、流石に重力だけじゃ矢は落ちないか」
ノイス「当然だ。重いも軽いも関係ない。聖法で作った矢はまっすぐ飛ぶんだ」
クラン(つかず離れずの距離を保たれている。ナイフを投げても落とされるし・・・・・・)
クラン「なら!妖精の魂を!」
ノイス「見えているぞ!」
クラン(躱された!?)
ノイス「以前のサンダーバードほどじゃないな。見えているまっすぐ軌跡を描くものに当たりはしない。あの時は不覚を取ったが、もうやられはしない!」
クラン「なら、これでどうだ!ファイアウォール!」
ノイス(俺の周りを火で囲った!だが、見えているぞ!俺の聖法・千里眼でな!)
クラン(もう一度!妖精の魂を!)
スワン「名乗りもせずに飛び込んでくるなんて、礼儀がなってない子たちね!」
フロウ「これから氷漬けにする相手になにを名乗る必要があるのですか?」
スワン「命を懸ける相手に対する礼儀ってものがあるのよ」
ルー「(><)」
フロウ「あ、じゃあ一応。私はフロウラルフロスト・フレイアムフロウ。こっちはルーちゃん。これからお前を倒すものだ!」
スワン「私はスワン・ソフライム。クランの姉で、一応あなたたちの浄化の任務を請け負ってきているわ」
フロウ「なら、私たちに始末されても文句はないってことだね!フリーズ!」
スワン「ええ、死人に口なしだもの。でも、やられるつもりはないわ」
ルー「(`・ω・´)」
スワン(さて、さすがにこんな小さい子供を手にかけるわけにはいかないわね。私だって思うところがあるのだから。だから、稽古をつけてあげるわ)
スワン「そっちの子もさっきからすごい速さで水を打ち出してくるわね。ただ、狙い分かりやすいから当たらないけど」
フロウ「んにゃあああああ!なんで攻撃が当たらないの!?アンノウンフレア!」
スワン「あなたたちが幼くてまっすぐだから、かしら。狙ってくる場所がわかっているのよ」
ルー「( ゚Д゚)」
スワン「さて、こっちからもいくわよ。サンダー!」
フロウ「あいたっ!」
スワン「続けて、サン――!?」
ルー「(*‘∀‘)」
スワン「ホーリーフレア!」
ルー「(。-`ω-)」
スワン(目を離したつもりはなかった、だけど一瞬で距離を詰められていた!しかも・・・・)
ルー「~♪」
フロウ「今のって、あのニンジャさんに教わってたやつ?」
ルー「(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)」
スワン(水を刃状にして私の炎を斬った!油断できる相手じゃないってことね)
フロウ「じゃあ、一気に行くよ!ブリザード・スプラッシュ!」
ルー「(>_<)」
スワン「ふぅ・・・・・・すぐに終わらせないと私が危ないわね。剣先延伸の法!!!!」
フロウ「ふぇっ!?」
フロウ(剣から、光が、伸びて、避けられな――)
フェア「くっ、痛ったぁ・・・・・」
ローチェ「あら、もう終わりですか?ならば、このまま終わらせてあげましょう」
フェア(鱗粉も風に乗って全部飛んで行ったし、もう魔力も空っぽ・・・・・・なにもできない・・・・・)
ローチェ「楽には殺しませんよ。少しずつ削り取ってあげます。地獄あら――」
ミヤビ「籠目籠目」
ローチェ「!?」
ミヤビ「やっと日が隠れた・・・・・・さあ、眠りなさい」
ローチェ(あっ、意識が――ま――だ――)
ノイス「さて、種明かしをすると俺の個別聖法は千里眼ってやつでな。障害物を無視して周りを見渡すことができるんだ」
クラン「なる、ほど。だから炎の壁の内側からあんなに正確に・・・・・・」
ノイス「ま、相性が悪かったってやつだな。それじゃ――」
ミヤビ「その血、いただきますね」
ノイス「なにっ!?がっ――」
ミヤビ「多少貧血で動けなくなる程度ですから、我慢してください」
クラン「ミヤビ・・・・・吸血鬼って、手から血を吸うのか?前は口から吸っていた気が・・・・・・」
ミヤビ「口から吸うのは効率が悪いですから。それを行うのは少量だけ欲しい時か、親愛行動ぐらいですよ。さて、あと一人」
スワン「さて、まだやるかしら?」
フロウ「うう・・・・・・」
ルー「(;・∀・)」
スワン(すんでのところで回避されたけど、やっぱりあの女の子・・・・・・あまりにも速すぎる。いったいどんな魔法を?)
スワン「あなたたちがやめるというのなら、これいじょうやるつもりはないわ。ちょうど、私たちの方もやられたみたいだし、連れて帰らないといけないから」
フロウ「でも、おまえを放っておいたら、お兄ちゃんが・・・・・・」
ミヤビ「ダメですよ、フロウちゃん。無茶したらクランさんが悲しみます。今回は負けを認めましょう」
フロウ「ミヤビお姉ちゃん・・・・・・」
ルー「(>_<)」
スワン「あなた、日差しが無くなった瞬間随分と強くなったわね。ヴァンパイアかしら?」
ミヤビ「ヴァンパイア・・・・・・クランさんから聞きました。西洋の吸血鬼の呼び名だとか。ええ、そうです。夜ならもっと強いですよ」
スワン「なら、私はまだ敵いそうにないわね。ここは退かせてもらうわ」
ミヤビ「賢明な判断です。・・・・・・あなたは、なんのために戦うのですか?」
スワン「・・・・・・さあね。私自身も、わかってないわ」
ミヤビ「そうですか。では、私はみんなを連れていかないといけないので」
スワン「私もね。それじゃ、また会うと思うから」
ミヤビ「・・・・・・できれば会いたくはありませんが」
スワンたちが去り、俺たちも街に戻ってきた。フロウとルーは負けたことにご立腹なようで、機嫌が悪い。
フロウ「うーーーー!うーーーーーー!くやしいーーーーーー!やられたーーーーーーーー!」
ルー「(>_<)」
フェア「クラン、もっと魔力回してー。回復が追い付かないのー」
クラン「まあ待ってくれ。もうすぐ着くから」
ミヤビ「どこにむかっているのですか?こちらに宿が?」
クラン「いや、ここに来る前もやったんだけど、行けなかったとこがあってね。きっとここならできる」
コンコンコンコンコン
二回曲がって三番目の扉を五回ノックして七秒待つ。この形の扉なら、できるはずだ。
ガチャッ
クラン「ああ、開いた。久しぶりに、帰ってきたな」
サーナ「お帰りなさい、クラン。そして、そのお友だち・・・・・・でいいのかしら?」
クラン「ただいま、サーナさん。いや、お母さんって呼んだ方がいい?」
サーナ「もう、お母さんじゃありませんよ」
ああ、帰ってこれた。俺たちの、家だ。
フェア「お母様!?クランの!?」
ルー「(´・ω・)」
フロウ「あわわわわ、おっきい部屋・・・・・・」
ミヤビ「・・・・・・ここは、いったい?」
クラン「言ってなかったな。ここは俺の家だ」
フロウ「あ、えっと、じゃあ、お邪魔します!」
フェア「あ、あの!私、フェアって言います!えっと、妖精の森の姫で、ティターニアです!」
フロウ「あ、私ジャックフロストのフロウラルフロスト・フレイアムフロウです!」
ミヤビ「アマノミヤビと申します。よろしくお願いいたします」
ルー「(*‘∀‘)」
クラン「こっちの子はルー。わけあって声が出せないんだ」
サーナ「ええ、知っているわ。あなたたちが探している医者についても」
クラン「本当!?」
流石サーナさんだ。ていうか、どこまで知っているんだ。もしかして、ずっとつけていたとか?
サーナ「ふふ、つけてはいないわよ。情報源は、まあ秘密ね。さて、みんな疲れているでしょう?まずは傷の治療ね」
サーナさんが軽く指を振ると、先ほどの戦いの傷がみるみる癒えていく。
フェア「わわわっ、すごい!回復魔法っていっても、複数人をこんな早さで治すなんて相当なのに!」
クラン「そりゃそうだ。サーナさんは魔法の達人だからな」
サーナ「ふふ、達人ってわけじゃないわよ。ただ知っているだけ。さ、中でゆっくり休んで頂戴。食事ができるまではソファーで休んでくれればいいわ」
こうやって、サーナさんの優しさに包まれていると帰ってきたなという実感がある。俺の家は、やっぱりここなんだって感じられる。
サーナ「ゆっくり休んで、疲れが癒えたら、お話をしましょう。あなたたちの話を、聞かせてちょうだい」